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信州大王イワナがいよいよ出荷 体長45cmで刺し身もOK 海なし県が「水産王国」になる日は近い?

産経新聞 9月22日(木)11時27分配信

 長野県水産試験場が、「海なし県から水産王国へ」という夢を乗せて開発した大型イワナ「信州大王(だいおう)イワナ」の稚魚の出荷が、木曽町の同試験場木曽試験地で最盛期を迎えた。今月に入り、2年間かけて育った成魚も初めて市場にデビュー。平成17年に登場したブランドマス「信州サーモン」は市場の評価も高く、シマアジやヒラメなどの高級魚に並ぶ価格で取引されている。信州大王イワナは第2の県産ブランド魚として育つのか-。養殖業者らが熱い視線を向けている。

 通常のイワナは、産卵期を迎えると肉質が大きく落ちるため出荷に適さない。焼き魚などの用途向けに産卵前の体長20センチほどの状態で市場に出す。しかし刺し身で食べるには大型化が必要だ。近年は2、3年かけて大きく育て上げたイワナが人気を呼ぶが、産卵期を迎えるために秋から冬にかけて出荷はできない。

 これに対しバイオ技術で誕生した信州大王イワナは、成長しても生殖能力を持たないため年間を通じて高い肉質が維持できる。加えて早く大型化させることが可能で、通年で消費者に提供し得るのが最大のアドバンテージとなる。

 県はブランド魚として育てるために信州大王イワナを商標登録し、2月に設立した「信州大王イワナ振興協議会」の会員業者にしかブランドの使用を認めない措置を取っている。県園芸畜産課は「信州サーモンのように市場での認知度が上がれば高級魚としての流通は可能なはず。イワナはもともと価格が高く、信州サーモン以上の普及を期待する」とそろばんを弾く。

 先輩魚の信州サーモンは27年度、345トンを出荷した。価格に変動はあるものの、一般的に1キロ当たり1500円前後で取引される。収益が改善して事業継続のめどが立った業者も少なくない。文字通り県内養殖界の救世主となった。

 県は26年から、信州大王イワナの稚魚を県内養殖業者に供給している。2年を経て9月には最初の稚魚が体重1キロ、体長45センチ前後に成長し、“食べ頃”を迎える。今年度の出荷量は約6トン、約6千匹を予定する。

 「首都圏や関西圏に人気が広がる信州サーモンと同様に長野県だけのブランド魚となればうれしい。だがまだ数が少ない。市場評価を確立するためには通年で出してこそ価値があり、どのような形で流通させるか検討している」

 今年最初の稚魚を受け取った八千穂漁業(佐久穂町)の佐々木信幸代表はそう話し、先輩魚との相乗効果にも目を細める。

 「刺し身で白身の川魚は少なく、繊細で深みのある信州大王イワナは海の魚とは違うきめ細かさがあり、マリネやカルパッチョなどの洋食にも向く。赤身の信州サーモンと白身の大王イワナを合わせて売り込むことで取引の可能性はさらに広がる」

 今年度は9月下旬まで、体長6~7センチの稚魚約4万匹が木曽試験地から県内27の養殖業者に出荷される予定だ。県は当面、年間3万匹の市場提供を目指しており、「希少性がどう評価されるか、市場の反応が楽しみだ」(園芸水産課)としている。

最終更新:9月22日(木)11時27分

産経新聞