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アングル:違法ダウンロード情報で新たな広告市場できるか

ロイター 9月22日(木)9時24分配信

[14日 ロイター] - いくつかの米新興企業は、インターネット上で違法に映画やテレビ番組、音楽をストリーミングする何億もの人々についてのデータを収集することによって、新たな広告市場の創造を目指している。

とはいえ、業界のタブーとも言える「コンテンツを盗む」消費者に対して商品を売り込む機会を得るために、大手ブランド企業が喜んで金を払うかどうかが、この小さな産業の運命を決めることになる。

この新ビジネスは、違法にコンテンツをダウンロードした人々のデジタル上の行動足跡を測定して追跡する。このコンセプトはまだ緒についたばかりで、メディア業界内部では懐疑心を持って迎えられているものの、一握りの企業はすでに一足早く進出しつつある。

こうした新興企業の中で最大手のTru Optikは2月、広告世界最大手の英WPP<WPP.L>傘下となるグループエムの1部門でニューヨークに拠点を置くマインドシェアと、データを共有する契約を交わした。

設立3年のTru Optikは、ビットトレントなどのファイル共有ソフトを利用して、テレビ番組や映画を違法に視聴・共有した約5億人分のデータベースを構築。これらのデータは、彼らが訪れたウエブサイトや郵便番号、購入履歴など他のユーザーデータと統合される。

マインドシェアの顧客データ戦略を担当するSameer Modha氏によると、同社は、そうしたデータを使って、新たなジャンルの映画や番組を効果的に特定し、そのジャンルのファン層に対してメディア顧客が行う宣伝活動を支援する。

データ分析を通じて同社は、例えば、ウエスタンやサイエンス・フィクションを含めたさまざまなジャンルの番組や映画において「悲惨な代替現実で孤立している主人公」を描いたストーリーを好むファン層が存在していることを最近確認したという。

こうしたセグメンテーション(細分化)手法を活用することで、マインドシェアは、メディア顧客が関心度合いの高いユーザーに対して番組や映画の宣伝を流すことを支援できる。

ただ、Modha氏は、違法な視聴者に対して直接広告を流すことはないと強調。利用者の行動を理解することは、その行為を奨励することと同じではないと話す。

「もし、私が車を盗んだ人々にインタビューをする場合、それは自動車窃盗を見逃していることになるのか。それとも、その状況を理解しようとしているのか」と同氏は問う。

この問いは、こうした新興企業と著作権侵害をめぐる倫理的な議論の核心を突いている。

全米放送事業者協会(NAB)を含めた業界大手の一部は、ロイターの取材に対し、マインドシェアへの不快感を表明するものの、新たな動きに対して法的措置は取っていない。

「協会会員は、コンテンツ泥棒や著作権侵害を許容する企業との事業提携について、引き続き反対する」とNABスポークスマンのデニス・ウォートン氏は語る。

アンドレ・スワンストン最高経営責任者(CEO)は、Tru Optikが著作権侵害を是認や許容しているわけではないと話す。

同社のデータベースは、違法ダウンロードを行った人々を、名前ではなくIPアドレスなど匿名のデータポイントによって特定する。大手広告主は、彼らが頻繁に訪れるサイトに対してターゲット広告を打つことができる。同社によれば、不法コンテンツを共有するサイトや、不法コンテンツそのものに、広告を掲載することはないという。

スワンストンCEOによれば、違法ダウンロードを行う人々は、一方で音楽や映画の大量購入者でもあるという。

「よりよい視聴者データ、そして視聴者にマーケティングする機会を提供することで、メディア企業が著作権侵害を軽減し、コンテンツを収益化する助けになると信じている」と同CEOは語る。

<売り口上>

米著作権法は、知的財産の無断使用を禁じており、コンテンツの違法ダウンロードは、罰金刑や懲役刑に科せられる可能性がある。同法では、Tru Optikなどの企業による、不法行為を行うユーザー情報の提供といった行為については規定していない。

NABなどの業界団体は、この端緒についたばかりのビジネスを抑制するための規制や法律改正を求めるロビー活動を行っていない。広告を監視する米連邦取引委員会(FTC)も特にこの問題に取り組んではおらず、この記事についてのコメント依頼にも回答がなかった。

つまり今のところ、新興企業にとっての最大の障害は、顧客となる企業がどの程度の安心感を抱くかという点なのかもしれない。

彼らの売り口上は、説得力のあるデータに基づいている。

例えば、コロンビア大学と公共政策研究機関アメリカン・アセンブリーによる2013年調査によれば、米国とドイツに住む30歳以下の消費者のうち、約7割がファイルを違法にコピー、共有、もしくはダウンロードしたことがあるという。

さらに、こうした視聴者は、同年齢の人々よりも娯楽コンテンツに出費する傾向がある。2014年にファイル共有ソフト「ビットトレント」の利用者2500人を調査したところ、他の人々と比べ、デジタル音楽に出費する可能性が170%高いことが分かった。

とはいえ、ニューヨークに拠点を置く広告技術会社サイマルメディアのデビット・モーガンCEOは、新興企業の新たな動きは、メディア企業の考える倫理的規範に反していると指摘する。

「エンターテイメント業界は根本的に、独自の知的財産創出と収益化の上に築かれている」と同氏は語る。

一方、Tru OptikのスワンストンCEOは、業界がこの大きな市場を受け入れるのは時間の問題だとみている。「この膨大な視聴者データの情報源を活用しないとすれば、ライバル企業との競争において非常に不利な立場に置かれるだろう」

(Jessica Toonkel記者 翻訳:高橋浩祐 編集:下郡美紀)

最終更新:9月22日(木)9時24分

ロイター

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