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遂に登場“4Kが撮れる5D”キヤノン「EOS 5D Mark IV」。AF性能大幅強化

Impress Watch 9月21日(水)10時0分配信

■4年越しの新モデル

 2008年に登場した「EOS 5D Mark II」によって、プロフェッショナルから業務ユーザーにかけての動画撮影のセオリーが一変した。いわゆる「ビデオ」の世界に「シネマライク」な手法が入り込んだのだ。本物のシネマ業界ではなく、ビデオ文脈の現場、例えばテレビドキュメンタリーやブライダルといったところにシネマ的な文法が導入されていったわけである。従来フィルム撮りだったテレビコマーシャル業界にも、「低予算なら5D」という流れは当時あったと思う。

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 2011年にキヤノンは「CINEMA EOS SYSTEM」を立ち上げており、プロユーザーはそちらへ流れていった。これにより5Dシリーズは、動画に関しての肩の荷を降ろしたことになる。2012年発売のMark IIIは、動画性能を強化して登場したが、動画業界で買い換えブームが起こるような、大きなインパクトをもたらさなかったように思う。

 そして2016年、およそ4年ぶりとなる5Dのリニューアルモデル「EOS 5D Mark IV」が登場した。5Dとしては初の4K撮影対応モデルである。直販参考価格はボディ単体で43万2,500円、低価格な通販サイトなどでも40万円を切るかどうかという、高級機である。手が届く高級機と言われた5Dシリーズだが、個人ユーザーにとってはだんだん手が届かなくなってきているようだ。

 業界に長く名を残すこととなった5Dの最新モデルは、どんな絵を見せてくれるだろうか。さっそく試してみよう。

■若干軽量化したボディ

 ではまずボディから見ていこう。Mark IIからMark IIIはペンタプリズム部が丸っこくなった印象を受けたが、Mark IVではさらに丸っこくなった印象だ。あまり丸すぎるとだんだんロシアの「ZENIT-km」みたいなルックスに近づいていくのでいかがなものかと思うのだが、丸くなるのが最近のトレンドなのだろうか。

 フルサイズらしい大型ボディではあるのだが、実は外寸と重量はMark IIIより若干小さくなっている。150.7×75.9×116.4mm(幅×奥行き×高さ)で、ボディのみの重量は800g。

 センサーは今回の目玉でもある「デュアルピクセル CMOS」を搭載。1つの画素に2つのフォトダイオードがあり、それぞれが独立して光を取り込めるのだが、この2つのピクセルによりライブビュー面積の80%の範囲において、位相差AFが使える。コントラストAFと違い、合焦点に向かって行ったり来たりしないので、高速かつ滑らかなAFが可能だ。

 有効画素数は約3,040万画素で、アスペクト比は3:2。静止画記録画素数は最大で6,720×4,480の約3,010万画素となる。動画記録サイズは、4K(4,096×2,160)、Full HD(1,920×1,080)となっている。またハイフレームレート撮影時のみ、1,280×720となる。4KはDCIと言われるシネマ4Kサイズで、テレビ4Kと言われるUHDの3,840×2,160サイズではない。また解像度によって記録フォーマットが異なる点も、珍しいカメラである。

 表組みがややこしいので解説しよう。4K撮影時の記録フォーマットはMotionJPEGで、これは初めての4K EOS、「EOS 1D C」から続いている。HD解像度では、コーデックはH.264でファイルフォーマットはMOVとMP4が選択できるようになった。ただしALL-Intra Frameによる撮影はMOVのみとなっている。

 操作系はMark IIIとほぼ一緒だ。録画スタート・ストップボタンの周囲に静止画と動画の切り換えスイッチがあり、動画モードに切り換えると常にライブビューで動画撮影専用機となる。ボタンとしては新たに小さな測距エリア選択ボタンが増えているが、動画撮影時には機能しないようだ。

 液晶モニタは3.2型/162万ドットのTFTカラー液晶で、明るさ調整は7段階。静電容量方式のタッチパネルだ。右手側にはメモリーカードスロットがあり、UDMAモード7対応のCFカードスロット、SDXC/UHS-Iカードスロットがある。反対側にはUSB、miniHDMI端子のほか、外部マイク、イヤフォン端子もある。

