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社説[世界最古の釣り針]旧石器人らはグルメ?

沖縄タイムス 9月21日(水)7時15分配信

 沖縄の旧石器人たちはグルメだったのだろうか。釣り針の出土は、狩猟中心の旧石器人のイメージを覆すような画期的な発見といえそうだ。

 南城市玉城前川のサキタリ洞遺跡からは近年、考古学や人類学上の貴重な出土が相次いでいるが、今度は2万3千年前(後期旧石器時代)の貝製の釣り針が発見された。世界最古である。

 県立博物館・美術館によると、出土したのは2012年で、巻き貝の底部を割って作った幅約14ミリの完成品1点(約2万3千年前)と未完成品1点(2万3千~1万3千年前)。砂岩などで研いだとみられる痕跡がある。

 日本の旧石器時代の遺跡からは、釣り針などの道具を使って漁労活動をしたことを示す遺物は見つかっておらず、狩りをして生活していたとされる旧石器人像に、再考を迫るかもしれない。

 興味をそそられるのは、釣り針とともに、高級食材の上海ガニの仲間といわれるモクズガニの爪が約1万点、巻き貝のカワニナやオオウナギなど河川性の動物遺骸も多く出土し、食料として利用していたとみられることだ。

 モクズガニを科学的手法で分析してみると、カニは殻の幅が約8センチの大型で、主に産卵を控えた秋に食していたことが分かっている。

 県立博物館・美術館の藤田祐樹主任(自然人類学)は「旬を狙って捕っていたのではないか」と旧石器人たちの「グルメぶり」を想像する。

 刺し身などとして食べるイラブチャーの骨も出土しており、旧石器人たちが今につながる食生活をしていたかもしれないと考えると楽しい。

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 モクズガニや巻き貝のカワニナ、焼けたシカの化石は約3万5千年以上の遺骸で、10年に発見された幼児の人骨は約3万年前にさかのぼる。

 約1万4千年前の石英製石器や、貝殻を材料に道具や装飾品に加工された約2万年前の貝器などを総合すると、研究者らは(1)旧石器人が3万5千~3万年前には琉球列島の中央部(沖縄島)に渡来していた(2)島は陸上動物や石器をつくる石材が乏しく長期間存続できなかったとの仮説が否定され、2万年にわたって継続的に居住していた(3)釣り針など長期的居住を支える技術・文化があった-など新しい旧石器人像を示している。

 沖縄の旧石器時代は人骨は出るが文化を伺わせるようなモノが出土しないと指摘されてきたが、サキタリ洞遺跡は両方を兼ね備えており、貴重な遺跡である。

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 これまで世界最古の釣り針は南方の東ティモール・ジェリマライ遺跡で発見された2万3千~1万6千年前の貝製である。サキタリ洞遺跡から出た釣り針と共通性があるのかどうか。沖縄独特のものなのか。研究を深めてもらいたい。沖縄の旧石器人はどこから来たのかの解明につながる可能性があるからだ。

 サキタリ洞遺跡には沖縄人類史の謎に迫る手掛かりがまだまだ埋まっていそうだ。発掘調査をスムーズに行い、継続するためにも同遺跡の管理保存の在り方を検討すべきではないだろうか。

最終更新:9月21日(水)7時15分

沖縄タイムス