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東京五輪よりも大きい“ネコ”の経済効果 なぜいまブームなのか

ITmedia ビジネスオンライン 9月20日(火)7時10分配信

●新人記者(鈴木)が行く:



●ネコが年間で生み出す経済効果は?

 近年、イヌの飼育数が減少し続けるなか、ネコの飼育数は増加傾向にある。また、ネコの写真集をはじめとする書籍や映画、CMなどのコンテンツが急増しているほか、和歌山電鐵貴志川線貴志駅の「たま駅長」のように、ネコを使った集客活動を展開する自治体も増えてきている。いま、「ネコノミクス」という造語が生まれるほどのネコブームが巻き起こっているのだ。

【たま駅長の画像】

 なぜいまネコブームなのか。そしてネコにはどのくらいの経済効果があるのか。世間で話題になっているあらゆる出来事の経済効果を算出する“ミスター経済効果”こと宮本勝浩名誉教授(関西大学)に話を聞いた。

鈴木: 感覚的にもネコが好きな人はかなり多いと思いますが、ネコは一体、どれほどの経済効果を生んでいるのでしょうか。

宮本: まず、エサ代、おもちゃ代、病院代などを含むネコ1匹の飼育にかかる平均年間費用を算出したところ、11万1424円でした。これに全国のネコの飼育数987万4000匹を掛けると1兆1002億57万6000円になります。

鈴木: 飼育費用だけで1兆円超えですか……。

宮本: このほかに、ネコ関連の書籍やグッズ、テレビ番組、CMなどのコンテンツの売り上げが30億円。次に、ネコによる観光効果が40億円となります。この観光というのは、自治体がネコを使ってPRしたことによる効果や、猫カフェなどの店舗の売り上げも含まれます。

鈴木: ネコを駅長や館長に就任させるなどしてPRした際の効果ですね。

宮本: そうです。いまネコを町のPRキャラクターに起用する自治体はどんどん増えてきていますよね。さて、合計すると直接効果が1兆1072億57万6000円です。前回のSMAPの話と同じように、波及効果まで計算すると、一次波及効果が6676億円、二次波及効果が5414億円。全て足すと、ネコの経済効果は2兆3162億円もあるということになります。

鈴木: 2兆3162億円! 大きすぎてピンときません!

宮本: 例えば、日本の2大テーマパークである東京ディズニーリゾートとユニバーサル・スタジオ・ジャパンの経済効果(推計1兆~1兆5000万円)を足してもネコには勝てません。また、2020年の東京五輪の経済効果は2013~2020年の7年間で3兆円と言われていますから、いかにネコの経済効果が大きいのか分かります。

鈴木: 年間の経済効果では東京五輪よりも大きい。凄すぎる……。

宮本: 私もびっくりして何度も計算し直しました。

●ネコブームのきっかけは「たま駅長」

鈴木: ここからさらに詳しくお聞きしたいのですが、まず、自治体などが観光客集めのためにネコを起用するようになったのはなぜでしょうか。

宮本: それは、2007年に登場した和歌山電鐵貴志川線貴志駅の「たま駅長」の存在が大きいと考えられています。もともと和歌山電鐵自体の乗車人数は少なく赤字が続いており、貴志駅は無人駅でした。しかし、ネコ(たま)を駅長にしてみたところ、観光客が殺到したわけです。

 メディアに取り上げられるようになり、たま駅長を見るために多くの人が訪れました。和歌山電鐵の乗車人数がどんどん増え、最大の観光資源となったのです。その年に、たま駅長が生み出した経済効果を算出したところ、なんと11億円でした。

鈴木: ネコ1匹で11億円……。それは、他の自治体や企業もマネするのは必然ですね。

宮本: はい。ネコの集客効果がスゴいということが分かり、ネコを使った町おこしを考える自治体が増え始めました。例えば、広島県のJR芸備線志和口駅(りょうま駅長)や福島県の会津鉄道芦ノ牧温泉駅(らぶ駅長)でもネコ駅長を誕生させています。

 その他にも、ネコカフェなどネコをコンテンツにしたビジネスがどんどん生まれてきていますよね。算出した昨年のときよりもネコ関連のビジネス(またはコンテンツ)は増えていますから、経済効果はもっと大きくなっていると思います。

●日本の社会構造の変化も影響

鈴木: なるほど。しかし、ネコの飼育数が増えているのはどうしてでしょうか。

宮本: 昔は、郊外に一戸建ての家を買って、家族で犬を飼うという世帯が多かったのですが、近年は高齢の1人暮らし世帯が増え、マンションに移り住むケースが多くなりました。寂しいのでペットを飼いたい。しかし、マンションのルール上、犬は飼えないけど、ネコは飼えるという世帯が増えたわけです。

 また、高齢者で体が悪い人などは、手間暇のかからないネコの方が飼いやすいですよね。そして、イヌよりも比較的費用が掛からないという点も大きい。

鈴木: 高齢者層でネコの飼育数が増えてきているということですか。では、若い世代やミドル世代ではどうなのでしょう。

宮本: もちろん、増えています。その要因は夫婦の“共働き化”にあるようです。昔は専業主婦が犬の面倒(散歩など)を見ることができましたが、今は共働き世帯が多いため、それが難しくなりました。手間の掛からないネコなら飼えるということでシフトしているようです。

鈴木: なるほど。マンションでの1人暮らし世帯や、共働き世帯の増加――こうした社会的背景もネコノミクスをけん引していたのですね。勉強になりました。本日はありがとうございました。

(鈴木亮平)

最終更新:9月20日(火)21時32分

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