ここから本文です

ニコン「D500」「D5」でモータースポーツを撮ってみた

Impress Watch 9月21日(水)21時21分配信

 今春、ニコンから相次いで発売されたデジタル一眼レフカメラ「D500」「D5」の2機種をサーキットへ持ち込み使ってみました。オリンピックイヤーでの登場に相応しく、どちらも精度、連続撮影時の追従性、低輝度での高いAF能力を謳ったモデルで、D500はDXフォーマット機の最上位、そしてFXフォーマットのD5は、ニコンのデジタル一眼レフのフラグシップモデルです。

【この記事に関する別の画像を見る】

 今年のSUPER GT開幕戦で「AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR」のテストのため使った「D810」が高速連続撮影可能コマ数こそ5コマ/秒と今回の2機種に劣るものの、そのAF能力を含むカメラ全体の能力に満足していた筆者にとって、今回の後発2機種がどれほどの実力を発揮してくれるのかは興味深いところでした。ちなみに、今回もレンズはAF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VRを中心に使ってみました。

 画質に関しては好みの部分もあるので掲載画像で判断していただけると幸いです。「オリジナル画像」とキャプションに注釈のある画像についてはカメラで生成されたオリジナルのJPEG-FINE(画質優先)をそのまま掲載しているので、通信環境によっては表示に時間がかかる場合があると思いますので注意してください。撮影データを残してあるので無償の「Nikon View NX-i」等のソフトで見られるようになっております。また、色に関しての設定はすべてsRGB、オートホワイトバランス、ピクチャーコントロール:スタンダードで撮影しています。

 画像のサイズはD500、D5ともに5568×3712ピクセルで11MB~13MB程度、動画の撮影はしていません。

■いざサーキットへ

 今回撮影したサーキットはスポーツランドSUGOと鈴鹿サーキット。SUGOはSUPER GT 第4戦、鈴鹿はSUPER GT 第6戦とバイクの鈴鹿8耐で、鈴鹿での2レースは日没後まで行なわれるレースです。

 また、番外編的にD500と「AF-S DX NIKKOR 16-80mm f/2.8-4E ED VR」をタイで行なわれたアジアクロスカントリーラリーで使ってみました。ただし、おのおのの撮影は比較のためではなく、その場その場での状況に合わせ通常の撮影を行なっているため、同一条件での比較ではないのはご了承ください。

 それでは、まずは200-500mmのズームレンズで撮影されたD5、D500おのおのの写真をご覧ください。

 上のSUPER GTマシンはD5で曇天時に撮影。ISO感度は100、アクティブDライティングはオート。下の鈴鹿8耐マシンはD500で晴天時に撮影。感度は100に対し1/3段減感(つまり実質的には80)、アクティブDライティングはオート。どちらもAF-C、レンズ側のVR設定はSPORTモードという筆者が走りの撮影をする場合の標準的なモードで、明るさも十分にあるので感度は抑えてあります。

 仕上がりから見て、この時点ではニコンのデジタル一眼レフにおける最新AFシステムを備えるD5、そしてD5と同じオートフォーカスセンサーモジュールを備えるというD500、両者のAF性能に筆者は不満を全く感じません。

 もっとも、1年半以上前に発売されたD810でも全く不満を感じませんでしたし、そこに大きな違いを感じなかったのも正直なところです。もうこのメーカーのAFレベルはそこまで到達しているともいえると思います。ただし、マシンの進行方向やラインがある程度予測できるモータースポーツは、不意な動きもあるとはいえバスケットボールやサッカー、動物ほどの不規則な動きはありませんので、進化の度合いが分かりにくいのかもしれません。

 D5も投入されたであろう様々な媒体で発表されているリオオリンピックの写真、特に室内競技の写真などを見る度に、本当に差が出るのはそういう領域かもしれないと思うのも正直なところです。

 十分な明るさがある条件下ではモータースポーツ、そしてモータースポーツよりも比較的ラインが定まっている旅客機の離着陸や列車などの撮影においては、不満の出る人はプロ、アマ問わずいないのではないかと思えるレベルです。

■低輝度時のAF

 さて、今回の2モデルのAF性能はその精度、レスポンスとともに低輝度対応を謳っていますが、その辺を日没後までレースが行なわれる鈴鹿での4輪、2輪2つのレースで使ってみました。

 まずは、D5で撮影されたSUPER GTの画像を感度違いでご覧ください。左上からISO1600、ISO2500、ISO3200、そして人物の写真はISO5000です。

 続いて、D500で撮影した鈴鹿8耐。こちらはSUPER GT以上に暗く、感覚的にはほぼ真っ暗。写真は上からISO16000、ISO25600、ISO25600、ISO51200+0.7段増感。普段は目にすることもないような感度で、個人的にはもう写っただけでもヨシとするような環境です。

 驚くことにこれほど暗いシチュエーションでもD5、D500は被写体を捉え続けます。そのAF能力は圧巻で、感覚的にはどんな場所や時刻でも被写体に僅かに光が当たっていればOKという印象。そんな暗がりで感度を際限なく上げて得られた写真のよしあしは見る人次第ですが、ピント自体は問題ないようです。とにかくAFはひたすら獲物を追い続けます。

 ちなみにD500での鈴鹿8耐撮影時、シャッター半押しでAFを駆動させても被写体を掴むタイミングがワンテンポ遅れることがたまにありました。D5とD500の優劣ではなく、圧倒的に暗いシチュエーションでは一瞬で被写体を掴みきれないこともあるようです(D500の撮影環境の方が圧倒的に暗かった)。

