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アインホーンとテッパーの成功例にみる パニックを成功に変えるセオリー

THE PAGE 9/21(水) 15:00配信 (有料記事)

 マイケル・バリーやジョン・ポールソンが見事に予想を当てたサブプライムローン・バブル崩壊の後、世界の金融市場は「百年に一度」と称されるほどの危機を迎えた。いわゆる「リーマン・ショック」である。グローバルな金融市場を差配する存在とみられていた大手投資銀行に経営危機が忍び寄ったのだ。市場の大混乱をよそに、その金融株で利益を上げた2人の投資家を見てみよう。(解説:ミリタス・フィナンシャル・コンサルティング代表取締役・田渕直也)


  リーマン経営陣と空売り投資家、どちらが事態を正しくみていたのか

 2008年3月、全米5位の大手投資銀行ベア・スターンズがJPモルガンに救済合併されると、市場の焦点は、全米4位のリーマン・ブラザーズの経営問題に移った。

 リーマン・ブラザーズの攻撃的なリチャード・ファルド元最高経営責任者(CEO)は、リーマンの財務は健全であり、リーマンに経営不振がささやかれるのは空売り投資家の理不尽な売り仕掛けによるものであることを繰り返し主張した。たしかに、経営危機に陥る企業が生まれると、ハゲタカのような空売り投資家が暗躍し、火のないところに煙を立てて、その企業を本当に破たんに追い込んでしまうことがある。リーマンを空売りする投資家の中には、グリーンライト・キャピタルというヘッジファンド運用会社を経営するデビッド・アインホーンがいた。彼は本当に火のないところに煙を立てようとしていたのだろうか。

 アインホーンは、同年5月の講演でリーマンの決算内容に疑義を呈している。ほかの金融機関が大きな評価損を出している特定の種類の債券をリーマンも大量に保有しているのに、ほんのわずかしか評価損を計上していない。また、リーマンは、市場で価格が付かないレベル3といわれる資産も大量に保有している。そうした資産は、売るに売れないものなので評価価格も保守的に見積もる必要があるのだが、リーマンはそれもしていない。リーマンは、自社が直面している問題を直視しようとせず、かつ投資家をごまかそうとしているのではないか。それが、リーマンの決算書を隅まで読みつくしたアインホーンの主張だった。

 そして、事実はアインホーンの見立てたとおりだったのである。このときのアインホーンは、リーマンの現状を経営陣よりも正確に把握していたといえる。アインホーンはもちろん、その後のリーマンの破たんで大きな利益を上げている。だが、アインホーンのせいでリーマンは破たんしたのか?

 そうではないだろう。アインホーンは、リーマンが問題を抱えていることをあぶり出した。つまり、火のないところに煙を立てたのではなく、火のくすぶる場所を的確に指し示したのだ。それこそは、株式の価格を適正な水準に導く市場の機能そのものである。

 一方のリーマン経営陣は、空売り投資家を非難することに終始し、危機を乗り越えるための抜本的な対策を打とうとしなかった。市場が悪い、投資家たちのせいだ、というのは破たんに向かいつつある企業の常套文句である。もちろん、中には理不尽な攻撃と感じられる状況もあるだろう。自分たちが破たんすることで潤う投資家がいることは何ともやるせないに違いない。だが、投資家たちを非難したからといって危機を免れることはできない。何よりもリーマンは、市場の中心的存在であり、多くの“空売り投資家”を顧客として利益を上げてきた大手投資銀行である。そのリーマンが経営危機に陥るや、市場と投資家を非難するというのは、皮肉というほかない。本文:5,415文字 この記事の続きをお読みいただくには、THE PAGE プラスの購入が必要です。

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最終更新:9/21(水) 15:00

THE PAGE