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アスリートの復興支援、95回目 福島県相馬市でたくさんの笑顔 東日本大震災から5年半 風評被害の不安根強く

産経新聞 9月22日(木)12時3分配信

 東日本大震災から約5年半となった9月10日、日本オリンピック委員会(JOC)の震災復興支援事業「オリンピックデー・フェスタ」に、筆者は競泳の元五輪代表(1996年アトランタ五輪に出場)として参加した。

 同事業は多くのアスリートがスポーツを通じ、被災地域を支援したいという思いから生まれたもの。通算95回目を数え、これまで延べ493人の選手・元選手が1万6945人の被災地の方々と触れ合ってきた。

 海に面した福島県相馬市では津波によって458人が命を落とし、被災者が現在も約1000戸の仮設住宅で暮らしている。まだ完全復興にはほど遠い状況ながら、日本サッカー協会(JFA)と国際サッカー連盟(FIFA)の支援によって天然芝グラウンドの整備された相馬光陽サッカー場は復興のシンボルとして街に活気を与えている。今回は、サッカー以外のイベントとしてオリンピックデー・フェスタが初めて開催され、多くの住民が集まってくれた。

 オリンピアン代表として、2008年北京五輪男子バレーボール代表の斉藤信治さんや、12年ロンドン五輪バドミントン女子ダブルス銀メダリストの藤井瑞希さんら5人が参加した。照りつける太陽の下、青々と美しく広がる天然芝のグラウンドで、約60人の子供たちと全力で走り回り、汗を流した。手つなぎ鬼ごっこや、玉入れなどの競技を通じて心がけたのは「一生懸命、力を出す」「全力で楽しむ」「思いやりを持ってコミュニケーションを取る」ことだ。子供たちと力を合わせて声援を送り、汗をぬぐい、勝利の喜びや敗北の悔しさを分かち合う中で、今回もたくさんの笑顔が生まれていた。

 イベント後、津波被害に遭った原釜、尾浜の海岸を訪れた。優しい海の音と心地よい風が、ほどよく疲れた体をふんわりと包み込む。がれきの撤去作業を終えた海辺は穏やかで美しく、漁業も再開していた。

 ただ、同市によると、東京電力福島第1原発事故の影響は依然大きく、安全基準値を満たした魚を出荷しても風評被害によって売れないそうだ。潮干狩りなどで訪れていた多くの観光客も戻ってきていないという。ある被災者は「目に見えないお化けをどうやっつければいいか」と肩を落とした姿が忘れられない。

 まだまだ復興は道半ばだ。震災からの復興を掲げる東京五輪を、もっとたくさんの笑顔で迎えられるように、一人一人ができる支援を継続していかなければいけないと強く実感した。(西沢綾里)

最終更新:9月22日(木)12時3分

産経新聞