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“もの売りからサービス提供への転換”がIoTの本質、でも、どうやって?

ITmedia エンタープライズ 9月20日(火)13時11分配信

 最近ではさまざまな産業分野で多様な適用事例も見受けられるようになってきたIoT(Internet of Things)。ただ、多くの企業にとってその取り組みはまさしくこれからだ。

【画像】「もの売りからサービス提供への移行」に成功した事例

 IoTの活用によって企業のビジネスはどのように変わるのか。それを踏まえて企業はIoTにどう取り組み始めればよいのか――。多くの企業が抱いているこうした疑問に対し、PwCジャパングループがIoTの最新トレンドをテーマに開催した記者説明会で見解を示した。

 その内容が非常に興味深かったので、ここで取り上げながら、企業へのIoTのインパクトについて考察してみたい。

 会見で説明に立ったのは、PwC米国パートナーでIoT・エマージングテクノロジーリーダーのシャヒード・アフメド氏と、PwCコンサルティング ストラテジーコンサルティングパートナーでPwCジャパン テクノロジー・メディア・通信産業リーダーの尾崎正弘氏である。

 アフメド氏はまず、IoTをけん引している6つの要件について説明した。6つの要件とは、「CPU、メモリ、ストレージコストの低下」「ITとオペレーションテクノロジー(OT)のコンバージェンス」「ビッグデータとクラウドの登場」「加速するデバイスの普及」「ネットワークコストの低下」「ベンチャーキャピタル(VC)への資金や投資の増加」である。

 次に同氏が示したのは、技術要素別に見た2020年における世界のIoT市場規模の予想である。図1がそのグラフで、2020年のIoT市場規模は1兆7000億ドルと見立てている。

 さらに、技術要素としては「ソフトウェア」「ハードウェア」「コネクティビティ」「サービス」の4つに分かれており、それぞれの割合も示されている。同氏は「今後のIoT活用の課題の1つとして、これら4つの分野を誰かがまとめていかなければいけないことが挙げられる」と指摘した。

 IoTはまた、用途別にも切り分けることができる。PwCでは消費者向けのIoTとは別に、「IcS」(インダストリアルコントロールシステム=産業用制御システム)、「IIoT」(インダストリアルIoT)と呼称し、図2のように経済的価値と産業を変化させる影響力の大きさから見れば、インダストリアルIoTのインパクトが最も大きいとしている。

●IoTの活用は「もの売りからサービスビジネスへの転換」

 では、インダストリアルIoTを活用することによって、企業のビジネスはどのように変わるのか。アフメド氏はPwCがコンサルティングを行ったサーモスタッド(自動温度調節装置)メーカーA社の例として図3を示しながら、次のように説明した。

 「A社では当初、製品単体の販売からスタートし、製品+遠隔サポート、製品+付加価値サービス、そしてついにはIIoTを活用した組み込み型のPaaSを提供するようになり、収益を拡大させた。つまり、自らのビジネス形態を“もの売りからサービス提供へ”と移行させたことにより、顧客エンゲージメントと収益拡大を果たした」

 アフメド氏のこの説明は、言い換えると「製品を販売する企業が顧客エンゲージメントと収益拡大を図るためには、IoTを活用して自らのビジネス形態を“もの売りからサービス提供へ”と移行させる必要がある」と解釈することができる。キーメッセージは「もの売りからサービス提供への移行」である。

 そして、同氏は説明の最後に図4を示した。この図はPwCが描く「IoTオペレーショナルリファレンスアーキテクチャ」、要するにIoTを活用するためには、これだけのテクノロジーとオペレーションに関わる要素を考慮する必要があるということである。

 この図は取りも直さず、PwCならばこれら全てを考慮したIoTソリューションを提供できるというメッセージでもある。

 アフメド氏に続いて説明に立った尾崎氏は日本企業の動向について、「日本でも多くの企業がIoTの活用をビジネスの重点戦略として捉え、取り組み始めている」と語った。だが一方で、「成果を上げるビジネスモデルをどのように描けばよいのか」と頭を悩ませている企業も少なくないという。

 これに対し、尾崎氏は「まずはもの売りではなく、サービスの対価として収益を得るという認識を明確に持つ必要がある。そしてIT分野におけるクラウドサービスのようなビジネスモデルを構築していかなければならない」との見解を示した。

 さらに、そうしたことを踏まえた上で、企業はIoTにどう取り組み始めればよいのかについては、「最初からROIに固執せず、IoTを活用できそうな領域に対して素早くパイロットプロジェクトを立ち上げ、やってみなければ分からない経験を重ね、やっていくうちにビジネスチャンスを見いだすといった攻めの姿勢を打ち出すことが大事ではないか」と語った。

 アフメド氏および尾崎氏が言うように、企業におけるIoTの活用はまず、「もの売りからサービスビジネスへの転換」という本質を理解することが肝要である。「最初からROIに固執せず、パイロットプロジェクトを素早く立ち上げて……」と尾崎氏が語るスタートアップの仕方についても重要なことである。そう考えると、IoT活用への取り組みは企業にとってまさしく経営革新である。果たして日本企業の経営者はその点を十分に認識しているだろうか……。

最終更新:9月20日(火)13時11分

ITmedia エンタープライズ