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【寄稿】難民支援に500億円超の投資を決めた訳=ソロス氏

ウォール・ストリート・ジャーナル 9月21日(水)11時47分配信

 強制的に住む家を追われた移民の急増で、世界は不安定になっている。数千万の人々が定住できず、祖国を捨てて外国により良い生活の場を求めようとしている。内戦や圧政を逃れた難民もいれば、極貧のために国外脱出を余儀なくされ、自身や家族が経済的に立ちゆくための道を探る者もいる。

 増え続ける移民への有効な政策を考え出し、実行することにわれわれは一様に失敗してきた。それが好むと好まざるとにかかわらず、難民を出した国々と受け入れた国々の双方に悲惨な人道的状況や政治不安を生み出す大きな要因となった。移民は多くの場合、絶望の中で無為に過ごすことを強いられ、受け入れ国は彼らが社会に溶け込むことで得られるはずの恩恵を受け取れずにいる。

 政府は移民や難民に十分な物理的・社会的インフラを用意し、維持することにより、この危機への対応に主導的役割を果たす必要がある。一方で、民間セクターの力を活用することも不可欠だ。

 オバマ米政権はこうした認識のもと、強制的移住による課題の克服に米企業が一段と大きな役割を果たすように求める「行動の呼びかけ(Call to Action)」をスタートした。今では民間のリーダーが国連に集まり、問題解決を支援する具体策を練っている。

 私はこれに呼応して5億ドル(約509億円)を投資し、移民や難民、受け入れ国のニーズに明確な形で取り組むことにした。移民・難民が自ら立ち上げた新興企業や既存企業、社会的影響力のあるイニシアチブ、様々なビジネスに投資をする。私の主たる関心事は欧州にたどり着いた移民・難民を支援することだが、同時に世界各地の移民が恩恵を受けるようなすぐれた投資アイデアを探し続けていく。

 この投資は、私の財団が行ってきた強制的移住に対する慈善事業を補完するものだ。われわれは数十年来、世界中でこの問題に取り組み、かなりの金融資源をつぎ込んできた。

 多岐にわたる分野での投資を目指すが、中でも最新のデジタル技術は、住む家をなくした人々が直面することの多い問題点を解決する手段として特に有望視されている。この分野の進歩により、政府や司法、金融、医療などのサービスへの効率的なアクセスが可能になると考えられる。民間企業はすでに移民以外を対象にしたこれらのサービス開発に数十億ドルを投じている。

 その結果、モバイル端末を経由して資金が瞬時に移動し、ドライバーは携帯電話一つで乗客を見つけ、北米にいる医師はアフリカの患者をリアルタイムで診察することができる。移民向けサービスとしてこれらの技術革新をカスタマイズし、展開すれば、世界中で何百万人の生活の質が向上するのに役立つだろう。

 これらの投資はすべて私の運営する非営利団体「オープン・ソサエティ財団」の下で行うこととする。もちろん成功を意図しており(私は民間資本がいかに移民支援に建設的役割を担えるかを示したいと考えている)、何らかの利益が出れば、移民・難民向けプログラムを含めた同財団のプログラム全体の資金源となる。

 市民社会の長年の提唱者であるわれわれは、これらの投資によって移民および受け入れ国に真の恩恵を与える製品やサービスを確実にもたらすことを目指していく。

 また、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)や国際救済委員会(IRC)といった機関と緊密に協力し、これらの投資の指針となる原則を決める。われわれの目標は民間セクターのみが提供できる技術革新を、公共の利益のために活用することだ。

 私がコミットすることで他の投資家が同じ使命を追求するきっかけになればと願っている。

(著者のジョージ・ソロス氏はソロス・ファンド・マネジメント会長であり、オープン・ソサエティ財団の創設者)

By GEORGE SOROS

最終更新:9月21日(水)11時47分

ウォール・ストリート・ジャーナル

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。