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科学技術で日本は中国に追い抜かれたのか? 肝心の鶴保庸介科技担当相はスピード違反で書類送検され…

産経新聞 9月22日(木)11時47分配信

 「科学技術を使って自動運転の時代が来ることも考えている。しっかりやらなければ」

 鶴保庸介科学技術担当相は9月6日の記者会見で、集まった記者らに対して言葉に力を込めた。

 この言葉だけなら、担当大臣として科学技術の振興に尽くす決意表明として頼もしくも聞こえる。しかし残念なのは、この発言が自らの不祥事に対する釈明の中で飛び出したことだ。

 鶴保氏は大臣就任前の今年7月、大阪府内の高速道路で大幅な速度超過をしたとして、大阪府警に道交法違反容疑で書類送検された。そのため記者会見で進退を問われ、「襟を正してがんばる」と続投を明言した直後に出たのが冒頭の言葉だった。

 最先端の科学技術を自らの釈明に結びつけるセンスに会見場からはため息が漏れ、その後に伝え聞いた政府高官も失笑するしかなかった。しかし、科学技術に対する担当大臣の認識がこの程度にとどまる現実は、もっと深刻にとらえねばならない。

 そのような危惧を抱く背景には、近年顕在化しつつある日本の科学技術力の地盤沈下と、中国の急速な追い上げがある。「科学技術で、既に中国は質量ともに日本を追い抜いた」と断言する識者もいるほどだ。

 完成当時は「夢の原子炉」と期待されたがトラブル続きで廃炉が事実上固まった高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県)や、人為的なミスで3月に運用できなくなったエックス線天文衛星「ひとみ」など、ただでさえ「日本の科学技術は世界最先端」という自負心が揺らぐ事態が相次いでいるところだ。

 これに対して中国は、経済の急成長と並行する形で、国を挙げて科学技術のレベルを引き上げてきた。研究開発への投資額では既に日本をはるかに追い越し、2013年の時点では日本の18・1兆円に対して、中国は2倍近くの35兆円だ。その差は今後も広がっていくだろう。

 研究者らの数でも、日本の84万2千人に対して中国は148万4千人にのぼる。研究者が多ければ必然的に、一国の科学技術力を測る目安である全体の論文数や、論文が他人に引用される件数でも、日本は大差をつけられてしまう。

 今から15年ほど前であれば、科学技術で日本が中国をリードしていることは明白だった。しかしその後、中国は米露に続いて3番目に有人宇宙飛行を成功させ、月面探査車も走らせている。今年8月には、解読や盗聴が不可能とされる量子暗号通信の実験衛星を世界で初めて打ち上げた。

 また、海洋開発では、日本の「しんかい6500」を超える水深7千メートル級の有人潜水調査船が登場。民進党の新代表に選ばれた蓮舫氏がかつて「2位じゃダメなんでしょうか?」と発言して注目されたスーパーコンピューターでも、計算速度の世界ランキングで中国産チップを用いた新型機が日本の「京」(神戸市)を抑えて世界一だ。

 科学技術政策を担う内閣府の幹部は、日本と中国の科学技術力について「10人中5人は『日本の勝ち』、3人は『中国の勝ち』、2人は『同レベル』と答える状況まで迫ってきた」と話す。

 まもなく今年のノーベル賞受賞者が発表される。ノーベル賞の中でも特に重みのある物理学、化学、医学・生理学の自然科学3賞では近年日本人の受賞が相次ぎ、その数はアジアの中でも群を抜いて多い。「日本の科学技術は世界最先端」であることを再確認できる名誉といえるが、忘れてはならないのが、受賞理由となった研究成果の多くが何年も前に得られたものだということだ。

 このことを言いかえれば、今後10年、20年経てば中国人が相次いでノーベル賞を受賞する時代が来るかもしれない。昨年初めて医学・生理学賞に女性薬学者の屠ユウユウ氏が選ばれたことは、今後の中国の受賞ラッシュを暗示しているようでもある。

 今さら言うまでもなく、資源に乏しい日本にとって科学技術は“生命線”だ。自らのスピード違反に絡めて自動運転の技術開発を論じる大臣に、日本の科学技術の明るい未来をどこまで期待すればよいのだろうか。(政治部 小野晋史)

最終更新:9月22日(木)11時47分

産経新聞

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