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群を抜いた高画質、ソニー「Z9D」の“魅せるHDR”

ITmedia LifeStyle 9月21日(水)22時24分配信

 Ultra HD Blu-rayの発売や「NETFLIX」の4K配信の開始などによって、4K&HDR(ハイダイナミックレンジ)が身近になった2016年春。各社からHDR対応の4K大画面テレビが登場して話題を集めたが、とりわけ液晶タイプのパナソニック「DX950」シリーズと有機ELのLGエレクトロニクス「E6P」シリーズの画質のよさに筆者は大きな感銘を受けた。

100V型「KJ-100Z9D」の設置イメージ

 HDRコンテンツでもっとも重要なコントラスト表現においては、リビングルーム照明下ではDX950シリーズ、完全暗室ではE6Pシリーズが群を抜いてすばらしかったが、この秋、この両シリーズの画質をはるかにしのぐと思える超高級4Kテレビが登場する。

 それがソニー「Z9D」シリーズだ。試作機を何度かチェックする機会を得たが、観るたびにそのハイパフォーマンスぶりに感激させられている。Z9Dシリーズこそ、この秋もっとも注目すべき4K大画面液晶テレビであると断言できる。

 基本画質性能がきわめて高く、さまざまなテスト信号を入力して他社製品と比較してみたが、ユニフォミティー(画面の均一性)やホワイトバランス、階調表現、SN比(ノイズの少なさ)など群を抜いてすばらしいのである。

 APL(平均輝度レベル)を大きく変動させても、ホワイトバランスが常に安定していて、美しいフェストーンが維持されることにとりわけ驚かされる。階調表現のなめらかさこそ後塵を拝するが、「マスターモニター並みの基本性能を持った大型テレビ」といってもあながち間違いではないだろう。

 液晶テレビがここまでの性能を獲得する日が来るとは、自発光タイプ派の筆者は信じられない思いがする。他社の液晶大型テレビに比べて良好とはいえ、視野角の狭さは依然課題として残るが、もはや高画質テレビを選ぶ際に自発光かどうかを気にする必要もないと実感させられる完成度なのである。

 Z9Dシリーズは65V型、75V型、100V型という3サイズの大型展開。受注生産の100V型は値段も700万円と破格だが、65V型は約70万円、75V型は約100万円と、同サイズの他社製品とじゅうぶん戦える値段設定になっている。

 Z9Dの高画質を実現した主な技術要素は大きく2つある。「Backlight Master Drive」(バックライト・マスタードライブ)と画像処理エンジン「X1 Extreme」だ。

 バックライト・マスタードライブとは、表示パネル背面に高密度実装されたLEDを1つ1つ個別に制御する画期的な技術。従来の直下型バックライトのローカルディミング(部分減光)は、いくつかのLED をグループ分けしてエリア駆動していたわけだが、本シリーズではLED1つ1つの明るさを個別にコントロールしているわけである。

 ソニー製テレビのローカルディミングの効かせ方の巧さは以前から定評があるが、バックライト・マスタードライブという新手法を得て、そのコントラスト制御の完成度は、他社が太刀打ちできないところまで到達したように思える。漆黒の見せ方、精妙な階調表現、ローカルディミングの余剰電流を生かした白の“突き上げ”など、まさに脱帽するほかない見事さだ。

 LEDの数は明らかにされていない。ソニーからは「LEDの数は1000個から1万個の間」というざっくりした説明があったが、実装密度は100V型が最も高く、75V型と65V型はほぼ同じ。画面サイズの違いによってLED数が異なるようだ。また、独自のレンズ設計によってLEDの光の拡散を抑えて各ピクセルに光を正確に照射できる工夫も新たに加えられている。

 その光学系の工夫の成果は明らかで、従来のエリア駆動型のようなハローの発生は見受けられず、色純度も申し分ない。もっとも採用された白色LEDは従来製品同様で、色域自体が拡大されているわけではない。ソニーは色再現範囲を発表していないが、デジタルシネマで定められたDCI-P3をほぼカバーする色再現能力を有すると思われる。

 また、今年1月のCES発表時には「明るさ4000nits(cd/m2)」がうたわれた本シリーズだが、今回の商品スペックに最大輝度の表記はない。画質は総合力、明るさの数値だけが一人歩きするのを避けたいというのがソニーの考えなのだろう。

