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職人はコミュニケーションをとるのが上手?――大工さんや料理人に学ぶ、生涯「職人」として働く4つのポイント

@IT 9/21(水) 11:45配信

 先日、「職人」に会いました。70代になる庭師さんで海外でも活躍されている方です。もちろん現役で、技術の向上に余念がない。「日本文化を海外に」というやる気に満ちていました。いやぁ、プロでした。

【「職人って格好いいなあ。」~しごつまクン寿司職人になる、などその他の画像】

 話をしながらふと、「そういえば、エンジニアの中にも『職人のようになりたい』って人、多いよな」という考えがよぎりました。筆者自身、「職人のようなエンジニア」と表現することがありました。

 職人とは、「身に付けた技術で物を作る職業の人」のことです。具体的な職業を挙げれば、包丁1本でおいしい料理を作る「料理人」や、カンナを持たせたら天下一品の「大工さん」。冒頭の「庭師さん」や「美容師さん」もそうですね。私の父親は70代で現役で機械の整備をしています。整備士も職人の1人かもしれません。

 エンジニアも「技術で物を作る職業」には変わりありません。そう、エンジニアだって職人です。けれども、エンジニアは「職人“のような”」と形容する人が多いです。なぜなのでしょう。仕事に自信があるなら、自身のことを「職人」と表現……するのは恥ずかしいかもしれませんが、「職人」と認識していてもいいはずです。

 ひょっとしたら、「職人にはあって、自分にはないもの」を無意識に感じ取っているのかもしれません。

 もし、「職人との違い」が分かり、生かすことができれば、自信を持って「職人」といえるエンジニアになれるのではないでしょうか。そして、多くの職人がそうであるように、生涯「職人エンジニア」として働けるのではないでしょうか。

 職人とエンジニアの違いについて見ていきましょう。

●「職人」に共通する4つの特徴

 では「職人」の特徴を見てみましょう。

 ちなみに、辞書で「職人気質」を調べたら、「職人に特有の気質。自分の技能を信じて誇りとし、納得できるまで念入りに仕事をする実直な性質」とありました。こういうイメージですよね、職人って。

1 確かな技術や強い探求心がある

 職人は、確かな技術を持っています。また、強い探求心があるのも特徴です。技術の向上に余念がありません。

 「料理が下手で、探求心がない料理人」のお店には、行きたくありませんもんね。

 技術力や探求心については、エンジニアの十八番でしょう。

2 強いメンタリティがある

 職人には、強いメンタリティがあります。ここで言う強いメンタリティとは、「何事も諦めない、へこたれない心」です。

 なぜ、職人は強いメンタリティがあるのでしょうか。

 理由の1つとして「厳しい修行」が挙げられます。料理人や大工さんのような職人は、最初は下働きで、時には先輩の理不尽な要求にも耐え抜き、何年も修行を積んでやっと仕事を任されるのが特徴です。先日会った40代の美容師さんによれば、「私たちの時代に比べれば、今の美容師業界は以前ほど厳しくない」とのことですが、それでも職人の入り口は「修行」と言って間違いないでしょう。

 エンジニアには、「修行」というイメージはあまりないですね。もっとも、「毎日の残業は十分修行だ」という人はいるかもしれませんが(笑)。

 何事にもへこたれない強いメンタリティ、ありますか?

3 独立心がある

 職人には、若いときから「自分の店を持ちたい」「独立したい」といった独立心があります。

 もちろん、会社に属して働く職人もいますが、かなうことなら独立したいと思っている職人が多いのではないでしょうか。

 一方、エンジニアで独立心がある人は、あまり多くないように感じます。近年はフリーランスで働く人も増えてきましたが、独立行政法人 情報処理推進機構のIT人材白書にフリーランスの意識調査が始まったのは、2016年4月に刊行されたものからです。それまでは調査自体行われていませんでした。

 ちなみに、筆者は現在の仕事に就く前、2004年にプログラマーとして独立しました。独立した理由は、独立前に働いていた職場環境が「我慢できなかったから」です。職人が若いときから抱いているような、前向きな動機ではありませんでした。勢いで辞めたので、その後が大変でした。

 独立してしみじみ感じました。「独立心があるかないかは、仕事に対する意識に与える影響が大きい」と。もし、「職人エンジニアになりたい」「生涯にわたってエンジニアとして働きたい」と思っているなら、実際に独立するか、しないかはさておき、できるだけ若い時期から、独立心を持っていた方が良いでしょう。「持とう」として持つものではないかもしれませんが、意識はできます。

4 コミュニケーションがうまい

 職人はコミュニケーションをとるのがうまいです。

 一般的な職人のイメージは、「どちらかというと堅物で、コミュニケーションが苦手な人」ではないでしょうか。「自分、不器用ですから」と言った故高倉健さんのような印象かもしれません。

 実は職人は、言葉によるコミュニケーションは苦手でも、「五感」を使ったコミュニケーションがうまいのです。

 例えば、料理人や大工さんの仕事のすばらしさは、目で、耳で、舌で、鼻で、手で知らせることができます。口下手でも、料理がうまければそれでOK。それだけで、すばらしいコミュニケーションだと思いませんか。

 また、職人は、顧客に最高のサービスを提供するために、相手の表情や声の調子から様子を読み取って行動を変えたり、最も良い状態で商品を提供するために、天候や状況に合わせて商品に加える手を微妙に変えたりもします。料理人や美容師さんがまさにそうです。凍えるような寒い夜、震えながら店に入ったら「暖かいスープをご用意しましょうか」とさりげなく言われたら、うれしいじゃないですか。

 一方、エンジニアはどうでしょうか。特にシステム開発は、要件定義では言語化されていない顧客の要望をくみ取ったり、設計・開発では難しいロジックの実装方法を考えたり、トラブルが起こったときには、機器の音や熱、状況から原因を突き止めたりと、感性が求められる仕事です。

 それだけに、職人になるためには、「見えないものを、見えるようにする」「伝わらないものを、伝わるようにする」努力が必要なのでしょうね。

●生涯現役として「飯を食う」ために

 職人とエンジニアの違いについて見てきました。

 人は、今の仕事の延長で将来のキャリアを考えます。しかし、IT業界の流れは早いので、5年後すらもイメージしにくく、「将来、エンジニアとして働くことができるのだろうか?」と、不安になることが多いでしょう。

 筆者もエンジニア時代は、5年後をイメージできず、「できれば、ずっと開発現場で働きたい」というイメージぐらいしか、持つことができませんでした。

 今回、他の職人の特徴を見ることで、職人として生涯働くために必要なメンタリティや意識など、必要なことの一部が見えてきました。実際、ここに挙げたことは、私が生涯現役として働く上で、大切にしていることだと気が付きました。

 今回挙げた職人の特徴はほんの一例です。きっと他にもあるでしょう。もし、あなたが、生涯「職人エンジニア」として働きたいのならば、他の職業の職人の特徴を見つけてみましょう。そして、その特徴を生かしてみてください。

 そうすれば、これからも職人エンジニアとして働くことができるでしょう。

●今回のワーク

 大切なのは、「なるほどね」で終わらせないことです。静かな場所に行って、コーヒーでも飲みながら、紙とペンを取り出して考えてみてください。

・あなたの周りにいる、尊敬する「職人」を1人挙げましょう
・その人の特徴や生き方を洗い出しましょう
・エンジニアと比較し、生かせることがあれば取り入れましょう

最終更新:9/21(水) 11:45

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