ここから本文です

<もんじゅ>核燃料サイクル多難…電力各社、旗降ろせず

毎日新聞 9月21日(水)22時5分配信

 政府は高速増殖原型炉「もんじゅ」を廃止にする一方、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出して再利用する「核燃料サイクル」自体は維持する方針だ。サイクル堅持を掲げる電力業界の望んだ方向で決着しそうだが、高速炉開発が不透明さを増せば、サイクルの抜本見直しも課題となる。【工藤昭久、宮川裕章】

 「廃炉になるなら、費用負担を被る恐れもなくなる。業界にとっては御の字だ」。大手電力の幹部は突き放したように答えた。

 高速増殖炉開発は、研究開発段階の原型炉まで国が引き受け、その後は民間主体で実用化を進める役割分担になっている。しかし、もんじゅの運営主体見直しを迫られた文部科学省は、電力会社に協力を求めることを検討。電力会社は費用負担まで求められかねないとして警戒し、電気事業連合会の勝野哲会長(中部電力社長)は16日の記者会見で「(電力会社には)技術的知見がないので難しい」と否定していた。

 電力会社の事情は複雑だ。電力自由化の波にさらされる中、漫然と核燃料サイクルを推進することは経営リスクになりかねない。サイクルは、核燃料を一度使っただけで捨てる方式より割高とされる。料金値下げやサービス向上を迫られる中、負担に耐え続けられる保証はないのだ。

 一方で、サイクルの旗を降ろせない事情もある。青森県六ケ所村の核燃料再処理工場には、各原発から送られた使用済み核燃料が保管されている。工場が稼働すれば、これらの核燃料からプルトニウムを取り出す「再処理」が行われ、新たな核燃料に生まれかわるが、再処理をしないならただのごみだ。政府は青森県に「核のごみ捨て場にはしない」と約束しており、サイクル撤退となれば全国の原発に返送されかねない。原発も手狭で、使用済み核燃料があふれて運転できなくなるリスクすらある。

 日本は核兵器にも使えるプルトニウムを約48トン保有し、確実に消費するシナリオを示す必要もある。電力会社幹部は「核燃料サイクルを着実に続けるしかない」と話し、一般の原発(軽水炉)でプルトニウムを使う「プルサーマル」を進める計画だ。サイクルには、高速増殖炉と軽水炉の二つの路線があるが、本来の主役は高速増殖炉。プルサーマルはわき役だ。軽水炉1基で消費できるプルトニウムは1トンに届かず、国内で実施しているのは四国電力伊方原発3号機(愛媛県)だけ。電事連は16~18基で行う計画だが実現は見通せず、プルサーマルだけでサイクルを完結させるのも難しい。

 前進も後退もできず立ち往生が続く核燃料サイクル。原子力政策に詳しい立命館大の大島堅一教授は「電力需要が減少する中、再生可能エネルギーの供給力も増える。核燃料を自給自足する核燃サイクルを目指す必要性はなくなっている」と指摘。もんじゅ廃炉は、経済産業省や電力業界が警戒するサイクル見直しの議論に道を開く可能性をはらんでいる。

最終更新:9月21日(水)23時35分

毎日新聞