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患者申出の第一例、来月に東大病院で開始へ-厚労省の有識者会議が大筋了承

医療介護CBニュース 9月21日(水)20時41分配信

患者申出の第一例、来月に東大病院で開始へ-厚労省の有識者会議が大筋了承

東大病院の計画を大筋了承した有識者会議(21日、厚労省)

 今年4月に始まった患者申出療養制度について、厚生労働省の有識者会議は21日、東大医学部附属病院が申請した抗がん剤の併用療法に関する実施計画を大筋で了承した。胃がんが腹膜に転移した患者に対して、腹腔と静脈への投与と内服を組み合わせる治療で、同病院では1年の期間中に100人の症例数を予定している。今後、官報告示を経て、来月中旬までにスタートする見通しで、同制度を利用した治療の第一例となる。【敦賀陽平】

 患者申出療養制度は、国内で未承認の薬などを使う保険外診療と保険診療との併用を認める仕組み。従来の先進医療などと比べ、審査期間が短く、対象となる患者の幅が広いといった特長がある。東大医学部附属病院など、全国に8施設ある「臨床研究中核病院」が、患者からの相談を受けて実施計画を作成し、国に提出する流れになっている。

 今回の併用療法では、腹腔に薬剤の注入器(ポート)を埋め込み、そこから抗がん剤「パクリタキセル」を直接投与するとともに、静脈からもパクリタキセルを投与し、「S-1」と呼ばれる抗がん剤も併せて服用することで、がん細胞の増殖を抑える。腹腔鏡で腹膜への転移の確認(P1)と細胞検査を行い、いずれかで「陽性」と認められた場合、患者申出療養として治療を受けることできる。

 治療は3週間を「1コース」とし、パクリタキセルは1日目と8日目に静脈と腹腔にそれぞれ投与する。S-1は14日間服用した後、7日間服用を止める治療を繰り返す。治療費は、平均的な投与回数(24回)で44万6000円。これに、保険適用分の「窓口負担」として44万4000円がかかるが、こちらは高額療養費制度の対象となる。

■約30人は先進医療から継続の見通し
 P1の症例に対する併用療法については、11月まで「先進医療」として実施され、多数の患者に治療の安全性を確認する「第III相臨床試験」が行われている。

 先進医療では、対象患者を選ぶ基準(適格基準)が定められており、厚労省によると、今回、東大医学部附属病院に相談を寄せた患者はこれに該当せず、先進医療として治療を受けることができなかったため、患者申出療養を利用したという。P1の先進医療の終了に伴い、現在治療を受けている約30人の患者は、患者申出療養で治療を継続する見通しだ。

 同病院は一定の基準をクリアした病院を、「協力医療機関」として追加することも可能で、そうした病院でも、患者は患者申出療養で治療を受けることができる。

 同病院は協力医療機関の要件として、10年以上の経験を持つ外科専門医、内科認定医、がん薬物療法専門医のいずれかが配置されていることや、病床数が100床以上で10対1以上の看護配置を持つことなどを挙げている。

■先進医療との基準の違いで問題提起も
 この日の会合では、現行の先進医療と患者申出療養との間の適格基準の違いについて、委員から問題提起があった。このため、厚労省と東大医学部附属病院が対応を協議することを前提とした「条件付き」での了承となった。

 患者の日常生活の制限の指標となる「パフォーマンスステータス」(0-4の4段階)について、先進医療では「0-1の症例」となっているのに対し、患者申出療養では「0-3の症例」となっているほか、対象年齢は先進医療が「20歳以上75歳未満」、患者申出療養が「85歳未満」となっている。また、卵巣以外の遠隔(領域リンパ節以外のリンパ節、肺、胸膜など)への転移を除外する基準は、患者申出療養では削除されている。

 患者申出療養も先進医療と同様、「臨床研究」として行われるため、最終的には保険適用につながるが、治療が困難な病気と闘う患者を救うことが目的の患者申出療養では、先進医療に比べて対象となる患者の基準が広くなる。一方、他の薬剤との比較を行わないなど、データの質は先進医療よりも低くなりがちだ。

 委員からは、データの精度との関係を懸念する意見も出る一方、「『困難な病気と闘う患者の思いに応える』という精神に立ち返って考えるべきではないか」といった声も上がった。

最終更新:9月21日(水)20時41分

医療介護CBニュース