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【日産 セレナ 新型】パッケージ比較ステップワゴン編…シートアレンジとバックドアの使い勝手が決め手

レスポンス 9月20日(火)19時45分配信

新型日産『セレナ』はシートアレンジや後席乗降方法、ラゲッジの使い勝手など、ファミリーミニバンとしての実用性を飛躍的に高めているのが特徴だ。

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使い勝手の進化で注目のデュアルバックドアは、ボックス型ミニバンのウイークポイントと言える、大きく開くバックドアの開閉時に車体後方に必要なスペース(各車1m前後)を小さくできるメリットがある。

具体的には、リヤガラス部分=樹脂製ハーフバックドアのみ開閉できることで、先代の半分程度のスペースがあれば荷物の出し入れが可能になるわけだ。

その機能/アイデアを盛り込むヒントになったのは、おそらくホンダ『ステップワゴン』の縦にも横にも開くわくわくゲート、サブドアだと推測できる。

ここではバックドアに特徴がある(!?)新型セレナとステップワゴンのパッケージングを比較してみたい。ファミリーミニバンとしての実用性、居住性に大きくかかわる基本設計部分だからである。

ボディーサイズは5ナンバーボックス型ゆえ、大きな差はない。全高にしてもセレナのほうが25mm高いだけである。ホイールベースはステップワゴンが30mm長いものの、逆に室内長はセレナのほうが最大20mm長い。

最大20mmと記したところには、新型セレナのパッケージング上の秘密がある。そう、新型セレナは2列目席超ロングスライド機構に加え、3列目席にも120mmのスライド機構を新設定。それが最後端位置の状態で、最大室内長3240mmとなり、ステップワゴンの3220mmを上回るのである。

さて、先代からプラットフォームをキャリーオーバーしたことで高めの2ステップフロアを継承する新型セレナの1列目席だが、乗降性にかかわるフロア地上高は1段目のステップ部が360mm、フロアはそこから60mm高い420mmの位置にある。高めの視界が自慢のセレナのアイポイント地上高(日産測定値)は1410mmだ。

対するステップワゴンは独創のセンタータンクレイアウトが基本の低床プラットフォームによる1列目席はワンステップフロアで地上からの高さは390mm。新型セレナより30mm低いことになる。アイポイント地上高(日産測定値)は1368mm。

計算が合わない……、と思うかもしれないが、それはフロアとシート位置の関係がかかわってくるから。新型セレナの1列目席ヒール段差(フロアからシート座面前端までの高さ)が約340mmなのに対して、ステップワゴンは約320mm。シートがより低くセットされている。もちろん、より自然でアップライトな着座姿勢がとれ、降車しやすいのはヒール段差に余裕のある新型セレナのほうだ。

ちなみに身長172cmのボクのドライビングポジションでの頭上スペースは新型セレナが約250mm、ステップワゴンが290mm。ステップワゴンのほうが室内高が25mm高く、またシートが20mm低くセットされている合算分と考えればいい。

では、ファミリーミニバンとしてもっとも重要な後席はどうか。乗降性に大きく影響するスライドドア開口部は新型セレナが幅800mm(最大値)、高さ1305mm。ステップワゴンは幅760mm(最大値)、高さ1260mm。新型セレナの開口幅がより広いのは、Bピラーを後寄りに50mm下げたことによる。

ステップ地上高は新型セレナの場合、やはり2ステップフロアで1段目のステップが390mm、フロアは90mm高い480mmと、このクラスでもっとも高い。ステップワゴンはここでも段差のないワンステップフロアでステップは地上385mmとごく低いのである。

2列目席のアレンジ性は新型セレナの圧勝だ。新型の2列目席の前後スライド量は標準車で570mm。超ロングスライド仕様で690mm。ステップワゴンは610mmだ。しかしその差がどうこうと言うよりも注目したいのは、新型セレナのスマートスマートマルチセンターシートを備えた2列目席。新型セレナは3分割で、キャプテンシートにもベンチシートにもアレンジでき、なおかつ左右席ともに横スライドが可能。左席は210mm、右席は105mmスライドする。左席を大きく中寄せスライドすることで乗降間口が広がり(最大580mm)、3列目席の乗降のしやすさは格段に向上。

ただし、2列目席の乗車性がいいのはステップワゴンだとしても、降車性に関しては新型セレナが圧倒する。フロアが高いのになぜ? と思うかもしれないが、理由はシートサイド外側のたわみ量。新型セレナは柔らかくたわみ量が大きいため、腰をスルリと滑らせて降りられ、地面が近く感じる。対してステップワゴンはシートサイドが立ち気味で硬く(1列目席も同様で、ホールド性重視のため)、腰を滑らせて降りにくく、地面が遠く感じられ、ヨイショっという降車姿勢になる。

