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Oracleの次の競合相手はAWS? ラリー・エリソン会長がIaaSへの本格参入をアピール

Impress Watch 9月21日(水)12時10分配信

 米国サンフランシスコで開催されているOracle OpenWorld 2016の会期3日目。基調講演では、米Oracle 製品開発担当プレジデントのトーマス・クリアン(Thomas KURIAN)氏が登壇し、同社のクラウド戦略について説明した。また、米Oracleのラリー・エリソン(Larry Ellison)経営執行役会長兼CTOが、初日に続き、3日目の基調講演にも登場。「AWSはIBMのメインフレームよりも閉鎖的だ」と、強烈な言葉でAWSをけん制して見せた。

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■強化したIaaSの特徴を説明

 今回のOracle OpenWorld 2016では、第2世代と位置づけるIaaSの「Oracle Bare Metal Cloud Services」をはじめ、「Oracle Ravello Cloud Service」「Oracle Container Cloud Service」などを発表。これらをOracle Cloudに追加することを発表している。

 基調講演では、これらのサービスについての説明と、デモストレーションが行われたほか、ビデオを通じて、Oracle Cloudを導入した企業の導入成果などについても紹介した。

 クリアン氏は、「Oracleの開発部門は、10年前にクラウドへの取り組みを開始し、現在では、全世界6万社、2000万人が、Oracle Cloudを活用。毎日500億のトランザクションを処理している。Oracleが40年間やってきたことをクラウドに反映。多くの企業のイノベーションを支援し、社会をより良いものへと変えている」と前置き。

 「Oracleのフォーカスは、顧客に対して、優れた機能を提供するところにある。インフラ、プラットフォーム、アプリケーションのすべてを“as a Service”として使ってもらうことができ、すべての開発言語、すべてのデータベース、ワークロードをカバーすることにより、顧客に選択肢を与えることができる」などとした。

 また、「新たに提供する第2世代のIaaSは、パフォーマンスが高く、強固なセキュリティ環境を持った、スケーラブルなバーチャルデータセンターをクラウド上に作れるものとなる。可用性の高い3つのドメインを活用して、低遅延のファイバーリンクで接続。信頼性の高いアプリを稼働し、障害からも隔離できる」と述べる。

 Oracleが発表した「Oracle Bare Metal Cloud Services」は、ベアメタルによるクラウドサーバーを利用するパブリッククラウドサービスで、高性能なデータベースをサービスとして提供するほか、ネットワークブロックストレージや、オブジェクトストレージ、VPN接続も提供する。

 Oracle Bare Metal Cloud Servicesのリージョンは、フォールト・インディペンデントな可用性を備えた、3つのドメインで構成。高い可用性と耐久性を備えたアプリケーションを、クラウド上に構築できるのが特徴だ。また、既存のOracle Cloud Platform製品とシームレスに相互運用ができるため、Oracle Cloud上で利用可能なサービスの利点を最大限に生かし、基幹業務アプリケーションを構築可能という。

 さらに、ソフトウェア制御による安全でプライベートな仮想クラウドネットワーク(VCN)も提供。コンピュータとストレージノードとを直接接続することで、ネットワークのスループットを最大限に高めることができる。

 クリアン氏はこれについて、「WebブラウザやAPIコールを使って、コンピュータ、ストレージ、ネットワークを仮想環境でつなぎ、ソフトウェア定義型の仮想データセンターを実現できる。他社のサービスに比べて、パフォーマンスが高く、拡張性があることに加えて、多くの機能を提供できる。また、クラウドで提供可能な最高レベルのセキュリティにおいても差別化できる。顧客に対してガバナンスが利いた制御を実現できるといった特徴もある」とアピール。

 加えて「顧客の理由によって、パブリッククラウドを使えないといった場合にも、同じスタックをサブスクリプションや従量課金の手法で、クラウドサービスとして提供することもできる」とコメントし、「競合企業に比べて、10倍のスループットを持つなど、企業のワークロードに適した業界最高のパフォーマンスを提供するとともに、業界最高のIOPS、最高の帯域幅を持ったストレージ、サーバーを、あらゆるパブリッククラウドサービスで利用できる」とも述べた。

■PaaSとSaaSも強化

 一方で、Oracle Cloud Platformにおいては、「Oracle Ravello Cloud Service」や「Oracle Container Cloud Service」の提供を開始すると発表した。

 Oracle Ravello Cloud Serviceは、エンタープライズ向けVMwareやKVM(Kernel-based Virtual Machine)のワークロードを取り込み、パブリッククラウド上でそのまま実行できるようにした業界初のクラウドサービス。企業は、VMwareをそのままパブリッククラウドで動作させることができ、VMコンバージョンやアプリケーション設定、ネットワーク変更の必要はないという。また、L2およびL3ネットワークの完全な柔軟性を持つ業界唯一のサービスだとする。

