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携帯の数だけ受信料を払うのか? NHKのワンセグ受信料敗訴受け、ネット上で誤報が氾濫するが、やはり背景には…

産経新聞 9月22日(木)9時37分配信

 テレビ放送を視聴できる「ワンセグ機能」を搭載した携帯電話によるNHK受信契約の義務の有無が争われた民事訴訟で、さいたま地裁が「義務はない」との判断を下した。インターネット上などで大きな反響を呼んだが、「ワンセグ携帯電話の数だけ、追加で受信料が取られるようになる」という誤解に基づいた批判も相次いだ。一方で、関心の高さを背景に、「見ていない人まで負担を求められる」というNHK受信料に対する国民の根源的な不信感の根強さがありそうだ。

 ワンセグ受信料問題に関して、インターネットのニュースサイトのコメント欄には、NHKを批判する書き込みが相次いだ。

 「受信料の上乗せなんてあり得ない」「受信機持っている数だけ払わせるシステムに無理がある」「NHKは携帯で売上倍増!って思っているんだろ」

 しかし、これらのコメントには誤解がある。受信契約は「一世帯一契約」が原則。テレビを保有していて、すでに受信料を支払っている世帯は、ワンセグ携帯を新たにいくつ買っても、追加で受信料を支払う義務が生じることはない。追加負担への言及がなくても、このニュースでNHKを批判しているコメントは、勘違いをもとに投稿されている可能性がある。

 ここで、今回の訴訟の結果と、その後の経緯を振り返ってみたい。

 訴訟は、ワンセグ携帯を持っているが、テレビを所持していない埼玉県朝霞市議の男性が、NHKを相手取り起こした。放送法では、「(NHKの放送を受信できる)受信設備の設置」が、契約の要件となっている。NHKはワンセグ携帯を受信設備に当たるとして、これを所持することが設置に当たるとしたが、原告は「携帯しているにすぎない」と主張。地裁は8月26日、「受信契約の義務はない」とNHKの主張を退ける判決を下した。NHKは控訴し、籾井勝人会長は9月8日の定例会見で、「ワンセグも受像機の一つだ」と述べ、これまで通り徴収していく考えを示している。

 ワンセグ放送とは、地上デジタルテレビ放送の一つだ。チャンネル1つの周波数帯域は、13に分かれた構造となっている。このうち、ハイビジョン放送に12セグメントを使う一方、携帯端末向けに1セグメントを割り当てられた放送がワンセグだ。「ガラケー」と言われる従来型の携帯電話や、OS(基本ソフト)にアンドロイドを使っているスマートフォンなどで視聴できる。また、一部のカーナビやパソコンでも見られる。

 このように、ワンセグ放送を視聴できる環境にある人は少なくない。しかし、その上で世帯にテレビがなく、また、NHKに受信料を支払っている人の数は「限定的」(総務省幹部)と考えるのが普通だ。つまり、今回の訴訟の結果で影響を受ける人の数はそれほど多くないといえる。

 高市早苗総務相は2日の会見で記者から地裁判決について聞かれ、「携帯の受信機も義務の対象と考えている」との認識を示した。ただ、これは従来の政府の公式見解を述べたに過ぎない。総務省は今後、NHKに聞き取りをして実態を把握し、何らかの手を打とうとしているようだ。前述の通り、ハイビジョンの12分の1の帯域しか使っていないワンセグは画質も悪く、受信できる地域も限られている。ハイビジョンと同じ受信料を徴収することに合理性がないという指摘も根強い。このため、聞き取り調査の結果によって総務省はワンセグ受信料の減免を求める可能性がある。

 しかし、総務省内では「ワンセグで受信料を免除したら次は、『なぜ、フルセグ(ハイビジョン)のカーナビでは支払わないといけないんだ』と、際限がなくなる」(幹部)との慎重論もある。また、籾井会長は「ワンセグを(テレビと)区別した契約はしていないから、調べようがない」との立場で、実態把握も難航しそうだ。問題解決は一筋縄ではいきそうにない。

 このワンセグ受信料問題、直接関係する人は少ないはずだが、関連ニュースのコメント欄に投稿が相次ぐなど、世間の関心は高い。インターネットで放送番組の視聴環境が激変する中、携帯端末での視聴にかかる受信料に対して多くの人が過敏になり、一部で誤解を生んだようだ。

 このほか、大きな要因の一つに、「不公平感」があるのは否めない。今回の一連のニュースのコメントでも、「せめて、見る見ないを選択できるようにしてほしい」「放送を見ない人にまで、見ている人と同等の負担を強いるな」「ワンセグでNHKを見たら課金してもいいけど、通常のテレビでも全く見ないなら課金しないでもらいたい」など、不満の声が並んでいる。

 総務省は、ワンセグ携帯にとどまらず、NHKの受信料の在り方を、経営の在り方、業務の見直しとセットで抜本改革する構えだ。同省の有識者会議は9日の会合で、受信料について、「国民・視聴者にとって納得感のあるものとしていく必要がある」などとする第1次取りまとめを了承した。しかし、今回のワンセグ受信料問題を契機に噴出した「国民・視聴者」の声からは、“納得感”の醸成の難しさが改めて印象づけられた格好だ。(高橋寛次)

最終更新:9月22日(木)9時37分

産経新聞