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韮崎「ドメーヌ茅ケ岳」初仕込みのベーリーAが最高賞に

産経新聞 9月20日(火)7時55分配信

 1年前に立ち上げたワイナリー「ドメーヌ茅ケ岳」(韮崎市上ノ山)の赤ワイン「アダージョ上ノ山2015」が今月10日、東京都内で開催された品評会「日本で飲もう最高のワイン2016」で、「ベスト日本ワイン」に輝いた。ワイナリーの代表、安部正彦さん(55)は50歳を過ぎてから栽培と醸造を学び、初めて仕込んだワインが最高賞の栄誉を得た。「恩師の助言に従っただけ」と気負いは見せないが、自身と生まれ育った地域を高めたい、という強固な信念が挑戦を支えた。

 ◇スキルアップ

 安部さんはブドウ農家の出身だが、大学卒業後に大手メーカーで長く、生産管理などに携わってきた。

 50歳を過ぎ、早期退職を前提に2年間、好きな勉強ができる会社の「セカンドキャリア制度」に応募。平成24年から山梨大大学院の「ワイン科学コース」で学んだ。

 「50代になると、会社でのスキルアップが難しい。でも新たなことにチャレンジしたかった」

 酒はほとんど飲まないという安部さん。ワインを選んだのは、父親が高齢になり、実家のブドウ農家を継ぐことを考えたからだ。

 実家など上ノ山地区の農家は生食用のほか、県内のワイナリー向けに甲州、マスカット・ベーリーAなどを栽培してきた。

 「でも、原料で終わっていた。自分でワインを造れば、付加価値が高まり収入も増える」と思った。

 醸造用産地として注目されるようになった同市穂坂地区のブドウに、「上ノ山も負けていない」という気持ちもあったという。

 ◇特区も活用

 安部さんは26年3月、大学院修了と同時に退社。妻の幸子さん(57)とブドウ造りを引き継いだ。「間引きや袋かけなど大変な仕事です」と幸子さん。それでも一緒に夢を追い求めた。安部さんは作業小屋を改造し、破砕機やタンク、樽(たる)など醸造用の機器を購入。市に働きかけて「武田の里にらさきワイン特区」第1号に。緩和された条件で税務署から製造免許も得た。

 初仕込みは昨年10月。大学院での研究テーマを生かし、ベーリーAのフラネオール(イチゴのような甘い香りの化合物)が増える時期まで収穫を遅らせた。

 白ワインに必要な低温管理の設備がないので、手がけたのはベーリーAだけ。名実ともに“日本一小さなワイナリー”。

 夫婦の手作業で醸造し、今年7月に瓶詰めした。2人の娘も交えて相談し、音楽用語の「ゆったり」から「アダージョ上ノ山」と名付けた。

 恩師らの勧めで品評会に出品。「実績やブランドにこだわらず本当においしいワインを見つけよう」という趣旨の会だ。計235本が出品され、入賞した日本の赤ワイン24本で最高の評価を得た。

 香りはフルーティで色もしっかり出た。多くの飲み手が「ベーリーAのイメージを覆した」と評したという。安部さんは「ベーリーAの差別化を目指したので少し自信を持てた。今後も良質のものを造りたい」と話した。自分の挑戦を引き金に、上ノ山でワイン造りを目指す人が増えることを願っているという。

最終更新:9月20日(火)7時55分

産経新聞