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<福島・二本松>広がる「農家民宿」 年1000人

毎日新聞 9月21日(水)0時15分配信

 ◇食と宿泊、畑仕事、復興支援

 東京電力福島第1原発事故による風評被害を払拭(ふっしょく)しようと、福島県二本松市の東和地区で「農家民宿」が広がっている。事故翌年の2012年に4軒でスタートし、現在は24軒まで拡大。さらに2軒が加わる予定で、宿泊客が畑仕事や地元食材の料理を味わうことで、安全・安心を体感してもらう。食と宿泊、農業体験が楽しめ、被災地の復興支援にもなるとして、年間1000人以上が宿泊する人気ぶりだ。

 東和地区は、第1原発の北西約40キロにある山あいの田園地帯。以前からの過疎化に加え、原発事故で主要産業の農業が打撃を受けて離農に拍車がかかり、この50年で人口が約6500人に半減した。

 そこで住民が注目したのが「農家民宿」。原発周辺の避難指示区域で放射線量の調査などが始まり、避難区域に接する東和地区で宿泊先の需要が高まったのがきっかけだった。地元住民でつくる町おこしNPO「ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会」が調整役となって農家を募集した。民宿利用者は当初、研究者や行政職員が大半だったが、現在は大学生の合宿や企業の社員研修が多くなり、15年は計1106人が宿泊した。

 今月8日の夜。ゼミ合宿で大東文化大(東京都)の学生ら二十数人が民宿6軒に宿泊した。各民宿は自慢の手料理を振る舞い、放射線検査を通過した安全な農産物を出荷していることを伝えた。野菜農家の武藤正敏さん(65)の民宿「田ん坊」では、特産のキュウリやニンジンなどを使った手料理が並び、男子学生は「野菜がシャキシャキしていておいしい」とはしを伸ばした。

 原発事故後、「福島産は食べたくない」と言われ、落ち込むこともあった武藤さんは「民宿に来た人たちが、おいしく食べてくれるのを見ると元気が出る」と語る。宿泊した環境創造学部2年の高橋宏尚さん(19)は「入念に検査し、自信を持って出荷していることが分かった。今後はうわさに流されず、自分の目で見て感じて判断したい」と話した。

 民宿の中心メンバーで、野菜農家の大野達弘さん(62)は「科学的データを示しても、生産現場に来てもらえなければ、なかなか安全性を納得してもらえない」と指摘。地区全体の農産物の出荷額は震災前の8割程度にとどまっているといい、「農家民宿に泊まった人たちが東和の魅力の発信役になってくれれば」と期待している。【杉直樹】

最終更新:9月21日(水)0時26分

毎日新聞

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