ここから本文です

米大統領選の知られざる「異色候補」たち

ウォール・ストリート・ジャーナル 9月20日(火)16時36分配信

【ワシントン】今年3月、ニューヨーク州スタテン島に住んでいるという「ゴッド(神)」を名乗る人物が、米大統領選に出馬するための書類を提出した。

 全候補者を真剣に扱うことが義務付けられている米連邦選挙委員会(FEC)の職員は、この人物に名前のほか、主たる選挙運動委員会と記録管理者の正確な名称を礼儀正しく尋ねる文書を送った。

 テキサス州カレッジステーション在住の「サタン(悪魔)」も同様の文書を受け取った。

「FECは神の存在について一切判断しない。しかし神が大統領に立候補したいのであれば他の人と同じように書類に必要事項を記入しなければならない」。FEC委員のエレン・ワイントローブ氏は今月、ツイッターにこんなコメントを投稿した。

立候補者が大幅増

 FECの職員は今年、大統領選の選挙運動を開始するためにFECに登録した1900人近い候補者の多くに文書を送り続けている。前回選挙の420人から立候補者は大幅に増えた。

 今年の大統領選の候補者には、ミッキー・マウスやダース・ベイダーのほか、キャプテン・クランチ(シリアルのマスコットキャラクター)、ザ・ゴースト・オブ・クリスマス・プレゼント(小説「クリスマス・キャロル」に出てくる幽霊)、フランシス・アンダーウッド(米ドラマ「ハウス・オブ・カーズ」の登場人物)などがいる。

 今回の選挙で立候補者が急増したのは、FECが昨年2月以降にオンラインでも登録ができるようにしたためだ。

 「誰かが登録すると、あらゆる歯車が回り始める」とワイントローブ委員は言う。FECの分析官は全ての書類が正しく記載されているか確認しなければならない。

 ワイントローブ氏は冗談で立候補の書類を提出することについて「世紀の犯罪ではない」としながらも、書類を処理する「政府職員の時間を奪っている」と指摘した。

 FECに与えられた権限は、候補者の名前が明記されていることを確かめ、立候補者が選挙運動中に適切な文書を提出することを確認することだ。登録した人物が法律で定められた立候補の条件を満たしているかを判断するのはFECの仕事ではない。

法的措置を示唆

 候補者がFECの基準を満たしても、共和党候補ドナルド・トランプ氏や民主党候補ヒラリー・クリントン氏と並んで投票用紙に名前が掲載される可能性は低い。投票用紙に名前を掲載するには、候補者は全米50州とコロンビア特別区に請願する必要がある。

 FECは行政として立候補を打ち切ることもできるが、これには通常、年単位の時間がかかる。その代りに法的措置をちらつかせれば、本選が行われる11月までに怪しい立候補者を撤退させることができるのではないかと期待している。

 ロッキー・バルボア(映画「ロッキー」の主人公)の元に先月、FECから文書が届いた。そこには、連邦政府機関に対して故意に虚偽申し立てを行った場合、「合衆国法典第18編第1001条の規定に基づき処罰されることがある」とあった。

 ロッキー・バルボアの名前を使って立候補を登録したミズーリ州グラッドストン在住のJ・パーカプルさんは「困ったことになった」と語った。

 FECのワイントローブ氏は偽の名前での立候補で「刑務所行きになる人はいない」と言う。それでもFECの対応に「コストがかかってないわけではない」と話す。

 怪しい名前での立候補の届け出が始まったのはFEC創設直後に行われた1976年の大統領選以降で、このときは「ジョージ・ワシントン」の名前で立候補の登録があった。2012年の選挙ではサンタクロースやカエサル皇帝大統領の名前もあった。

 選挙資金専門の弁護士ブレット・カッペル氏によると、立候補者が大幅に増えた理由の1つはコメディアンのスティーブン・コルベア氏だという。コルベア氏が2011年に冗談でスーパーPAC(政治行動委員会)を設立すると、600を超えるPACが設立された。

撤退したレーガンの幽霊

 オンラインで大量の書類が提出されたことを受けて、FECは先月、職員に対し「架空のキャラクター、ひわいな言葉、性的な言及、著名人(本人が申請を行った形跡がない場合)、動物など怪しい登録者」が書類に含まれている場合、候補者に連絡を取るよう指示。その結果、ゴッドやサタンなどに文書が送付された。

 文書を受け取って大統領選から撤退した人もいるようだ。FECの記録によると、ミネソタ州ロチェスターのロナルド・レーガンズ・ゴースト(ロナルド・レーガンの幽霊)は先週、登録解除の書類を提出した。

 マサチューセッツ州ノースファルマス在住で大学を卒業したばかりのジェイコブ・シモンズさんは酔っているときに立候補の登録を行った。

 資金調達についての報告書提出を求めるFECの手紙の文言はどんどん厳しくなったそうだ。シモンズさんは登録を取り消したいが、やり方が分からないと話した。FECのウェブサイトには登録の取り消しについての説明はあるが、専用フォームのページへのリンクはすぐに見つからない。一部の候補者からはプロセスが分かりにくいという声が上がっている。

 環境科学を専門とする教授ステンター・ダニエルソンさんは、35歳の誕生日を記念して立候補の書類を提出した。FECから書類の不備を指摘され、訂正したところ、話は済んだ。しかしその後、財務報告に関する通知が次々と届くようになり、今は撤退する方法を調べているという。

By MICHELLE HACKMAN and BRODY MULLINS

最終更新:9月21日(水)9時23分

ウォール・ストリート・ジャーナル

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。