 そんな時はAF-Cで連写していても途中で掴むことはなさそうなので、ファインダーでしっかりと被写体を掴んだことを確認してからシャッターを切りはじめなければなりません(日中でも基本的には同じですが……)。それにしてもよく合います。低輝度でのAF性能は驚くべきものでした。

■3D-トラッキング

 選んだフォーカスポイントで捉えた被写体を、シャッターボタンを半押ししている間追い続けるAFモードが「3D-トラッキング」。顔認識AFなど被写体を認識し追い続ける機能は、人によってはお馴染みのものかもしれませんがレースの写真で使ってみるのは初体験です。

 フォーカスポイントがフロントガラスあたりだったりボンネットだったり多少ユラユラしますが、かなり上手に先頭車両を捕捉してくれました。調子に乗って色々試してみるとまだ安定度は低いようですがシチュエーションを適切に選べば利用価値は非常に高いと感じます。これからこの機能の精度が向上すると、飛躍的に絵作りの自由度が高まることは間違いありません。さらなる進化を望みたい部分です。ちなみにD5、D500ともに採用されています。

■フレーミングの自由度を高めるD500の広域・高密度のAFシステム

 個人的にはその画質の優位性ゆえにフルサイズ一眼レフを選ぶことの多い筆者ですが、DX(APS-C)フォーマットの優位性を挙げるとしたら、レンズやボディのコンパクト化とともに挙げるのがAFセンサーが画面の広範囲に配置されることです。

 マニュアルフォーカスしかなかった時代には、ピント位置に絵作りが影響されないよう全面マットスクリーンを利用しマット面のどこでもピント合わせをできるように習慣づけていた筆者としては、AF時代の写真撮影においてAFセンサーが中央部分に集中して配置される現状は、その構造上ハードルが高くても常々進化を望んでいたポイントでした。

 で、D500。横位置時の天地方向にまだ空間があるとはいえ、かなりの進化です。また、D5のおいてもクロップ機構を使えばある程度理想に近づきますが、この部分に関してはDXフォーマット機に軍配を挙げたいと思います。

 ちなみに、この進化は写真の大切な構成要素「構図」に大きく寄与するものですから、機構的ハードルを乗り越えフルサイズ機ももっともっと頑張ってほしいと思います。

■アクティブD-ライティング

 今回の2機種の限ったことではありませんが、ニコンのデジタル一眼レフカメラに搭載されているアクティブD-ライティングについて少々触れておきます。D500で撮影した以下の写真をごらんください(タイ~カンボジアで行なわれたアジアクロスカントリーラリーにて夜を徹してマシンの修復作業をするメカニック)。

 露出はマニュアルですべて同露出、違うのはアクティブD-ライティングの設定のみです。OFF時と最も強くかけた時では露出そのものが違っているような明るさの違いです。潰れかけたシャドーを持ち上げている訳ですが、その持ち上げられた部分の品質にD500の実力を感じます。クルマの細部、右上の椰子の木の葉の質感、その品質は個人的には合格点です。

 比較してはいませんが、ここにさらなる品質を求めれば、同画素数でありながらセンサー面積が2倍以上のフルサイズ機D5の出番かもしれません。

■モータースポーツには、D5か? D500か?

 D5はニコンのフラグシップに相応しい性能と品質感を持った期待以上のカメラでした。その手にした感触、各部の操作感、そして何よりシャッターフィーリング、そのすべてが緻密な“イイモノ感”に溢れていて、高価ではありますがその価格に見合った満足感を得られると感じます。

 画質に関してはもちろん満足度が高く、今回は安価な「AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR」を中心に撮影しましたが(もちろんこのレンズの性能も素晴らしいのですが)、より高性能な単焦点レンズとの組み合わせでさらなる底力を発揮するカメラなのかもしれません。予算が許すなら1度は手にしておきたいカメラです(ちなみに今回使用したD5はXQDタイプでしたが、筆者のPC環境ではバックアップ等の時間短縮は僅かであり、残念ながら大きなメリットとまではなりませんでした。残念)。

 一方、その1/3程度の価格で入手できるD500も素晴らしいカメラでした。それは決して「価格の割には」という表現ではなく、カメラの能力を評価しての素晴らしさです。特筆すべきは高剛性炭素繊維複合素材を積極的に採用し、耐久性と軽量化を両立したボディの採用です。バッテリーとカード込みで860gのボディは、手にした時にハッキリと軽さを感じます。シャッターフィーリングもそれに合わせたような軽快感に溢れ、その気持ちよさの方向性がD5と全く異なることが分かります。剛性感を損なうことなくコンパクトかつ軽量であることは、高く評価すべき大切な性能だと思います。もちろん、AF等をつかさどる部品にD5と共通のものも多く、それゆえに得られた能力の高さもありますが、決して“プアマンズD5”ではありません。資金的に余裕があってもD500を積極的に選ぶ理由が見出せます。

 画質に関しては作例を掲載しておきますのでご覧ください。残念ながら曇天での撮影も多く、豊かな光源でテストチャートを撮るような環境下での写真はありませんが、すべて筆者がいつもどおりモータースポーツの現場で撮影してきたものです。

 最後に、検証用のNEFデータもダウンロードできるよう用意しましたので、ご自身の鑑賞環境で、ご自身の普段お使いのソフトで普段どおりに検証してみてください。そして個々に判断したうえで、今度はカメラ店やサービスセンターで自分が撮影するフィールドを思い浮かべてながら実際に手にしてシャッターを切ってみて見てください。

 今回はその両方なしには判断しかねる、それぞれに魅力を持った2台のカメラでした。

■Nikon D500 オリジナル画像

■Nikon D5 オリジナル画像

■NEFデータ(RAWデータ)

Car Watch,高橋 学

最終更新:9月21日(水)23時45分

Impress Watch