ここから本文です

どうしても「フリードHV」に4WDを設定したかったホンダが工夫したこと

MONOist 9/20(火) 6:25配信

 ホンダは2016年9月16日、5ナンバーミニバン「フリード」をフルモデルチェンジして発表した。2008年に発売して以来初めての全面改良となる。3列シートのフリードと、派生車種「フリード スパイク」の後継となる2列シートの「フリード+(プラス)」を用意した。また、5ナンバーミニバンとして初めてハイブリッドモデルに4WD(四輪駆動車)を設定した。フリードシリーズの買い替えや、「ハイブリッドミニバンがほしいが4WDがないので諦めていた」という雪国のユーザーに向けて提案していく。

【新型「フリード」のフロントフェイス、サイドビューなどその他の画像】

 車両価格は188万円から。JC08モード燃費はガソリン車で19.0km/l、ハイブリッド車ではトヨタ自動車の5ナンバーミニバン「シエンタ」と同じ27.2km/lとなる。月販6000台を計画している。

 なお、今回のフルモデルチェンジで採用を予想する声もあった排気量1.0lのターボエンジンは設定されていない。「燃費や出力は既存のパワートレーンで十分カバーできているため」(ホンダの説明員)というのが理由だ。

●先代よりも広く、さらに低床化

 新型フリードは、先代モデルと比較してボディーサイズを大きく変えずに快適性を向上したという。全長が50mm増なのに対し、1~3列目のヒップポイント間距離は90mm拡大。また、2列目シートのスライド量は先代モデルから120mm増の360mmとなる。

 全幅は増減なしだが、シートの横の間隔を1列目で50mm、2列目で25mm広げてウォークスルーしやすくした。

 フリード+は、開口部の地上高がFF(前輪駆動)車で335mmと低床化を図った。フリード スパイクと比較すると185mm低い。また、新型フリードの開口部地上高はFF車で480mmだが、全体をフラットなフロアとした。

●インテリジェントパワーモジュールの設計を見直した効果とは

 新型フリードとフリード+のハイブリッドモデルには、排気量1.5l(リットル)のi-VTECエンジンと1モーターを内蔵した7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を組み合わせた「SPORTS HYBRID i-DCD」を採用した。多人数で乗車するミニバン向けにローレシオ化し、より力強い加速性能としている。

 今回、インテリジェントパワーユニット(IPU)を小型化して3列目のシート下から1列目シート下に移動させた。さらに、排気方法や吸気ダクトのカバー設計の見直しも実施している。これにより、3列目シートの居住性が改善するとともに、フリード+には車いすで車両後部に乗り入れ可能な福祉車両も設定できた。IPUの小型化は、内部の機能部品の統合を進めることによって実現したという。

 また、「5ナンバーミニバンでは初」(ホンダ)となる4WDのハイブリッドモデルも設定した。従来のように3列目のシート下にIPUを置くレイアウトでは、ドライブシャフトとデファレンシャルギアを配置することが難しく、4WDの機構とハイブリッドシステムは共存できなかった。

 IPUを1列目のシート下に移動したことに加えて、ドライブシャフトを通せるコの字型の形状としたことで、4WDのハイブリッドモデルを5ナンバーミニバンとしては初めて設定できた。競合モデルとなるシエンタのハイブリッドモデルはFF車のみとなっている。

●IPUはフリード専用、さらにFFと4WDで別設計

 IPUは4WDモデルとFFモデルで個別の設計となっている。また、4WD用IPUを他車種に展開する予定はなく、実質的にフリード/フリード+専用となる。IPUを駆動方式に合わせて別設計としたのは、「FF用IPUのメリットを消さないため」(ホンダの説明員)だという。

 4WD用のIPUはコの字型とするために内部の部品のレイアウトを変えており、FF用よりも高さがある。そのため「小型化して厚みを減らした今回のIPUで低床化できるのに、コの字型で厚みのあるIPUを4WDだけでなくFFにも共通して採用すると、ハイブリッドモデル全体の地上高が上がってしまう。そのため、あえて別設計とすることにより、FFモデルの低床化の強みを殺さないようにした」(同社の説明員)。

 5ナンバーミニバンのハイブリッドモデルに4WDを設定できるのは、商品力を高める上で重要だという。「商品企画の一環で、山形県のお客さまに話を聞いた。日常的にクルマを使用するので燃費の良いハイブリッド車がほしいがFFしかないため、やむなく諦めているお客さまが多かった。5ナンバーミニバン市場は4WDハイブリッドモデルの要望が強いので、専用設計となってでも設定する必要があった」(同社の説明員)。

●世界初の重希土類フリーのモーター

 DCTに内蔵されたモーターは、大同特殊鋼と共同開発した重希土類フリーの熱間加工ネオジム磁石を採用している。重希土類フリーのネオジム磁石の実用化は「世界初」(ホンダ)だという。大同特殊鋼の国内生産拠点で量産している。

 高温下で使用する車載用モーターの磁石は耐熱性を確保するため、従来はジスプロシウムやテルビウムといった重希土類元素を添加してきた。しかし、重希土類はレアメタルに分類されており、産出地域が偏っているため、調達にリスクが伴う。重希土類元素の使用量の低減が課題となっていた。

 今回採用している重希土類フリーのネオジム磁石は、製造法とモーター内での配置を工夫することにより、従来の重希土類を使用した磁石と同等の耐熱性を達成した。

 磁石の製造は熱間塑性加工で行う。磁石の原料を粉末化し、熱間で押し出し成型することにより、従来の焼結工法の10分の1となる微細な組織を実現した。焼結工法よりも加工時間も短縮できるとしている。

 また、磁石をハの字に配置し、磁石の周辺に細かい穴をあけることで「磁石同士が磁界を互いに邪魔せず、最大限の効率を出せるようにした」(同社の説明員)。SPORTS HYBRID i-DCD向けに順次展開していく計画だ。

最終更新:9/20(火) 10:45

MONOist