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新世界、遠のく昭和…「ミックスジュース発祥」老舗喫茶店、70年の歴史に幕

産経新聞 9月21日(水)14時52分配信

 ミックスジュース「発祥の店」といわれた大阪・新世界の老舗喫茶店「千成屋珈琲店」(大阪市浪速区)が今夏、約70年の歴史に幕を下ろした。3代目店主の恒川豊子さん(73)は「続けたいけど、体が思うようにならなくなった」と吐露。常連客からは昭和の雰囲気を残す名物店の閉店を惜しむ声が上がった。

 昭和23年、新世界の「ジャンジャン横丁」で前身となる果物店を創業。「売れ残った果物を捨てるのはもったいない」と、初代店主で義父の一郎さんの発案で提供し始めたのがミックスジュースの始まりという。

 余ったバナナやリンゴ、ミカン、モモ、牛乳と砂糖に、味の決め手となる「かき氷」を加え、ミキサーにかけて仕上げたミックスジュース。「スムージー」のような独特の食感を生み、地元客らを中心に「おいしい」と評判になった。

 35年に喫茶店へと業態を転換し、「冷コー(アイスコーヒー)」と並ぶ2大看板メニューに。他の喫茶店でも定番メニューとして取り入れられ、雑誌などでも発祥の店として紹介されるようになった。

 豊子さんが同店のミックスジュースを初めて飲んだのは、2代目店主の夫・忠久さんとのお見合いの席上で、義母が振る舞ってくれた。「甘すぎず、さっぱりとした味で、のどごしがすごく良かった」

 60年に忠久さんに先立たれて以来、約30年間店を切り盛りしてきた。しかし、昨年末から体調を崩して休業し、今年7月末にやむなく廃業を決めた。豊子さんは「楽しみにしているお客さんのためにも店を再開したかった」と残念がり、「期待に沿えなくてごめんね」と目を潤ませた。

 店の常連だった新世界町会連合会の大西幸次郎会長(65)は「ドロっとした食感がクセになる味だった。ジャンジャン横丁からまた昭和の名物店がなくなるのは寂しい」と話した。

最終更新:9月21日(水)15時20分

産経新聞