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テーメル政権下の不思議、驚くほど絶妙なタイミング

ニッケイ新聞 9月21日(水)0時7分配信

世界的には「五輪とパラリンピック」ばかりが注目されたブラジルだが、その裏番組のようにジウマ大統領罷免やクーニャ前下院議長の議席剥奪など、国内的には政治史に残る出来事が粛々と起きている。テーメルの人気は最低だが、思いのほか政治手腕は高いのかもしれない。

 思えばこの間、いろいろなタイミングが実に絶妙に組み合わさっている感じだ。テーメルが大統領代行になってまず進めたのが6月頭、「連邦公務員昇給法案」の下院承認だった。当時からシャワー効果で州や市の公務員も同様に上昇したら―と危惧されていた。その直前に1700億レアルの赤字会計を承認しておきながら、同時にこの昇給法案による580億レアルの支出増を承認するチグハグさをいぶかっていた有識者は多かった。この昇給法案を強く推していたのが、レヴァンドウスキー前最高裁長官だと当時から報道されていた。

 今思えば、最高裁長官には上院でのジウマ罷免をきっちりと仕上げてもらう必要があるから、彼のご機嫌をとるためにテーメルはこの法案を下院通過させたのだろう。

 ジウマ罷免を最後まで終え、最高裁長官が昇給法案反対派のカルメン・ルシア氏に入れ替わった途端、テーメルはその法案を否決した。ジウマ罷免直後に最高裁長官が交代することは以前から分かっている予定であり、最初から最終承認するつもりはなかった。あくまで政治的な駆け引きとして一時的に進めるふりをしていただけに見える。

 クーニャ議席剥奪のタイミングも絶妙だった。もちろんクーニャはそれを納得したわけではない。だが、少なくとも「ジウマ罷免の後だった」ことは喜んでいるはずだ。

 検察庁が15日に「ルーラはペトトロン汚職の最高司令官」と記者会見したのも絶妙なタイミングだ。ジウマ罷免の後で、なおかつ選挙運動の真っ最中だからだ。これがジウマ罷免の前なら「最高司令官がルーラなら、ジウマはただの手下だから全責任を取らせるのはおかしい」という罷免反対の論拠になっていた。そして地方選挙の真っ最中だからPT候補に深刻な打撃を与える。モーロ判事がこの告訴を受理して、選挙直前にルーラ逮捕となれば「誰かが仕組んだ」のかと疑いたくなるタイミングだ。

 とはいえ、テーメルの思惑を越えた出来事も相当起きている。メンサロンの発端となった証言をロベルト・ジェフェルソンから引き出したことで有名なジャーナリスト、レナータ・ロ・プレッテが9日朝、CBNラジオでこうコメントした。《以前から政府には二つの巨大な「ブラックボックス」(「黒い金庫」)があると言われてきた。一つはペトロブラス、もう一つが年金基金だった。そのもう一つが開けられ始めた》。それを聞き、ゾッとした。連邦警察が5日朝、公社職員の年金基金を巡る不正容疑を摘発する「グリーンフィールド作戦」を開始した件だ。「もう一つのペトロロン」が始まったのだ。

 《これはペトロロン同様、すごく難しい捜査過程をたどるだろうが、とんでもないものが明らかになるはず》と彼女は見通す。BNDESをそこに加えて「3大ブラックボックス」と呼ぶジャーナリストもいる。

 新最高裁長官は生涯独身で「憲法と結婚した法律家」と呼ばれるほど真面目で、順法精神が高いことで有名。彼女が長官の間に「ジウマ=テーメル」シャッパ同罪審議の判決が出るかもしれない。「ジウマが罷免なら、同じシャッパのテーメルも同罪とされる可能性が高まった」と見る専門家もいる。

 もしもテーメルが、他の政治家がやりたがらない不人気だが必要な政策、例えば政府支出上限法案、年金改革、労働法改革などを強引に推し進めつつ、2年後の総選挙前に自分もろとも「旧タイプの政治家」を一掃するように最高裁判決などで政権崩壊すれば、ある意味、国民には最高のシナリオかも…。18年の総選挙では「新しい政治家」が中心に選ばれる展開になれば、案外、彼は後世に名を残す政治家になるかもしれない。(深)

最終更新:9月21日(水)0時7分

ニッケイ新聞

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。