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化血研事業譲渡 塩崎恭久厚労相もついにブチ切れた「胸に手を当てて考えろ!」 「患者の命」盾に存続を模索するあざとさ

産経新聞 9月22日(木)12時29分配信

 約40年にわたり、血液製剤などを国の承認と異なる方法で製造していた「化学及血清療法研究所」(化血研、熊本市)をめぐる問題が、再び熱を帯び始めている。今年1月以降、事業譲渡を念頭に「体制の抜本的見直し」を求めてきた厚生労働省に対し、化血研側が今になって事業の存続希望を伝達したからだ。これに対し、塩崎恭久厚労相が記者会見で不快感をあらわに再考を促す事態に発展している。関係者の証言からは「患者のため」という言葉を錦の御旗に、存続を模索する姿勢も見え隠れする。(伊藤弘一郎)

 ■「『指導』を継続」

 「何をされて、このような事態になっているか。胸に手を当てて、考えていただいた方がいい」

 今月6日、厚労省で行われた閣議後会見。普段は淡々とした口調で話す塩崎厚労相が色をなし、語気を強めた。同日、一部で報じられた化血研側の「事業存続の意向」に質問が及んだ際のことだ。

 塩崎氏は続けた。「化血研としての医薬品製造販売業の継続を前提としない見直しを、当初から求めてきた。もう一回、思い出していただき、その通りやっていただくことが大事だ。私どもも指導を継続する」

 厚労省には、一企業に事業譲渡や合併などを命じる法的権限はない。ただ、塩崎氏は言葉の端々に「存続は絶対に認めない」という強い意思をにじませた。

 ■会合翌日に検査

 関係者によると、事の発端は今月5日。

 化血研側は不正製造問題を受け、製薬大手のアステラス製薬と、ワクチンや血液製剤の事業譲渡交渉を続けてきた。この日は都内で、厚労省と化血研担当者が会合を持った。進捗状況などの確認で行われたものだが、その場で化血研側が「事業継続を目指したい」との意向を厚労省幹部に伝えたという。

 厚労省は塩崎氏の発言にとどまらず、すぐさま手を打った。

 閣議後会見が行われたのと同じ6日。化血研本社に、厚労省担当者数人が訪れ、医薬品医療機器法に基づく「抜き打ち」の立ち入り検査を実施したのだ。

 そもそも、この抜き打ち検査は化血研の不正製造問題で「事前通告して立ち入りを行っていたことが不正を見過ごす原因となった」と指摘され、厚労省が新たに運用を始めたもの。厚労省は抜き打ち検査について「会合内容とは無関係」(同省担当者)とするが、額面通り受け止める人は少ない。

 ある製薬業界関係者は「『わかってるのか』という厚労省の“意趣返し”だろう。化血研としては熊本地震で設備が損傷し、資産算定などが難航したこともあるが、『血液製剤などを安定供給できるのはウチだけ』というプライドが、また顔をのぞかせているのかもしれない」と推測する。

 ■不信感払拭できず

 化血研は不正製造問題で1月、厚労省から過去最長となる110日間の業務停止命令を受けた。その後、理事長ら経営陣を一新。事業譲渡をはじめとした改革の緒についたはずだった。

 ただ、全国薬害被害者団体連絡協議会代表世話人の花井十伍(じゅうご)さんは今回、表面化した事業継続意向は「少なくとも8月時点で念頭にあったのではいか」とみる。

 薬害HIV訴訟の被告企業の1つでもある化血研は同月、理事長らが花井さんら薬害被害者団体と面談。化血研側は、改めて不正製造を謝罪した上で「患者を第一に考え、(HIV訴訟で和解した)3月29日を毎年、社内で反省をする日として、今後もずっとやっていきたい」と話した。花井さんが「事業譲渡するのではないのか」と問うと言葉を濁したという。

 花井さんは言う。「言葉では『患者が第一』というが、事業存続のため、患者や被害者を味方に付けようとしているだけではなのか。第一に考えているのはやはり社員であり、地元・熊本のことなのだろう。不信感は全く払拭されていない」。

 化血研は、塩崎氏や花井さんの言葉をどう受け止めるか。取材に広報担当者は「今はコメントすることはない」としているが、関係者は「胸に手を当てた」結果を注視している。

最終更新:9月22日(木)12時29分

産経新聞