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芥川賞「コンビニ人間」村田沙耶香さんインタビュー

日刊スポーツ 9月20日(火)11時16分配信

 「コンビニ人間」で第155回芥川賞を受賞した村田沙耶香さん(37)が、日刊スポーツのインタビューに応じた。執筆のサイクルに合うからと週3回、コンビニでアルバイトを続ける中から生まれた作品、執筆を通して感じた同世代の女性、社会への思いを語った。

【写真】村田沙耶香さんが芥川賞贈呈式「顔だらけで緊張」

 受賞から2カ月たった今も取材が殺到し、執筆時間がないという村田さん。受賞前こそ週3回、コンビニで働きながら小説を書いてきたが、今は休んでいる。

 「(受賞前は)朝2時に起きて、書きます。前日に書いたリストの内容を6時までに終わらせることでシャキッとする。8時から午後1時までアルバイト。(夕方)5時まで執筆し9時には寝ます。(小説家)専業でやると書くのをサボってしまう。コンビニがあることで毎日、締め切りがあるような状態です」

 大学に入って働き始めたコンビニは“聖地”だ。

 「小学生のころから本当に内気でおとなしい子どもでした。ファミレスや専業の仕事もやったが、コンビニが一番、向いていた。初めて(人間関係で)対等でいられた。彼氏はできたことがありましたが、飲みに行く男友達が初めてできたのがうれしかったです」

 時給は? スポーツ新聞は読むのだろうか?

 「昼勤務の割に結構、高くて900円くらい。月10万円いくかいかないか。日刊スポーツさんは売っている印象が強い。自分で読むことはあまりないです」

 「コンビニ人間」の主人公は、コンビニで働くことで世界とのつながりを感じる36歳の未婚女性だ。

 「物語は頭の中の映像を文字にする感じで(人物の)似顔絵や場面を絵で描きます。主人公は『コンビニでバイトだけしていたら、どういう風に言われたのだろう』という、ある種、仮定の自分を起点に書いた」

 物語では同世代の女性の結婚事情なども描いた。

 「小説家になった時点で母親が『結婚しない』と思ったらしく、プレッシャーは全然なくて。むしろ同世代で『産むなら今、婚活しなきゃ』『誰でもいいから子どもの親が欲しい』みたいに言う人がいる。悪いとは思いませんが、自分は子どもが欲しいと思ったことがないので、その衝動はどこからくるんだろうと。でも体に(出産の)リミットがあるから、つらいことだとも思うし、科学が発達して男の人も出産できたら便利なのに、とも思う」

 凶悪事件が多発する昨今「人類を裏切るような言葉を探す」と贈呈式で宣言した。多くの人から祝福されたが、その言葉はあまり体に残っていないという。

 「人(犯罪者)が潜在的に感じたことを言語化した、残酷な小説に出会っていたら殺人は起きなかったかもしれない…そういうことができたらとニュースを見て思う時はあります。(読者が頭の中で)やってしまえる意味で小説はすごい力を持っていると思います」

 「小説家として意味を感じる言葉以外は体の中に残らない。祝福の言葉はうれしいけれど、滑り落ちてしまっている感じがします。『コンビニ人間』に例えるなら『小説人間』」

 村田さんは今、新たな作品を2作、並行して手掛けている。【聞き手・村上幸将】

 ◆村田沙耶香(むらた・さやか)1979年(昭54)8月14日生まれ、千葉県印西市出身。二松学舎大付属柏高から玉川大文学部に進学。03年「授乳」で群像新人文学賞優秀賞を受賞し、デビュー。09年「ギンイロノウタ」で野間文芸新人賞、13年「しろいろの街の、その骨の体温の」で三島由紀夫賞受賞。14年の短編「清潔な結婚」が、英国の文芸誌「GRANTA」に掲載された。

 ◆「コンビニ人間」 古倉恵子は36歳未婚で、大卒後も続けるコンビニのアルバイトも18年目。マニュアル通りに働けば評価され、3食ほぼ済ませられるコンビニで、世界の部品でいられると感じる一方、同級生らに専業で働かないこと、彼氏がいない理由を聞かれるたびに適当な理由をつけていた。そんな中、婚活目的でアルバイトに入り、女性客へのストーカー行為でクビになった白羽と同居を始める。

最終更新:9月24日(土)17時19分

日刊スポーツ

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