●「X1 Extreme」の進化

 4K高画質プロセッサー、X1 Extremeの進化も興味深い。従来のX1に比べて1.4 倍の動画処理能力を持つこの画像処理エンジンは、「HDRリマスター」「デュアル・データベース解析」「スーパービットマッピング4K HDR」という3つの技術によって成り立っている。

 HDRリマスターとは、オブジェクトごとに最適化させたリマスター技術。画面全体のコントラストを一様に強調するのではなく、画像内の構成要素を検出・解析し、オブジェクトごとにコントラストを最適化したのちに、画像全体のバランスを整えるという手法が採られている。

 デュアル・データベース解析は、ノイズリダクション用データベースと超解像用データベースを別個に用意し、ノイズかテクスチャーかという微妙な判別精度をよりいっそう高めるために設けられた画像処理回路。

 スーパービットマッピング4K HDRは、8bit映像のデジタル放送やBlu-ray Disc、DVDで散見される階段状のノイズであるバンディング対策用回路技術。14bit信号処理回路と同社独自のスムースグラデーション技術を組み合せて、階調段差を目立たなくさせている。

 ソニー伝統のデザインの美しさもZ9Dシリーズの魅力ポイントだ。画面上下左右のベゼル幅は、画面サイズを考えれば驚くほど細く、空中に映像がぽっかり浮かび上がるイメージが得られる。

 一方、その引き替えに内蔵スピーカーは、ディスプレイ下部に下向きに取り付けられており、サイドスピーカーを擁したソニー製テレビ(X9350Dなど)並みの高音質を期待することはできない。このクラスの高級大画面テレビを求めるユーザーは、本格的なステレオ・スピーカーを組み合せるはずと考えての割り切りなのだろう。

 また、ディスプレイ背面も凸凹がなく、じつに美しく仕上げられている。各種接続ケーブルがきれいにまとめられる工夫が施されているのも、ソニー製大画面テレビならではの美点といっていい。

 「シネマプロ」「シネマホーム」という映画鑑賞用画質モードに設定して65V型、75V型で観たUltra HD Blu-ray Disc映画ソフト「レヴェナント:蘇えりし者」のすばらしさは、ちょっと忘れ難いものだった。漆黒の夜闇のなか赤々と燃えるたき火によって鮮やかに照射されるトム・ハーディの狡猾(こうかつ)な表情、見事なコントラストと豊かなグラデーションで表現される朝焼けの中をさまよい歩くレオナルド・ディカプリオの絶望的な後ろ姿。そんな映画的エモーションが画面からこぼれ落ちるのを目の当たりにし、深い感動を味わったのである。

 最近お気に入りの高画質Blu-ray Disc「黄金のアデーレ 名画の帰還」で描かれるクリムトの絢爛(けんらん)豪華な肖像画の描写もすばらしかった。金属の輝きのリアルな描写は、液晶テレビの苦手とするところだが、Z9Dで観る金色の鮮やかさは思わず息をのむほど。再生プレーヤーのパナソニック「DMR-UBZ1」の再生設定機能を用いて中域、高域の解像度調整を行うとZ9Dはリニアに反応し、UHD BDと見間違えるほどのキレのある映像を見せてくれるのだった。他社の液晶大型テレビでは、これほどビビッドに反応してはくれない。本機の基本性能の高さは、こういうところからもうかがい知れる。

 100V型大画面の迫力にも圧倒された。この大画面でも画質に粗さはまったく感じられず、どんどん画面ににじり寄りたくなる高S/Nでキレのよい映像が楽しめるのである。

 2000lm(ルーメン)程度が最大輝度の家庭用プロジェクターでHDRの魅力を堪能するのは難しく、やはりHDRコンテンツを楽しむなら直視型か? と改めて実感させられたが、700万円という値段では、残念ながらちょっと手が出ない。また、ぼくの狭い部屋ではさすがに100V型直視型は手に余る。画面を消したときの「そこにいる」存在感を想像すると、やはり使わないときは巻き上げ可能なスクリーン大画面が生活空間にフィットするよナ……と思う。

 この画質、この明るさでくるくると巻き上げられる超薄型大画面テレビがあればナと思うけれど、それはやはり液晶タイプでは無理ですね……。

最終更新:9月21日(水)22時24分

ITmedia LifeStyle