 Oracle Container Cloud Serviceは、シングルクリックで、アプリケーションスタックを、Docker互換の手法で展開できるのが特徴。レジストリの統合機能や、エンタープライズグレードのアプリケーションオーケストレーションを実現。アプリケーションのスケジューリング機能や、サービス規模の拡張機能を持っているという。

 「データをクラウドで管理したい企業、これまでにない新たなアプリをクラウドで開発したい企業、解析やアナリティスクを活用したい企業に対して、OracleのPaaSを提供する。これは、OracleのIaaSの上に構築するものであり、PaaSの部分だけを活用することもできる」とした。

 PaaSでは、Database as a Serviceとして、Oracle Databaseだけでなく、MySQLやCassandraなども使うことができることを強調。さらに、Business Analyticsは「まったく新たなものを作った」としたほか、Elastic Bigdata & Streaming Platformでは、Sparkを活用した解析ができると述べた。

 SaaSでは、製造、サプライチェーン、アセットマネジメントなどを幅広い領域をカバーするIoTや、同社が力を注いでいるHCMなどを紹介してみせた。

 最後にクリアン氏は、「Oracle Cloudのテナント数は6万件となっており、2014年度第3四半期(2013年12月~2014年2月)と比較すると、2017年度第1四半期(2016年6~8月)には、270%となった。ユーザー数は170%、トランザクション数は500億となり、215%になっている。こうした技術を使って、企業を変革し、社会を変えていきたい。これがOracleの未来である」と語った。

■対AWSを徹底的にアピール

 一方でエリソン氏は、初日に続いて3日目の基調講演にも登場。初日に引き続いてAWSを引き合いに出しながら、Oracle Cloudの優位性を強調した。

 今回の基調講演では、Oracle CloudとAWSのベンチマーク比較を公表。アナリティクスにおいては24倍の速度差があり、OLTPでは8倍の差があることを示しながら、「Oracle Cloudでは1時間で終わる作業が、AWSでは24時間かかる。これは、AWSでは24時間分の費用がかかることになり、コストの上昇にもつながる」とする。

 また、RedshiftやAuroraをAWSで動作させる環境と比較しても、Oracle Cloudの方が、100倍から1000倍ものパフォーマンスの差が発揮できることを示しながら、「AWSは、Oracle Databaseに最適化されていないばかりか、自らのRedshiftにおいても最適化されていない。そして、Redshiftで開発したものは、Redshiftでしか動作しない。IBMのメインフレームよりも閉鎖的である。IBMは、Amdahlや日立、富士通の互換機という選択肢があったが、AWSからはほかの選択肢が用意されていない。AWSにロックインされてしまい、AWSが価格を引き上げたら、なにを言わずにそれを支払うしかない」などとした。

 さらに、AWSに比べてOracle Cloudが20%安い価格で提供できることや、Exadata Express Cloud Serviceによって、Oracleのフル機能を月額175ドルで利用できることも強調してみせた。

 エリソン氏は、「どんなOS環境でも、どんなハイパーバイザー環境でも、あらゆるワークロードをOracle Cloudの環境に移行できる。既存のデータやアプリ、ネットワーク、IPアドレスはそのまま移行できる。Dockerとコンテナにも対応でき、仮想化のオーバーヘッドは不要になる。既存の投資が保護できるのが。これはAWSにはできないこと。アプリとデータを移動させるには大量の作業が必要になる。オンプレミスをOracle Cloudの環境であれば、より高速に、信頼性が高く、セキュアな環境で、コストも削減できる」とした。

 さらに、エリソン氏は自らデモストレーションを行い、Oracle Cloudを使って、その場でバーチャルデータセンターを約5分で構築してみせた。

 「ネットワーク、サブネット、ストレージ、メモリ、コンピューティング環境を簡単に構築できるのが特徴である」と述べた。

 一方で、Oracle Database 12c Release2 for the Cloudについても説明した。

 Oracle Database 12c Release2 for the Cloudは、独自のマルチテナントアーキテクチャとインメモリテクノロジーの上に構築されたOracleのフラッグシップデータベース。高速なアナリティクスワークロードと、最大数百TB規模のデータベースのサポートにより、エンタープライズが求める要件だけでなく、将来の急激なデータスプロールにも対応しできるという。

 「Oracle Databaseは、インターネットコンピューティングから、クラウドコンピューティングの変化のなかにおいても、進化を遂げていく。いまOracle Databaseを使っているユーザーは、オンプレミスも、クラウドも自由に行き来ができるとともに、パブリッククラウドのすべてのメリットを享受でき、長年の投資を維持できる。また、新たな選択肢として、企業のファイアウォールの内側で、サブスクリプション型で利用できる環境も用意した」などと語った。

 IaaSへの本格参入によって、Oracleは新たな競合相手を見つけたともいえる。エリソン氏の2回にわたる基調講演は、まるでそれを楽しんでいるようであった。

クラウド Watch,大河原 克行

最終更新:9月21日(水)16時45分

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