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電気料金に影響する託送料金の見直し、電力の地産地消を促す体系に

スマートジャパン 9/21(水) 10:33配信

 電力・ガス取引監視等委員会が「送配電網の維持・運用費用の負担の在り方検討ワーキンググループ」を9月16日に新設して、具体的な検討作業に着手した。送配電ネットワークの費用は2020年度に実施する発送電分離の後も、国の規制対象になる「託送料金」で回収する必要がある。託送料金は電気料金のベースになるため、適正な回収方法が市場競争の健全化に欠かせない。

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 現在は小売電気事業者が送配電事業者(電力会社の送配電部門)に託送料金を支払う方法で、送配電ネットワークの費用を回収している。電力を送り出す側の発電事業者は費用を負担する必要がない。しかし自由化を機に、電力の供給を受ける側が一方的に費用を負担する現行の制度に問題が生じ始めている。

 最大の問題点は全国各地で発電所の建設計画が増えて、地域によっては送配電ネットワークの増強が必要になっていることだ。ネットワークの整備にかかるコストは原則として送配電事業者が負担するため、発電所の新設に伴って託送料金の原価が増えていく。

 ただし発電所の立地が大都市などの需要地に近い場合には送配電ネットワークの整備コストは小さくて済む一方、遠い場合にはコストが大きくなる。発電所の立地が送配電ネットワークのコストに影響を与えるにもかかわらず、発電事業者はコストを気にしないで建設を進めることが可能な仕組みになっている。

 この問題による託送料金の上昇を抑えるために、2020年度から発電事業者も送配電ネットワークの費用を負担する制度に変更する方針だ。制度の変更にあたって最も重要な検討項目は、発電事業者が負担する送配電ネットワークの費用の範囲を決めることにある。送配電ネットワークの費用は発電所から需要家までをつなぐ5種類の設備に分けて算出している。全体の約半分が送電、残り半分が配電にかかるコストである。

 配電のコストは引き続き小売電気事業者が負担するのが妥当なため、送電のコストをどのように配分するかを決める必要がある。現時点で委員会のワーキンググループが想定している案は3通りあって、どの方法を選ぶかによって発電事業者の負担率が大きく変わってくる(図4)。

 第1の案は送電コストのうち、ネットワークを流れる電力の周波数を調整するための「アンシラリーサービス」に関連する費用だけを負担するケースだ。東京電力の場合を例にとると、送配電ネットワーク全体のコストの10%程度にあたる。発電事業者と小売電気事業者の双方で負担すれば5%ずつになる。これでは発電事業者の負担率が低く、制度を変更する意味が薄れる。

 第2と第3の案は基幹の変電所や送電線の建設・維持・運営に必要なコストまでを発電事業者が負担する方法だ。第3の案では送電コストの半分を発電事業者が負担することになり、負担率は送配電ネットワークのコスト全体の2割強になる。制度を変更する効果を十分に発揮するためには第2案か第3案が望ましい。

発電所の立地で託送料金も変わる

 発電事業者から送配電ネットワークの費用を回収するために、託送料金の体系をどう設計するかも重要な課題になる。1つには発電所の立地を考慮すべきかどうか、もう1つは課金の単位を設備容量だけで決めるのか利用量も考慮するのか、といった点がある。

 最も簡単なのは立地を考慮しないで、設備容量の大きさ(キロワット=kW単位)で決める方法だが、実態を反映しない料金体系になってしまう懸念がある。コストを適正に分担する託送料金の決め方は、発電所の立地を考慮したうえで、設備容量と利用量(キロワット時=kWh単位)の両方をもとに単価を設定する方法である。

 特に今後は再生可能エネルギーによる分散型の発電設備が増えて、電力を地産地消する取り組みが全国各地に広がっていく。そうすると送配電ネットワークに大きな負担をかけずに、発電所から需要家まで電力を供給することが可能になる。さらに蓄電池を使って需要と供給のバランスを調整しながら、送配電ネットワークの負荷を軽減する取り組みも広がっていく。

 こうした分散型による地産地消のシステムを普及させるためにも、発電所の立地を考慮した費用負担の仕組みが求められる。立地を考慮した託送料金の新制度を導入するにあたって、対象になる地理的な範囲も決める必要がある。地産地消を推進するためには、配電用の変電所と混雑エリアを組み合わせる方法が最適だろう。需要の大きいエリアで分散型の発電設備を増やす効果が期待できる。

 今後の託送料金の見直しの中で、原子力発電の扱いも議論を呼びそうだ。託送料金を課す対象に原子力発電所を含めるかどうかとは別に、政府内では原子力発電所の廃炉の費用を託送料金で回収する検討が以前から進められている。

 現在の送配電ネットワークの原価には、原子力発電に関連するコストは一切含まれていない。もし廃炉の費用を原価に加えた場合には、託送料金の水準が大幅に上がって、電気料金を上昇させる結果になる。廃炉の費用は送配電ネットワークのコストと直接関係がないものの、長期間にわたって幅広く徴収する手段として託送料金に含める方法を想定している。

 当然ながら国民の理解を得るのはむずかしい話だ。とはいえ発送電分離後の原子力発電のコストは電力会社の競争力を大きく左右するだけに、再稼働と合わせて政府と電力会社が強引に推し進める可能性は十分にある。この点でも市場の健全な競争を促進する立場の電力・ガス取引監視等委員会の真価が問われる。

最終更新:9/21(水) 10:33

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