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バイオ産業都市を目指すウィーン

ニュースソクラ 9/20(火) 16:20配信

英ケンブリッジ、独ミュンヘンに続け

 ウイーンと言えば、クラシック音楽で有名である。毎年、元旦に楽友協会のコンサートホールで行われる、ウイーンフィルのニューイヤーコンサートは、世界中のファンを魅了している。ウイーン国立音大には世界中から音楽留学生がウイーンの伝統音楽の真髄を極めようと集まってきている。

 そんなウイーンが、今、21世紀に生きる街として、新しい産業の育成に取り組んでいる。バイオインダストリーである。

 欧州では、バイオインダストリーのハブが2か所あると言われている。一つは英国のケンブリッジで、ケンブリッジ大学を中心に研究機関やバイオ企業が集積している。現在、150社以上がこのエリアに集積している。それに続くのがミュンヘンで、冷戦終了後連邦政府の支援も受けてバイオ企業のハブとなった。100社程度が存在する。

 ウイーンはそれに比べるとはるかに小規模で、せいぜい40社程度であるが、専門家はウイーンのバイオインダストリーの今後に注目している。

 バイオインダストリーを育成するには、研究機関と民間のスタートアップ企業が相互に影響を与えることができるクラスターが必要であると言われている。ケンブリッジやミュンヘンには大規模なクラスターが存在している。

 ウイーンでクラスターの役割を果たすのが、ウイーンバイオセンターである。このセンターは、ウイーン市の中心からほど遠くないところにあって、9万平米の敷地を有している。このセンターでは1400人の研究者と700人の学生が研究活動にいそしんでいる。ここには基礎研究所が4機関あり、大学も併存している。またスタートアップを中心に17のバイオ企業がオフィスを構えている。またスタートアップ企業を支援する、いわゆるインキュベーターも存在する。

 このセンターは、1988年に免疫病理学研究所(IMP)がこの地に移転してきたことをきっかけに生まれた。IMPは、ドイツの製薬会社、ベーリンガーインゲルハイムと米国のバイオ企業ジェネンテックが合弁で作った非営利の研究所である。

 このIMPから1997年にスピンアウトしてできた会社がインターセルである。その後ベンチャーキャピタルなどから、リスクマネーを集めて順調に発展した。2005年にはウイーン証券取引所にIPOをした。2013年、インターセルはフランスのバイオ企業と合併し、社名をヴァルネヴァと改めた。従業員数は280人を超える。通常このようなクラスターから生まれたバイオ企業の平均従業員数は30名程度と言われている。この企業はかなり大手と言える。

 バイオセンター出身ではないが、ナブリヴァという会社もある。この会社はかつてスイスの製薬会社サンドが、ウイーンに持っていた新薬研究所であった。サンドが、同じくスイスの製薬会社チバ・ガイギ―と合併しノヴァルティスとなったとき、サンドはジェネリック(特許期間切れの薬品)専業の会社となった。このため新薬研究所は不要となりスピンアウトし、バイオファンドが買収し、ナブリヴァと名称を変更した。この会社も2014年にナスダックに上場した。

 このほかにもバイオセンターには、幼児の癌を免疫療法で治療する新薬の臨床実験をすませ、EUで新薬承認申請を行っている会社もある。この会社もIPOをいずれ行うことを検討している。

 今回は、バイオハブ都市を目指す知られざるウイーンの一面をご紹介させていただいた。

■茶野 道夫(ウィーン在住コンサルタント)
日系金融機関のウイーン駐在代表を定年退職後、不動産投資コンサルタント。日系金融機関のウイーン駐在代表をつとめた後、定年退職。ウイーンで、不動産投資コンサルタント。英、独、仏、西、伊、露語に通じ、在欧経験28年。英国、スペインにも勤務。

最終更新:9/20(火) 16:20

ニュースソクラ