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比、原発建設計画の再開検討 エネ相「長期的な電力政策に貢献」

SankeiBiz 9月22日(木)8時15分配信

 フィリピンは、原子力発電所建設計画の再開を検討する。同国のクシ・エネルギー相が首都マニラで8月30日から9月1日まで開かれた国際原子力機関(IAEA)の会議で、原発導入に向けた意欲を示した。商業稼働にかかる費用は、10億ドル(約1017億円)を見込んでいるという。現地紙マニラ・タイムズなどが報じた。

 同相によると、政府はエネルギー省やフィリピン電力公社、政府系の原子力研究機関などの代表者からなるチームを立ち上げ、ルソン島南部にあるバターン原発の稼働に向けた実現可能性を検討する。

 バターン原発は発電容量62万キロワットで、1976年にマルコス政権下で建設が始まったものの、79年の米スリーマイル島での原発事故を受けて作業が中断。86年にはマルコス政権の崩壊やソ連のチェルノブイリ原発事故もあり、当時のコラソン・アキノ大統領が正式に計画の中止を発表した。中止までにかかった費用の総額は20億ドルともされる。

 クシ・エネルギー相は原発について「個人的に反対ではない。全ての可能性を探ることこそ私の仕事」と述べ、発電効率や信頼性、コストを考えれば有力な選択肢になり得るとの考えを示した。

 フィリピン国内ではこれまでもたびたび原発計画の再開が検討されてきたものの、実現にはいたっていない。安全性への懸念などから反対の声も根強いが、同相は「新たな研究成果や技術の進歩、外国での実績を考慮すれば、原子力発電はフィリピンの国益、特に長期的な電力政策に貢献する可能性が高い」と指摘した。

 エネルギー省によると、今年6月末のフィリピンの発電容量は約2000万キロワット。政府は2030年までに電力需要が1020万キロワット増加するとみて発電容量の増強を図っているほか、現在は電源構成比の45%を占める石炭火力発電の割合の縮小を目指すとしている。原発はこの政府方針にかなうというのが同相の考えだ。

 IAEA幹部は「IAEAは原発を推進する立場にない」と前置きしたうえで「1キロのウランの発電量は5万キロワット時なのに対し、同じ量の石炭は3キロワット時だ。さらに、フィリピンには約7000の島があるのを踏まえれば、小規模の原子炉は国情に合っていると思う」と述べた。

 東南アジア諸国では、ベトナムがロシアと協力しての原発建設に着手しているほか、インドネシアやミャンマーなども導入を検討するなど、電力需要拡大を背景に原子力発電に前向きな動きもみられる。

 今後、フィリピン国内の議論の行方にも注目が集まっていきそうだ。(シンガポール支局)

最終更新:9月22日(木)8時15分

SankeiBiz