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「VRはゲーム業界“だけ”のものではない」開発者が語る課題と未来

ITmedia ビジネスオンライン 9月21日(水)7時8分配信

 9月15日から18日にかけて千葉・幕張メッセで開催された東京ゲームショウ2016。4日間で歴代最多となる27万1000人が訪れ、また、ビジネスマッチングシステムの登録社数は15年の1011社を上回る1149社で、国際的なB2B展示会としての影響力も高まった結果となった。

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 今年の東京ゲームショウで最も注目を集めたのはなんといっても「VR(仮想現実)」。VR関連は110タイトルにのぼり、初めて設置したVRコーナーには6つの国・地域から35社が出展し、“VR元年”と称された。

 15日の朝一番に行われた基調講演のテーマは「VRマーケットの展望」。第1部はコンテンツメーカー、第2部はVRプラットフォーマーが登壇した、ソフトウェアとハードウェアの両側から見た講演だ。これからも成長していくVR市場の“イマ”を語ったトークのレポートをお届けしよう。

●三者三様の“VRのイマ”

 日本のゲームメーカーは、競うように各社VRコンテンツの制作を行っている。第1部に登壇したのは、カプコン伊集院勝さん、セガゲームス林誠司さん、バンダイナムコエンターテイメント玉置絢さん。VRコンテンツ制作に携わる面々が、三者三様のこだわりや苦労を語った。

 カプコンは、“3分間のお化け屋敷”体験をうたった『KITCHEN』や、ゲームセンターで遊べる“怪獣体験”の『特撮体験VR 大怪獣カプドン』を開発中。そして、人気シリーズ『バイオハザード7 レジデント イービル』を全編VR対応することが話題になっている。

 「『バイオハザード7』は、ある日『全編VR対応に』といわれて、そこからが苦難の日々。非VRのゲームをそのままVRにしただけでは全くゲームにならない。ありとあらゆる部分を再調整し、同じ素材を使って“作り直している”印象」(伊集院さん)

 セガゲームスが注力するタイトルは『初音ミク VRフューチャーライブ』。PlayStation VRと同時の10月13日に発売が決定している。人気キャラクター「初音ミク」をはじめとするボーカロイドのライブを臨場感たっぷりに楽しめるコンテンツで、VRならではの演出を売りにしている。

 「ミクさん(初音ミクの愛称)は、実際にコンサート会場でライブをしている。現実のライブに近づけるために、ざわざわ感や期待感を表現した。VRはいろんな角度からキャラクターを見られるので、ダンスモーションで“ウソ”をつけない。調整は非常に苦労した」(林さん)

 そしてバンダイナムコのイチオシコンテンツは『サマーレッスン』。こちらも10月13日に配信する。本作は「宮本ひかり」という女子高生と夏休みの1週間を過ごす――というゲーム。キャラクターの魅力にこだわった作品で、まるで目の前に本当に立っているかのような“接近体験”をプレイヤーに提供する。

 「最初から『とにかくかわいいキャラを作ろう!』と作っていった。これまでのノウハウでは決めせりふや決めポーズでキャラの個性の表現をすることが一般的だったが、VRコンテンツでそれをやると人間らしく見えない。なにげないくせや動き、そして目の作り込みでキャラクター性を宿していった」(玉置)

●開発していく上で見えてきた課題と可能性は?

 ジャンルは“VR”とまとめられてはいるものの、どの会社も違った方面からVRゲームにチャレンジしている。開発していくうえで見えてきた課題点や、今後の可能性はどんなものだろうか。

 「VRでさまざまなタイトルを制作していきたいが、まだ技術やノウハウが足りない。例えば“VR酔い(VRのプレイ中に酔ってしまい、体調不良になる)”の対策はなかなか難しい。ノウハウを積み上げて、最終的に開発しているタイトル全体に生かしたい」(伊集院さん)

 「VR酔いについてはセガゲームスもいろいろと試行中。プレイヤーに能動的に行動させることが、VR酔いを軽減させるのでは……と考えている。臨場感は高めても、空気感を表現できるかのノウハウは途上。VR空間でしかできないようなことをもっと盛り込みたい」(林さん)

 「ゲーム制作のノウハウはあるけれど、VR制作のノウハウは完成していない。一般のゲーム用に作られた描画や演算の仕組みを、VRのためにどうカスタマイズしていくか。どうチームづくりをしていくか。そして、完成したコンテンツを、どういう言葉や映像で伝えるのが一番届くのか――。2年間やってきて、だんだんノウハウがたまってきているところ」(玉置さん)

 現在展開しているVRは、“1人で完成したコンテンツを楽しむ”というものが多い。しかし各開発者は、「体験共有」「VRゲーム内でのコミュニケーション」「プレイヤーの無意識化の行動にすら反応できるようになる」などのさらなる可能性を見いだしているようだ。

●VRはゲーム業界だけのものではない

 VRのソフトが急増したように、再生機にあたるヘッドマウントディスプレイも生まれている。そのうち多くのユーザーを獲得するとみられているのは、HTC Vive Pre、Oculus Rift VR 、PlayStation VRなど。また、FOVEの“視線追跡”など、独自の機能を売りにするディスプレイもある。

 トークセッション第2部では、HTCバイスプレジデントのレイモンド・パオさん、FOVE最高技術責任者(CTO)ロクラン・ウィルソンさんが登壇。VRの発展可能性について語った。

 「(イメージとしては)『マトリックス』の映画のようなものが必要。ハードウェアでもソフトウェアでも同じことだが、VRは複雑なシステムで、数多くのコンポーネントで作られている。CPUやディスプレイなどが分かりやすい例」(パオさん)

 VRと聞くと、ゲーム業界だけの盛り上がりと考えてしまいがちだが、実は他分野に波及していく可能性がある。例えばかつてiPhoneの登場で日本製の部品工場が盛り上がったように、製造業にも大きな影響を与えるかもしれないのだ。そして、VRが活躍する舞台自体もゲームだけに限らない。

 「ゲーム、教育、リハビリなど、VRはどこにでも使える。実用化され、みんなの生活の一部になる――そうした未来の実現には時間がかかるが、可能性の広がりは“私たちの意思次第”。イマジネーションがあれば現実化する」(ウィルソンさん)

 「VRに制約があるとしたら、人々のイマジネーションによる。東京ゲームショウのような場で見られるので『VRといえばゲームなんでしょ』と思われるけれど、さまざまな使い方が考えられているし、用意されていて、だんだんと知られるようになっている」(パオさん)

 海外VR企業の資金総額は、13年から15年の3年間に年平均約65%の成長を遂げているといわれている。日本はやや遅れをとっているが、PlayStation VRの登場で大きな変化が生まれた。今後の展開に注目だ。

最終更新:9月21日(水)7時8分

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