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女性と異なる男性のうつ、その対処法は?

ウォール・ストリート・ジャーナル 9月20日(火)14時17分配信

 筆者は、ある友人のことが気掛かりだ。彼は友人からのメールや電話にきちんと返さなくなった。実際に会うと、怒りっぽくてイライラしているように見える。不眠を訴え、やる気が起きず、意欲もないと話す。元気かと聞くと、「まるで自分でないようだ」「頭が混乱している」と答える。

 彼はうつになっているのだ。だが、筆者にはどうしたら彼を救えるかが分からない。

 統計によると、男性がうつになるケースは女性よりずっと少ない。米薬物乱用・精神衛生サービス局(SAMHSA)が2014年に国内で実施した「薬物使用と健康に関する全国調査」によると、18歳以上の男性で過去1年間にうつ病の本格的症状を1回以上経験した人は4.8%だった。これに対し、女性は8.2%だった。

 ただ専門家らは、こういった数字が実態を表していない可能性を指摘する。男性は、気分が落ち込んでいると訴えたり、うつの治療を求めたりする傾向が女性よりかなり弱いからだ。

 精神科医や医療専門家は、過去2週間で以下の10の症状のうち5つ以上を経験することを「本格的なうつ病性障害(major depressive disorder)」と定義する。①1日の大半において気分が落ち込んでいる、②イライラする、③大半の活動への興味や喜びが減退する、④体重や食欲に大きな変化がある、⑤睡眠に変化がある、⑥精神活動に変化がある(焦燥ないし怠惰)、⑦疲れる、ないし、気力がなくなる、⑧罪責感ないし無価値感を覚える、⑨集中力に変化が出る、⑩死について何度も考える、の症状だ。

 専門家によると、女性はうつを内的なものと考え、無価値感や自責の念など、感情的な症状に目を向けることが多い。対照的に、男性はそれを外的なものと考え、身体的な症状に目を向けがちだ。男性は概して、泣いたり、寂しさを口にしたりしない。その代わりに、何も感じない、眠れない、ストレスを感じる、気力がないなどと訴える。そして、イライラして、怒りっぽくなる人も少なくない。

 自分の感情をよく把握できない男性もいる。だが、もっと大きな問題は、男性がそれについて話せないよう条件付けられていることにあることだ。ニューヨークの「脳と行動に関する研究基金」の代表で精神科医のジェフリー・ボレンスタイン博士は、「男性は自分の感情をコントロールすべきで、うつは弱さの兆候だと受け取られかねないという感覚がある」と話す。つまり、男性は自分で自分の問題を解決することが期待されているのだという。

 セラピストたちは、こうした感覚が男性のうつ病をより深刻にしかねないと指摘する。臨床心理学者のナンド・ペルーシ氏は、「女性にとって、うつは助けを得るべきサインで、根本的に何かを是正する必要があることを示すサインだ」としたうえで、「男性にとっては、自分が落伍者であり、負けを認めたことを示すサインだ」と話す。

 精神科医のドナルド・マローン氏は、この敗北感こそが、うつの男性が引きこもり、孤立することが多い理由だと指摘する。

 そして、これは男性の人間関係を破滅させかねない。最愛の人、とりわけ配偶者は傷ついたり、夫に拒否されたように感じたりしかねないからだ。ある研究によると、夫婦間の問題は男性にも女性にもうつを引き起こし得る。しかし、1997年に学術誌「心理科学」に掲載された有名な研究によると、女性の場合は夫婦間の問題がうつより先に起こるが、男性の場合には、うつが起こってから夫婦間の問題が起こることが多い。ランド研究所の心理学者で行動・社会科学上席研究員のウェンディ・トロクセル博士は、「男性のうつへの対応は、他人を遠ざけるというものであるため、パートナーが無力感や孤独を感じることにつながりかねない」と述べる。

 では、うつに悩む男性を救うにはどうすれば良いのだろう。

よくあることだと告げる

 男性に対しては、それが自分のせいでもないし、自分1人だけの話でもないと伝えよう。クラーク大学(マサチューセッツ州ウースター)のマイケル・アディス教授(心理学)は、「インターネットで『男性とうつ』を検索すると、その結果に驚くだろう」と話す。成功した男性でうつに悩んだことのある人はたくさんいる。リンカーン元米大統領もチャーチル元英首相もそうだし、宇宙飛行士のバズ・オルドリン氏も、ミュージシャンのブルース・スプリングスティーン氏もそうだ。

