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<日銀長期金利目標>市場、対話姿勢を評価…金融株が上昇

毎日新聞 9月21日(水)21時15分配信

 21日の東京金融市場は日銀の金融緩和策を好感して円安・株高で推移した。銀行株を中心に株価はほぼ全面高の展開で、日経平均株価は前日終値比300円超反発。外国為替市場では円相場が円安・ドル高基調で推移した。長期金利の指標である新発10年物国債利回りも一時、約半年ぶりにプラスとなった。【松倉佑輔、中島和哉】

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 この日午前中は、日銀の金融政策決定会合の結果を見極めようと様子見ムードが広がった。午後1時過ぎに緩和策の一報が伝わると相場は乱高下した。東京・大手町の野村証券の為替トレーディングルームでは「追加(緩和)維持!」「スティープ(長短金利差の政策)だけ!」などの声が飛び交い、トレーダーが対応に追われた。

 その後、日経平均株価は上昇に転じてほぼ全面高の展開となり、前日終値比315円47銭高の1万6807円62銭で取引を終えた。マイナス金利の深掘りがなく、長期金利を0%程度にする方針を示したことで、銀行や保険などの収益が改善すると見込まれて金融株が上昇した。

 外国為替市場は「短期金利は下がるという思惑が働いた」(SMBC日興証券の太田千尋投資情報部長)ことから、一時1ドル=102円後半まで円安・ドル高が進行。ただ、その後は買い戻しの動きも広がり、午後5時時点では1ドル=101円80~83銭と前日比12銭の小幅な円安・ドル高に収まった。

 日銀が総括的検証を実施すると発表すると、先週には「マイナス金利の深掘りを行うのでは」との観測も広がり、銀行株が売られるなど市場では思惑が交錯した。今回の緩和策を受け、日本証券業協会の稲野和利会長は21日の記者会見で「大きなサプライズはないが合理的な政策手段で納得している。市場との対話も促進していこうという姿勢もみえる」と評価するなど市場には安心感が広がっている。

 今後の株価の見通しについては「どこまで円安・ドル高が進むかにかかっている」(大手証券)との見方が強い。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは「日本の金融政策については不透明感が払拭(ふっしょく)された。今後の焦点は米国の利上げや大統領選などになる」と指摘している。

 ◇想定通り/官製相場警戒

 現状のマイナス金利政策を維持しながら、長期金利を0%程度に誘導する新たな枠組みを設定することで「量」から「金利」へ政策主眼の転換を明確にした日銀。資金を借りる期間が短い金利よりも、長期間借りる金利が高くなるように誘導し、収益を確保できるよう配慮した形だ。市場は「想定の範囲内」と見る一方で、日銀が直接長期金利を誘導する「官製相場」の強まりを警戒する声も出ている。

 日銀は今回、金利が上昇局面となった場合、固定利回りで国債買い入れを行う「指し値オペ」を実施することを表明した。決定会合直後は、長期金利が一時、0.005%と半年ぶりにプラス圏まで上昇するなど乱高下したが、「長期金利を調整することも織り込み済み」(市場関係者)として再びマイナス圏に落ち着いた。

 だが、10年国債を当面0%で推移させる方針以外は具体的な金利水準は示されておらず、みずほ証券の松永哲也シニアマーケットアナリストは「どの程度の利回り幅が許容され、どのタイミングでオペを実施するのか、実際の運営を見なければ分からない」と「官製相場」の様相が強まる中で不確定要素が多いことに警戒感を示した。大和証券の小野木啓子・シニアJGBストラテジストも「日銀も手探り状態だろう。市場も2カ月ほどは水準が定まりにくい状態になる」と分析する。

 今後はマイナス金利の深掘りなどの追加金融政策が出されない限り、長期金利も0%近辺から大きく離れることは少なくなるとみられるが、小野木氏は「日銀の思い描く長短金利を実際の市場に本当に誘導できるのかが注目される」と語った。【中島和哉】

最終更新:9月21日(水)22時16分

毎日新聞