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<ハンセン病資料館>北條民雄の童話、絵本に

毎日新聞 9月20日(火)15時0分配信

 ハンセン病患者の作家として知られる北條(ほうじょう)民雄(1914~37年)の童話「可愛いポール」を基にした絵本を、国立ハンセン病資料館(東京都東村山市)が刊行した。国立療養所に入所させられた北條が、文学の師となる川端康成から初めて返書をもらった直後、発表した童話という。川端の指導の下、作家として大成したいという願いがにじむ作品となっている。【江刺正嘉】

 資料館が北條の童話を絵本化したのは、2014年の生誕100年を記念した「すみれ」(1935年発表)に続き、2作目。北條が残した童話はこの2作とされる。18歳でハンセン病と告知され、現在の国立多磨全生園(東村山市)に入所した。

 川端との間で交わされた書簡によると、北條は1934年8月、面識のない川端に手紙を出し、原稿を見てほしいと依頼した。川端から2カ月後に協力する旨の返書があり、北條は非常に喜んだという。10日ほどして「可愛いポール」を園内の児童文芸誌に発表した。川端はこの原稿は見ていないという。

 北條は病の体験を基に50以上の短編小説や随筆を残した。川端は作品に目を通し、助言するなどしたという。21歳の時に発表した「いのちの初夜」が文学界賞を受賞し、芥川賞候補にもなって注目されたが、肺結核のため、23歳で亡くなった。

 川端は北條の死後、北條をモチーフにした小説「寒風」を発表するほど北條の才能を評価し、作品を世に送り出す手助けを続けた。

 「可愛いポール」は、野犬狩りで捕まえられた子犬「ポール」が、通りかかった少女「ミコちゃん」に救い出され、仲良く暮らすという話だ。資料館司書の高井恵之(さとし)さんは「野犬狩りは患者の強制隔離をイメージしている。北條はミコに川端を、ポールに自身を投影させ、川端に拾われて小説家になる夢を実現したい気持ちを表現したのだと思う。川端との出会いが決定的な影響を与えたことが分かる」と話している。

 3000部を出版。絵本作家のおぼまことさんが明るいタッチの絵を描いている。資料館の見学者で、希望した人には館内で無料配布する。

最終更新:9月20日(火)15時0分

毎日新聞