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宇多田ヒカルが音楽業界に与えた衝撃

オリコン 9月22日(木)7時0分配信

 宇多田ヒカルが、およそ8年半ぶりにオリジナルアルバム『Fantome(ファントーム)』を発売する。宇多田と言えば、1stアルバム『First Love』の衝撃が忘れられない。そこでオリコンが発行するエンタテインメント業界誌『コンフィデンス』に掲載された当時の宇多田ヒカルに関する記事から、同作が音楽業界に与えた影響について改めて振り返ってみたい。

宇多田ヒカルが残した記録(表)

『First Love』は国内アルバムセールス歴代1位を記録

 21世紀を目前に控えた99年3月10日にリリースされた、宇多田ヒカルのアルバム『First Love』。前年12月にデビュー曲をリリースしたばかりの新人アーティストによるこの1stアルバムが、累計売上767.2万枚(※)を記録。国内アルバムセールス歴代1位を誇る、日本の音楽史における金字塔になった。今回、8年半ぶりにアルバムをリリースするにあたり、宇多田のデビューが音楽業界に与えた衝撃がどれほどのものであったのか、オリコンが発行するエンタテインメント業界誌『コンフィデンス』に掲載されたアルバム発売当時の記事から読み解いてみたい。

 彼女について誌面で初めて言及したのは99年1月4日号。『ブレイクアーティストを探せ!』と題した特集だった。同企画では、テレビ、ラジオ、広告代理店、有線放送、レコードメーカーの関係者に対して行ったアンケート調査を実施。ここで宇多田は圧倒的な評価を獲得し、ブレイクが最も期待されるアーティスト総合1位となる。この結果について記事では、「一度聴いたら忘れられないパワフルかつエモーショナルなボーカル、優れたソングライティング力、存在感は群を抜いており、98年後半の音楽シーンに突如として現れた新星に、早くも業界内部では興奮気味だ」と伝えている。

 では、彼女の何がそんなに驚くべきことだったのか。デビュー曲「Automatic/time will tell」が売上65万枚を突破した99年3月15日号において、「特筆すべきはタイアップやTV出演等の定番のセールスプロモーションをほとんど行っていないにもかかわらず凄まじいヒット作に繋がったこと」と分析。聴く人がその良さを評価し、次々と口コミが広がったことによるヒットであることを指摘している。

 そして満を持して発売した1stアルバム『First Love』で、宇多田は驚くべき記録を達成する。

 当時アルバムとシングルを合算した、売上1000万枚突破までの最短記録を持っていたのは、小室哲哉率いるglobeだった。彼らは、95年8/21付での初登場以来、9ヶ月で500万枚突破。1000万枚突破は96年11/18付。1年3ヶ月での達成だった。ところが宇多田はそれを6ヶ月足らずで達成(98年12/21付~99年6/7付)。これまでの記録を3分の1にまで縮めてしまったのだ。

 その後も宇多田の快進撃は続く。01年3月発売の2ndアルバム『Distance』は、前作『First Love』を上回り、史上最高初動売上となる300.3万枚を記録。これは、『First Love』の最高アルバムセールス記録とともに今も破られていない。さらに、10年11月に発売した『Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2』まで、アルバムが7作連続で首位を獲得。デビューから7作連続のアルバム首位獲得は女性アーティストでは最多の記録となっている。

 時代が彼女の登場を待ちわび、それに応えるように次々と日本の音楽業界の記録を塗り替えてきた宇多田ヒカル。彼女の再スタートを、ブレイクのきっかけとなったラジオでは異例の全国101局のパワープレイで迎えた。16年の音楽業界は、宇多田のデビュー当時とはまったく様相が異なる環境だ。しかし、アーティストが作品を送り出し、それをメディアやファンが口コミで広めていくというヒットの図式は普遍だ。金字塔を打ち立てた時代の寵児が、再び日本の音楽シーンを盛り上げる。
(※)14年3月発売『First Love -15th Anniversary Edition-』の売上を含む

(コンフィデンス 16年9月26日号掲載)

最終更新:9月22日(木)7時0分

オリコン