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日産とテスラ“棲み分け”鮮明 大衆路線と高級志向のEV戦略…成否いかに

SankeiBiz 9月21日(水)8時18分配信

 電気自動車(EV)をめぐり、日産自動車と米テスラモーターズが狙う顧客層の“棲(す)み分け”が、鮮明になってきた。これはEVとの親和性が高い自動運転とも、連動していく。日産首脳は言う。「自動運転の導入は、8月に発売したファミリーカーのセレナから始めた。自動運転もリーフで始めたEVも、まずは広く大衆に向けて普及させるのが日産の方針だから。富裕層だけを狙うのとは違う」

 一方、テスラモーターズ日本法人のニコラ・ヴィレジェ社長は話す。「リーフのようなシティー・カーをテスラは出さない。ただし、日本市場には力を入れていく。国土が狭く充電インフラが世界で一番整備されている日本は、EV(電気自動車)を普及させやすいから」

 テスラは、EVのスポーツ用多目的車(SUV)「モデルX」(価格は税込み895万円から)を発売した。EVのSUVは日本市場では初。いま予約しても納車は来春の予定という。「ポルシェやレクサス、アウディなどのガソリン車が競合車」とヴィレジェ社長。日本で予約や問い合わせを入れているのは、経営者や医師など40代の富裕層が多いそうだ。

 テスラは米カリフォルニア州に工場を持ち、高級セダンの「モデルS」と12年から北米で発売しているXとを合わせた生産能力は、「2016年で8万台超から9万台の間を目指している」(ヴィレジェ社長)。

 ただし、17年末に発売を予定する新型セダン「モデル3」(価格は約400万円)の予約を今春始めたところ、短期間に約37万台も入っている。このため、18年には生産能力を年50万台に引き上げていく計画だ。ちなみに、モデル3は「BMW3シリーズ」などが競合車となる。限られた生産台数から、いかに「右ハンドル」を確保していくかは、日本市場攻略のポイントとなりそうだ。

 もっとも、年50万台体制構築に向けて重要になるのが、心臓部品であるリチウムイオン電池の増産だ。現在はパナソニックとの合弁でネバダ州に電池工場を建設中で、年末までに稼働を始める。モデルS、同Xには、パナソニックグループの旧松下電池工業が開発した「18650(直径18ミリ、高さ65ミリの円筒形)」と呼ばれる汎用(はんよう)電池が、1台当たり約7000本も床下に搭載されているとされる。この2次電池は、正極にニッケル材を使用していて、高容量(電気をたくさんためられる)なのが特徴。

 モデルSは販売直後の13年に、相次いで火災事故を発生させた。さらに今年5月、米国で自動運転システム「オートパイロット」を作動中に、初めての死亡事故を起こした。「(火災の原因となる)電池の破損を防ぐよう、電池ボックスの下の鋼板を強固にした。また、自動運転モードのソフトを9月に刷新した」(同)と説明する。

 これに対し日産のリーフは10年12月に発売し、今年8月までに世界累計で23万台以上を販売した。「リーフは一度も火災事故が起きていない」(日産幹部)という。世耕弘成経済産業相は「(環境や安全など)次世代自動車の開発が遅れると国の根幹にかかわる。戦略や取り組みを誤ってはいけない」と語る。

 日米EVメーカーの販売動向は、電池など日本の部品メーカーにも影響を与えていく。自動車の環境規制が世界的に強化されていくなか、両社のマーケティング戦略が注目される。(ジャーナリスト 永井隆)

最終更新:9月21日(水)12時13分

SankeiBiz