■なかなかハードルが高い4K撮影

 では早速撮影である。あいにく今回は台風接近による不安定な天気で、十分に光量のある撮影ができなかったのが残念だ。急な雨を避けながらの撮影であったが、本機は防塵・防滴性能が向上しており、外装の隙間やフタ部分にシーリング部材が組み込まれている。その点では多少雨に濡れても、ボディ側は問題ない。

 目玉となる4K撮影だが、メモリーカード的には色々条件がある。4K動画記録には、CFカードはUDMA7の100MB/s以上、SDカードはSDXC UHS-I Class3の90MB/s以上の書き込み速度を持つカードが必要だ。価格がこなれているSDカードが使いたいところだが、高速転送規格のUHS-IIには対応していないため、UHS-Iの中で高速なカードを探す必要がある。

 今回はUHS-I Class3に対応したソニー製のSDXCカード(UHS-I SF-64UX2)を用意したが、このカードは最大読み出し速度94MB/s、最大書き込み速度60MB/sだった。4K動画撮影前に本機を使ってメモリーカードを物理フォーマットする必要があるのだが、フォーマットしても、撮影の途中で頻繁に止まる事があった。カメラ内部にはバッファもあるのだが、それも使い切って停止してしまうようだ。4K撮影を中心に考えるのなら、より書き込み速度が高速なSDカードや、高速なCFカードのUDMA 7を使った方がいいかもしれない。

 また4K撮影時には、センサーのフルサイズ領域が使えない。中央部分の全画素読み出しで4,096×2,160となる範囲でしか記録できないため、かなり画角は狭くなる。今回のレンズは「EF 24-70mm/F2.8L II USM」と、「EF 85mm F1.2L II USM」をお借りしているが、ワイド端24mmでも4Kモードでは40mm程度になってしまう。引き絵が撮りづらいというのは、4K動画カメラとしては小さくないハンデになるだろう。

 今回の目玉は、静止画、動画ともにAF性能だろう。設定にはAFだけで5ページにもわたるメニューがあり、AFの挙動を細かく決められる。AF方式については、動画の場合はクイックメニューから「顔+追尾優先AF」、「ライブ多点AF」、「ライブ1点AF」の3種類が選択できる。

 人物撮影には「顔+追尾優先AF」が便利だ。向かってくる被写体には一瞬顔を見失う瞬間があるものの、接近時の認識と追従性はかなり高いのが分かる。

 「デュアルピクセル CMOS」では、広い範囲で多点AFポイントが作れるのがメリットだが、動画でチルトアップした場合、ライブ多点AFでは必ず途中でAFを見失うポイントがある。ワイド端の撮影にはメリットがあるだろうが、4Kでテレ側で撮影した場合は、追尾優先かライブ1点のほうが有利だ。

 なおライブ1点AFでは、「動画サーボAF時のAF速度」と「動画サーボAFの被写体追従特性」を調整することができる。動画サーボAF時のAF速度は、AFによる合焦速度を調整できる。ゆっくりAFを合わせる方向には7段階、早い方には2段階となっており、急激なAF動作を抑制できる。

 動画サーボAFの被写体追従特性は、被写体の前を頻繁に何かが横切るようなショットの場合、いちいちそれに反応しないという設定が可能だ。例えば通りの向こうの被写体を狙い、通行人や車が横切るようなシーンで便利だろう。

 音声は本体内にもマイクはあるが、あくまでもガイド用と考えるべきだ。マイク端子もあり、イヤフォン端子からリアルタイムでモニターもできるので、別途カメラマイクを付けてもいいだろう。

 なお、ムービーキットとしてシューに取り付けられるキヤノン製のマイク「DM-E1」、動画編集ソフトの「EDIUS Pro 8」をセットにした製品も、直販478,000円で用意されている(今回の撮影ではRODEのマイクを使用)。

 画質に関しては、光量が十分ではなかったが、そのぶん絞りを開けて撮影することができた。4KでもHDでも画質的には十分で、特にHDのALL-IではIBPの3倍となる180Mbpsで撮影できるのもポイントである。

