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ストレス減らし、感情コントロール…瞑想で非行再発防げ「マインドフルネス」 女子少年院で導入

産経新聞 9月20日(火)14時20分配信

 ストレス低減に役立つとされる米国発の瞑想(めいそう)法「マインドフルネス」を、非行少年の更生教育に活用する動きが、全国の少年院で広がっている。感情をコントロールする力が身につくといい、保護者からの虐待など被害体験を抱える少年少女らの再非行防止に効果が期待されている。(田中佐和)

 ◆一つの感覚に集中

 「目を閉じて。全員に違うものを渡すから、手の感覚に意識を向けてね」

 7月、大阪府交野市にある女子少年院「交野女子学院」では、マインドフルネスのグループワークが行われていた。法務教官が少女たちの手に、動物のフィギュアやぬいぐるみを置いていく。視覚や聴覚をシャットダウンした状態で、触覚という体の感覚に集中するためのプログラムだ。

 数分後、渡されたときの気持ちを尋ねられると何人かが手を挙げて答えた。

 「渡される瞬間はモヤモヤしてかゆい感じ」

 「触った感触だとセイウチかトドかな、と思って形は当たってたけど、色が想像と違った」

 教官は一人一人の意見に丁寧に解説を加え、こうアドバイスした。「何が起こるか分からないと緊張するけど、一つの感覚を研ぎ澄まして今起きていることを確かめると、気持ちが落ち着いてくる。その感覚を忘れないで」

 ◆トラウマ切り離す

 マインドフルネスは、1979年に米マサチューセッツ大のジョン・カバットジン名誉教授が仏教の瞑想法を応用して開発した。「今この瞬間に意識を向けること」や「気付き」などと訳される。呼吸をしているときの自分の体の動きに意識を向ける「呼吸瞑想」や、一歩一歩ゆっくりと歩きながら足の感覚を確かめる「歩行瞑想」などが中心。一つのことに集中することを重視しており、ストレス低減や集中力アップ、衝動性のコントロールにも効果があるとされる。

 法務省は平成26年度から少年院でマインドフルネスの試行を始め、現在は全国に9カ所ある女子少年院のすべてで実施。男子の少年院でも導入を進めている。

 女子少年院が先行しているのは、非行少女の傾向として、過去に虐待や性被害といった被害体験を持つケースが多いためだ。

 法務省のマインドフルネス外部アドバイザーを務める関西学院大の池埜(いけの)聡教授(心的外傷学)によると、そうした少女は未来に希望を抱けず、「生きていても仕方がない」と否定的な思いに支配されがちだ。だが、マインドフルネスで「今」を感じる時間を増やすことで、過去のトラウマを切り離して考えられるようになるという。

 ◆心理的変化を実感

 ただ、導入当初はトラブルもあった。交野女子学院では瞑想中に数人が被害体験を思い出し、体調不良を訴えた。同学院は改良を重ね、ゲーム感覚でできるプログラムを独自に開発。現在は月2回、グループワークで行っている。

 同学院の10代の少女は、半年間のマインドフルネス体験による心理的な変化を実感している。「いらいらしたときは時計の秒針の動きに神経を集中させたり、ペンを持つ手の感覚に注意を向けたりして、心を落ち着かせることができるようになった。再非行をしないために、この努力を続けていく」と話した。

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 ■グーグル、アップルも活用

 マインドフルネスは、グーグル、アップルなどの世界企業やスポーツ界でも、ストレス対策や集中力を高める手法として取り入れられている。

 瞑想を繰り返す中で、記憶や感情をつかさどる海馬が大きくなるなど、脳のさまざまな部分が活性化したという米国の脳科学者らによる研究データもあるという。

 米金融大手のゴールドマン・サックスでは、社内にある社員用ジムで、マインドフルネスのプログラムを実践。担当者は「ストレスが多い業界なので、休息に対する社員の意識向上に役立っている」と話した。

最終更新:9月20日(火)15時4分

産経新聞

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