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【内田雅也の追球】台風に思う「目的」「緊張」

スポニチアネックス 9月21日(水)9時10分配信

 台風は新しい言葉で、明治時代に気象学者がつくったそうだ。1914年(大正3)、与謝野晶子が<台風と云ふ新語が面白い><従来の慣用語で云へば此(この)吹降(ふきぶり)は野分(のわき)である>と書いている。

 <雨風の音を聴きながら電燈(でんとう)の附(つ)いた書斎で之を書いて居ると、なんだか海の底に坐(すわ)って居る気がする>。山本健吉編『日本の名随筆19 秋』(作品社)にある。

 晶子が案じ、書いた文章は戦争への不安と、2年前の渡欧で訪れたパリの事情だった。

 台風は不安な気持ちを駆り立てるのかもしれない。近畿地方を台風が通り過ぎ、巨人戦は早々と中止が決まった。同じく<海の底>で案じたのは阪神のことである。

 球団内で今季の検証が続いている。以前に書いたように、大切な「あきらめる」、つまり「明らかに見る」作業である。

 なかで、ターニングポイントを6月7―9日の千葉だとする声が出ている。前日6日まで59試合を28勝28敗3分けの勝率5割、首位広島に2・5ゲーム差の4位につけていた。直後のロッテ3連戦(QVC)で3連敗を喫した。以後、浮上することはなかった。

 確かに、59試合目までは戦えたのだ。シーズン143試合を山にたとえるなら、4合目までは登れる力があった。しかし、息切れした。

 ヘッドコーチ・高代延博が数日前、口にしていた言葉が頭にある。

 「今年は春先から若手を積極的に使ってきた。当初は勢いがついたが、やはり勢いだけでは長続きしない。本物になるには何が足りないか。本当の実力をつけていかないといけない」。その通りだ。勢いだけで勝てるほどプロは甘くない。

 <夢と志だけで、七カ月は走れないのである>と阪神ファンでもあった阿久悠が指摘している。本紙に連載した小説『球心蔵(きゅうしんぐら)』(河出文庫で書籍化)である。

 阿久は後に本紙で<期待したのは小説中にちりばめられたアフォリズム(警句)の数々で、それを美意識として伝えたかった。(略)この警句は、目的を失った男たちと、緊張を忘れた日本に対して発せられている>と明かしている。

 シーズンを戦い抜くには体力がいる。前監督・和田豊が終盤失速の原因にあげていた「心のスタミナ」もあろう。

 そして阿久が発した警句の「目的」「緊張」。核心を突くキーワードとみている。 =敬称略=(スポニチ編集委員)

最終更新:9月21日(水)9時27分

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