ここから本文です

中国、「失われた10年」が始まった

ニュースソクラ 9/21(水) 16:01配信

潰せない国有企業に多額債務 不良債権200ー300兆円説も

 中国の景気は一進一退ながらも経済指標面では下げ止まりの兆候も見える。4~6月の実質GDPは6.7%と9年ぶりの低水準となった。8月の景気指標をみると、製造業PMIは50.4と前月の49.9から回復している。鉱工業生産も前年比+6.3%と前月(6.0%)から持ち直している。

 1~8月の累積ベースでみた都市部固定資産投資は、国有企業の投資水準では政府の要請もあり底堅く推移している一方で、民間部門は前年比+2.1%と1~7月と同水準で16年ぶりの低水準を続けている。

 対外面では人民元レートは9月に入り1ドル=6.6元程度と直近ピークの15年11月と比べると9%弱の元安となっており、外貨準備高は人民元安の下での為替市場介入から3兆1,850億ドルとピーク比8000億ドル程度の減少となっている。

 確かに景気循環的には下げ止まりの兆候も見えるものの、かつての10%成長、輸出の急拡大に支えられた外貨準備の急増といった時代には戻ることはない。

 このような中国経済の景気減速はある意味で必然の結果である。グローバル化とは労働コストの上昇と生産性の低下で先進工業国が諦めた製造業部門を賃金の安い途上国に移す動きである。それが中国をはじめとする途上国で可能であったのは農村の過剰人口を移動させて工場労働者として低賃金で雇えたからである。

 しかし、農村の過剰人口があらかた消滅して、いわゆる「ルイスの転換点」を過ぎた中国では賃金の大幅上昇と、過大投資のツケで生産性が急速に低下している。単純に低賃金の労働力と資本設備の拡大でGDPを増やせる時代は終焉を迎えつつある。

 問題は過剰な設備投資や不動産開発事業の帰結としての中国の不良資産問題の今後である。日本のバブル崩壊の経験と同じく、中国でも不良資産が累増してバブルが崩壊するのではないかとの観測が高まっている。

 そもそもリーマンショック後の4兆元(約60兆円)に及ぶ景気刺激策が国営企業、地方政府による設備投資や不動産開発事業であった。この多くが国営銀行やシャドーバンキングによる融資で賄われてきた。景気停滞とともにこうした融資が不稼働資産となり利払いが滞るようになっている。

 一例をとれば、中国の鉄鋼業では年間粗鋼生産量11億トンのうち、4億トンが過剰設備となり中国政府が廃棄を指導している。ちなみIMFによると、15年末の債務残高はGDP比225%、そのうち家計,政府(各々GDP比40%)は国際的に見ても高い水準ではない一方で企業債務の水準はGDP比145%と際立って高い。

 とくに国有企業は生産額シェア(GDP比22%)の倍以上の55%を占めている。民間の債務返済負担が大きく、しかも経営効率の悪い国営企業では売上高対比の借入額水準が異常に高いことを意味している。

 中国の統計全般に言えることだが、例によって不良資産の規模は定かでない。中国の監督当局である銀監会発表では15年3月末の不良債権残高は1兆3,900億元で、これに関注類(注意を要する債権の意)の3兆2千億元を加えても4兆5000億元しかない。

 もちろん、実態を反映してはいないであろう。それでも、不良債権残高は前年比で42%と急増している。筆者が欧米の中国専門家に聞いたところ、GDPの20%程度と日本のバブル崩壊時と同規模に達しているのではないか、との推計であった。日本円にすると200~300兆円くらいの規模となる。

IMFでは不良資産処理のビークルを整備したうえ迅速に思い切って処理してしまうことを提言している。すなわち、国営企業を中心とした事業整理の進捗ないし事業再生を素早く実施するとともに債務の株式化(デット・エクイティー・スワップ)や不良資産買い取り会社の設立などの手立てを講じることを提言している。

 もちろん公的資金の注入は避けて通れない。しかし、米国のある中国問題の専門家は「国営企業を整理していけば百万人単位の失業者が出るうえ、何らかの形で共産党幹部が利権に絡んでいるので、共産党内の政争になりかねない。

 従って経営の良い国営企業Aが延滞を起こしている赤字の国営企業Bを吸収する、その間利払いを免除ないし追加融資で賄うという形で問題を先送りする公算が強い」と指摘していた。

 現に地方政府に地方債を発行させて借り入れ金利を半減させてそれを銀行に引き受けさせるといった形での救済策が既に取られている。しかし、こうした先送りは資源の有効な配分を妨げて経済全体の効率性が悪化の一途をたどる。

 日本がゾンビ企業の整理に二の足を踏み、ドラスティックな事業整理・再編を避けたとがめでデフレ経済に陥ったのと同じだ。このままでは中国もいずれ「失われた10年」を経験するであろう。財政的に余裕があり、いざとなれば減少したといえ3兆ドルを超える外貨準備をもって公的資金注入に踏み切ればいいのでクラッシュという事態はないにしても、不良資産問題が成長・雇用拡大のアキレス腱となろう。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:9/21(水) 16:01

ニュースソクラ

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

うん、核融合炉を作ったよ
核融合こそ未来のエネルギー問題への答えであり、子どもにだって世界は変えられる、テイラー・ウィルソンはそう信じています。そして彼はそのどちらにも取り組んでいます。14歳の時に家のガレージで核融合炉を作り、17歳となった今、直前の依頼に応えてTEDのステージで自分の物語を(手短に)語っています。