■シンプルながら特殊撮影機能も

 絵づくりに関しては、8種類のピクチャースタイルが使える。それぞれについて、シャープネス、コントラスト、色の濃さ、色合いが設定できる。それほど極端な絵づくりがされているわけではないが、シーンに応じて使い分けるだけでひと味違った表現が楽しめそうだ。

 ただし本機はCINEMA EOS機ではないので、Canon LOGでの収録に対応しない。4KがRec. ITU-R BT.601、HDがRec. ITU-R BT.709で記録されるだけなので、シネマカメラのサブ機としては物足りないだろう。

 またHDMI出力も4Kには対応せず、HD解像度で8bit 4:2:2に留まる。外部レコーダでの4Kレコーディングもできない。このあたりのスペックは、ソニー、パナソニックなど4Kテレビを自社で用意するメーカーに一歩譲る事となった。

 ハイスピード撮影は120pで撮影し、30p再生することで4倍速スローを実現する。解像度が720pになってしまうほか、動画サーボAFが効かなくなるという制限があるが、S/Nは悪くない。

 特殊な撮影方法としては、HDR撮影モードもある。これはHD/60fpsで撮影中に、標準露出とアンダー露出を交互に撮影し、最終的に30fpsへマージする際にコントラストを合成する機能だ。似たような方法論としてはすでにパナソニックのビデオカメラ「HC-WX970M」で実装されたことがあるが、デジタルカメラの動画機能に実装されたのは珍しい。

 今回は天候の関係でそれほど高コントラストな状況が作れなかったため、それほど劇的な効果は確認できなかったが、外光が入ってくる室内撮影では効果があるかもしれない。

 また撮影した4K動画からの静止画切り出し機能も搭載している。ライブビューでも連写は秒間7コマなので、連写では撮りきれない被写体もあるだろう。こういうときに4K動画で撮っておけば、秒間30コマから静止画を切り出すことができる。

 ただし4K撮影では4,096×2,160になってしまうので、3:2や4:3にトリミングするのであれば、それを見越した画角で撮影する必要がある。この点パナソニックの4K対応カメラでは、切り出し前提の3:2で4K動画を撮影する機能がある。その作りからすれば、若干後付け感のある機能だ。

■総論

 4K撮影可能な5Dということで注目が集まるところだが、動画撮影機能については今年4月に発売された上位モデル「EOS-1D X Mark II」(直販678,000円)とかなり近い。向こうは4K/60pを撮るためにCFastカード対応だったりとハイスペックだが、5D Mark IVは価格のこなれたカードをギリギリ使って4Kを撮る方向にチューニングしたと言える。

 値段が1.5倍も違うのに5D Mark IVのほうが機能が高かったら色々問題になるわけだが、逆にこの価格で1D X Mark IIに近い動画機能が手に入るのであれば、安いと言えるかもしれない。

 ただ5Dシリーズのユーザー層からすれば、4K撮影はUHDの3,840×2,160でも良かったのではないかという気がする。またプロユース云々ではなく、コンシューマユーザーが気軽にテレビに繋いで鑑賞できるよう、HDMIは4K出力に対応して欲しかったところだ。動画記録に関してはコンシューマハイエンドなのか、低価格プロ機なのか、ちょっと中途半端になっている印象がある。

 なお9月15日には、同じくデュアルピクセル CMOSを搭載したミラーレス機「EOS M5」も発表された。こちらは4Kは撮れないが、やはり動画サーボAFを備え、動画撮影でレンズとボディ内手ぶれ補正の両方が使えるなど、動画カメラとしても面白いものに仕上がっている。

 キヤノンもビデオカメラのほうはさっぱり新製品の話を聞かなくなったが、デジタルカメラでここまで撮れればユーザー的には不満はないだろう。ただ画質は格段に上がったが、単価もビデオカメラ時代からすれば格段に上がった。これはもう、いざという時の勝負カメラを持つ時代になった、ということなのだろうか。

AV Watch,小寺 信良

最終更新:9月21日(水)10時0分

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