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継業 なりわい“脱世襲”めざし 移住者を担い手に 起業より利点

日本農業新聞 9/21(水) 7:00配信

 加工所や伝統工業の世襲が進まず廃業するケースが相次ぐ中、移住者が経営を受け継ぐ「継業」の仕組み作りが、農山村で動きだした。起業と比べ費用が抑えられ、ノウハウや顧客も引き継げるのが大きな利点。移住がうまくいくために不可欠な、安定した収入の確保につなげやすい。地域の基盤維持にもつながり、継業が地方創生の新たなキーワードになりそうだ。

 岐阜県郡上市の農家、和田淑人さん(66)は昨年4月、農業の副業として地域住民と経営していたキャンプ場を、大津市出身の大塚義弘さん(36)に継業した。1981年に和田さんの父親らが開業したが、集客数が減少。後継者に手渡したいと市に相談したところ、キャンプ場経営を希望する大塚さんと知り合い、市商工会が仲介して継業が決まった。

 大塚さんは、自然体験など新たなメニューを加えるなど工夫して経営する。「継業で地域の発展に貢献したい」と見据える。和田さんは「世襲という時代ではない。キャンプ場が残ってよかった」と継業を喜ぶ。

 市商工会は移住施策と結び付け、後継者不在や廃業予定の事業を第三者に引き継ぐ登録制度を2015年4月に始めた。法人格を持たない個人事業主や小規模零細業も対象。今後は修業期間を設けるなどきめ細かなフォロー体制を取る計画だ。

 カフェを継業した、津市出身の小崎みのりさん(28)は「初期投資で借金することがないので気が楽。地域の人が引き続き応援してくれるのがうれしい」と話す。市商工会は「郡上のなりわいをどう残すかが課題だった。この仕組みで廃業を食い止めたい」と言う。

 北海道下川町も、スーパーマーケットや割り箸工場の担い手を全国から公募する仕組みを14年に作った。

 広島県安芸太田町は5年前、町に唯一残っていた鍛冶工房の後継者を全国公募した。応募した20代の移住者が修行を積み、現在は鍛冶屋として活躍。同町は「工房がなければ地域に欠かせない農具の修繕ができなくなる。たたら産業で栄えた地域の文化維持にもつながった」(地域づくり課)と歓迎する。

 東京商工リサーチの調べでは、資産が負債を上回るにもかかわらず休廃業、解散した企業は15年で2万6699件に上る。負債超過で倒産した件数(8812件)の3倍に上る。後継者確保ができないなどで、事業継続を断念したとみられる。

 中小企業庁は5年前から法人格のある企業の事業承継を進めてきたが、14年から法人格のない個人事業主などと起業希望者を各都道府県でマッチングさせる「後継者人材バンク」を設置する。農家や農業生産法人も対象だ。同庁は「地方創生の一環にもなり、今後マッチングの実績は伸びる」(財務課)とみる。(尾原浩子)

日本農業新聞

最終更新:9/21(水) 7:00

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