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スズキが軽自動車の乱売競争と決別…ワンマン・鈴木修会長の経営改革はいよいよ総仕上げに入った

産経新聞 9月21日(水)11時15分配信

 軽自動車を主力とするスズキが、国内専用規格の軽販売でひたすらシェアを追い求める「乱売競争」とは距離を置き始めた。昨年4月の軽自動車税増税後、市場が冷え込んでおり、その中でディーラーへの押し込み販売が続けば、割安な新古車が大量に出回って、ブランドの毀損を招くと判断しているためだ。スズキの方針転換は、ワンマン経営で同社の成長を牽引してきた鈴木修会長の経営改革に向けた総仕上げでもある。

 政府が昨年4月に軽自動車税を従来の1.5倍の年1万800円に引き上げて以降、税負担の増加が嫌気され、各社の軽販売は大きく低迷した。その中で各社が販売台数を維持しようと、買い手のいない新車をディーラーなどの名義で一旦届け出して販売台数をかさ上げするやり口を展開した結果、ほぼ未使用の新車が次々と「新古車」として、中古車市場に流れ出した。

 スズキ主力の軽「ワゴンR」を昨年、新古車で購入したという千葉県の40代男性会社員は「わずか4キロしか走ってなかったのに、新車で買うより3割程度安く手に入れられた」と話す。

 こうして、ほぼ未使用の新車が新古車として市場にあふれた結果、新車の値崩れや中古価格の下落というしっぺ返しとして各社に跳ね返ってきた。自動車メーカーにとって中古車市場での価格が落ちることは、その車両のブランド価値が落ちるのとほぼ同意義。乱売競争の行き着く先は軽全体の地盤沈下で、スズキの鈴木会長は、汎用化して、価格以外に価値が打ち出しにくくなった白物家電の「二の舞になりかねない」と危機感を強めていった。そこでスズキは昨年10月以降、シェアより「一台一台を大事に売る考え方に転換」(鈴木会長)し、乱売競争と一線を画すようにした。

 戦略の変化は販売台数からも見て取れる。スズキの今年1~7月の軽販売は前年同期比9.2%減少。5月に軽などで燃費不正問題が発覚した影響もあるが、7月まで19カ月連続でマイナスということを考えれば「売り方改革の影響の方が大きい」(証券アナリスト)と見るのが自然だ。

 一方で小型車を中心とする登録車は7月まで11カ月連続でプラス。スズキの国内販売統計からは、軽の無茶売りを控えながら、より利幅の大きい小型車を強化する“修改革”の実態がまざまざと浮かび上がる。軽の1~7月の販売はダイハツに3万4000台もの水をあけられたが、ワゴンRなどを中心に次第に中古車価格は値上がりに転じており、戦略は狙った通りに進む。

 スズキの方針転換は、ライバルのダイハツにも影響を及ぼし始めている。スズキが乱売を控える中で、無理に台数を追えば、中古車市場での価格が落ち、結果的に自社の首をしめかねないからだ。しかもダイハツは10月にトヨタの100%子会社になったばかり。今まで以上に採算が重視されるのは確実。軽でも収益を高めるにはより高値で売れるようブランドを高める必要があり、ダイハツの松下範至専務執行役員は「一台一台を大事に売ることが大事だ」と言い切っている。

 スズキ、ダイハツにとって、小型車での海外展開の加速や次世代環境対応車への対応など、将来に向けて取り組むべき課題は山積している。その中で、少子化で市場の反転が見込みにくいガラパゴス市場の軽でトップを競いあっても、待ち受けるのはじり貧だけだ。ダイハツとの頂上決戦で軽市場をここまで大きく育てあげた鈴木会長が、自ら矛を収める形で率先して取り組み始めた軽の売り方改革は緒に就いたばかりで、最後まで投げ出さず、やり抜く覚悟が問われている。(今井裕治)

最終更新:9月21日(水)12時57分

産経新聞