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<避難準備情報>高齢者施設で理解不足 発令の仕方見直しも

毎日新聞 9月20日(火)11時46分配信

 災害時の避難勧告・指示の前段階で出される「避難準備情報」。これには「要援護者は避難行動を始める」との意味があるが、8月30日に上陸した台風10号による豪雨被害を受けた岩手県岩泉町で、高齢者グループホーム「楽(ら)ん楽(ら)ん」を含む町内全5カ所の入居型高齢者施設が理解していなかったことが毎日新聞の取材で分かった。全国的にも周知が進んでおらず、発令の仕方を見直す自治体も出ている。

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 避難準備情報は、市町村長が国のガイドラインに基づき発令する。岩泉町は台風上陸前の30日午前、発令した。入居者9人が死亡した「楽ん楽ん」を管理する社団医療法人の常務理事は「避難準備情報が出たことは知っていたが、意味を理解していなかった」とした上で「準備情報が出た時に避難しておけば良かった」と話した。

 町内には、「楽ん楽ん」に隣接し同法人が管理する高齢者施設「ふれんどりー岩泉」以外に3カ所の入居型施設がある。毎日新聞が現場責任者に聞いたところ、全員が避難準備情報段階で避難させるとの認識はなかった。

 同町岩泉の介護老人福祉施設「百楽苑」の分田悦子苑長は「正確な意味を把握していなかった」とした上で「行政は避難を促すだけでなく、安全な場所などの情報も提供すべきだ」と話した。また、氾濫した小本川流域にある「グループホームいわいずみ」のホーム長、似内(にたない)ミユキさんも「いつどこに避難すべきかという情報がなかった」と話した。

 百楽苑の避難先は隣接の病院だが、分田苑長は「寝たきりに近い認知症の高齢者120人を移動させることはリスクが大きい。差し迫った危険を感じない状況で避難を選択できない」と簡単には避難できない現状も訴えた。

 避難準備情報の意味が分かりにくいとの指摘は以前からあり、自治体も対応を模索し始めた。東京都町田市は一昨年の台風被害を教訓に「避難の準備を開始してください」との表現を「お年寄りや体の不自由な人は直ちに避難してください」に変えた。群馬県高崎市は台風10号を機に、従来なら避難準備情報を出す段階で「避難勧告」を発令することにした。

 吉田直美・日本福祉大准教授(社会福祉学)は「避難準備情報ができて約10年たつのに、福祉関係者にも浸透していないのは行政の周知不足だ。国が定める人員配置を満たしても、多数の要援護者を抱える施設が自力で避難することは難しい。日ごろから地域にSOSの声を上げ、いざという時に手助けしてもらうことが大切だ」と指摘している。【国本愛】

 【ことば】避難準備情報

 「要援護者避難情報」ともいう。災害で人的被害が発生する可能性が高まった際、避難勧告、避難指示に先んじて市町村長が発令する。高齢者や障害者、乳幼児など避難に時間のかかる要援護者らに避難行動を始めるよう促す。それ以外の者は、非常用持ち出し品の用意など避難準備を始める。2004年に高齢者を中心に多くの死者が出た豪雨災害を機に05年3月に内閣府が新たなガイドラインに基づき定めた。避難には建物の上階に逃げることも含まれる。

最終更新:9月20日(火)12時56分

毎日新聞

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