 もし、あなたがうつに悩んだことがあるのなら、自分の経験をその男性に打ち明けよう。そして、うつは治療可能であること、そして他の病気でそうするように、助けを得ることが重要であることを説明しよう。

慎重に話す

 批判的になるのはやめよう。彼は既に自分の心をずたずたにしている。そして、あなたが心配したり憂慮したりしていることは口にしないようにしよう。心配するという行為は、彼が自分自身の状況に対応できないだろうとあなたが考えていることを伝えてしまうからだ。

 セラピストたちは、「わたしたち」という言葉が非常にパワフルになり得ると話す。「わたしたちは共にこんな状況にいますね」とか、「わたしたちは効果の出る治療法を見つけますよ」というように話すのがよいという。

「うつ」という言葉を避ける

 研究によると、男性は「うつ」という言葉に対して身構える可能性があり、「男らしい」とされる人ほど、この言葉への抵抗感が強い。2013年に学術誌「Psychology of Men & Masculinity(男性と男らしさの心理学)」に掲載された研究によると、自分がうつでないと主張する男性の中には、不安などいくつかの症状があることを認めていた男性がいたという。

 彼は眠れないとか、気力がないなどと言っていないだろうか。もし言っているのなら、その症状に対して助けを求めるよう促してみよう。まず、かかりつけ医の診察を受けるのも良いだろう。

自殺について尋ねる

 男性が自殺を図って実際に死ぬ確率は、女性の約4倍高い。女性の方が自殺を図る確率が高いにもかかわらずだ。男性はより致死的な手段を使うからだ。

 自傷行為について考えたことがあるかを尋ねるのをためらうべきではない。専門家はまた、男性に銃を持っているかを尋ね、回復するまでそれを預かると提案するよう勧めている。

行動変化に焦点を置く治療法を勧める

 話したがらない男性は多い。男性は自分が既に分かっていること、つまり「あなたは負け犬だ」とセラピストが言ってくると考えている。

 うつの治療に効果を示している心理療法にはいくつかのタイプがあり、それは行動を変えることに焦点を置いたものだ。例えば、思考を変えるのを助ける「認知行動療法」や、日常生活を活性化させるのを助ける「行動活性化療法」などだ。こういった治療法は男性にとって受け入れやすいものかもしれない。

得意なことをやるよう促す

 トロクセル博士によると、自分が得意としている活動は、男性に優越感や満足感をもたらし得る。もしそれが身体活動なら、エンドルフィン(脳内の神経伝達物質の一つ。気分の高揚をもたらすとされている)が生成される。社会活動なら、「幸せホルモン」とも呼ばれるオキシトシン(脳内で分泌されるホルモンの一つ)の量が増える。

 男性はまた、仕事を他科付けることから達成感を得ることが多い。だが、うつだと、シンプルな作業にさえ圧倒される場合がある。このためトロクセル博士は、プロジェクトをいくつかに小さく分けて達成しやすくし、すぐに達成感が得られるようにすることを勧める。

限界があることを告げる

 うつの男性の発する怒りや非難を受け止める側に、あなたが常にいる必要はない。それを認識しておくことは重要だ。また、悩みの相談を受ける人があなただけである必要もない。自分が限界に達したら、「わたしはあなたを気遣っているし、あなたの味方だ。しかし治療を受けて欲しい」とはっきりと言うべきだ。

 夫がうつで、なすすべもないと感じるときは、自分自身がセラピーを受けることも検討しよう。セラピーは、何が起こっているかの理解を助けてくれるほか、どのようにすればより良い支援ができるかの理解にもつながり得る。

あきらめない

 彼があなたを遠ざけようとしていても、あきらめないことだ。ボレンスタイン博士は、「人は治療を通じて確実に良くなっていく」と話している。

By ELIZABETH BERNSTEIN

最終更新:9月20日(火)14時17分

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