ステップワゴンの2列目席は標準がキャプテンシート。OPでベンチシートが用意される。つまり購入時にどちらかかを選ばなくてはならず、なおかつキャプテンシートに横スライド機構はない。よって2列目席ウォークインでの乗降間口は350mmにとどまる。もちろん2-3列目席スルーでも乗降可能だが、その幅は新型セレナ220mm、ステップワゴンは160mmと狭い。3列目席の乗降まで考えた2列目席のアレンジ性は新型セレナに軍配が上がる。

新型セレナがステップワゴンを大きくリードするのは3列目席の着座感。身長172cmのボクが着座したときの頭上方向のスペースはステップワゴンが250mmと、新型セレナの120mmの倍近くあるものの、ひざ回りスペースはほぼ同等。しかしステップワゴンの3列目席はクラス唯一の床下収納にこだわったためか、座面長が約420mmと極端に短い。新型セレナは先代比+20mmの480mmまで伸ばされ、クッション性もよく、かけ心地はけっこう違う。

さらに新型セレナの3列目席実用性の切り札としてあるのが、3列目席に配置されたパワースライドドア開閉スイッチ。ドライバー、2列目席の乗員に頼らず降車しやすいのである。これは便利だ。

3列目席は格納方法にも大きな違いがある。新型セレナは先代同様、左右ハネ上げ式。一般的にはリヤクオーターウインドーの視界をふさいでしまうのだが、セレナは低い位置で固定するため、リヤクオーターウインドーの2/3の視界が確保される。床下収納式にしないのは、ラゲッジ床下にあると便利な収納スペースを持ちたいからだ。

ステップワゴンの3列目席は床下格納式。リヤクオーターウインドーの視界を一切犠牲にせず、わくわくゲート成立に不可欠なアレンジだが、床下収納スペースは成立しない。

いよいよバックドア回りの使い勝手比較である。新型セレナのデュアルバックドアは全体を開けたときの車体後方に必要なスペースは約1m。しかし樹脂製で軽いハーフバックドアのみ開けると後方に必要なスペースは約480mmで済む。ただし、ハーフバックドア下端の地上からの高さは1040mmあり、重い荷物を出し入れするのは困難。軽く小さい荷物の出し入れに限られる。

一方、ステップワゴンのわくわくゲートの横開きするサブドアは3段のストッパーを備え、開き、車体後方に必要なスペースは400/640/760mmと選べる。中間まで開けば日常的な荷物は出し入れでき、ラゲッジフロア地上高は445mmと驚異的に低いから、重い荷物の出し入れは楽々。さらに3列目席を左側だけ格納しておけば、人や犬の乗降も可能(内側にもオープナーがある。フロア地上高は500mm)。これがステップワゴンの大きな個性、便利性である。バックドアの使い勝手だけを見ると、ステップワゴン優位という印象である。

ラゲッジそのものは、新型セレナが開口部地上高520mm、奥行き360~480mm(3列目席スライド位置による)、幅1170mm、高さ1220mm。3列目席格納時奥行き1150mm(2列目席後端時)。ステップワゴンは同445mm、500mm、1220mm、1290mm、1180mmだ。容量的にはステップワゴンがややリードするが、どちらもこのクラストップレベルの容量と言える。

さて、新型セレナとステップワゴンのパッケージ、使い勝手比較。どちらに興味、魅力を感じただろうか? 正直言って、優劣ではなく、自身のライフスタイルにどちらが合うかが選択のポイントになる。2列目席のシートアレンジ性、全列全席の乗降性なら新型セレナ。バックドア側から人や犬が乗降できる楽しさ、実用性で選ぶならステップワゴンになるだろうか。


青山尚暉|モータージャーナリスト/ドックライフプロデューサー
自動車専門誌の編集者を経て、フリーのモータージャーナリストに。自動車専門誌をはじめ、一般誌、ウェブサイト等に寄稿。自作測定器による1車30項目以上におよぶパッケージングデータは膨大。ペット(犬)、海外旅行関連の書籍、ウェブサイト、ペットとドライブ関連のテレビ番組、イベントも手がけ、犬との快適・安心自動車生活を提案するドッグライフプロデューサーの活動も行っている。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ムック本「愛犬と乗るクルマ」(交通タイムス社刊)好評発売中。

《レスポンス 青山尚暉》

最終更新:9月20日(火)19時45分

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