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米国の五輪選手の医療情報を次々に暴露 ロシアの関与が疑われるハッカー集団「ファンシー・ベア」の正体とは?

産経新聞 9月22日(木)16時40分配信

 世界反ドーピング機関(WADA)のデータベースがロシアのハッカー集団によるサイバー攻撃を受け、リオデジャネイロ五輪に出場した米国人選手らの医療情報が流出した。ロシア軍との関係も疑われる「ファンシー・ベア」と呼ばれるこの集団は、一体何者なのか。

 ◆ロシアに端を発した攻撃

 WADAは13日にサイバー攻撃を受けた事実を発表。攻撃は「スピア・フィッシング」と呼ばれる手法で行われ、データベースにアクセスするためのパスワードなどが盗まれたと疑われている。WADAは捜査当局の情報から「攻撃はロシアに端を発したもの」だと断定した。

 米国人選手らの情報が掲載されたファンシー・ベアのサイトは英語で表示され、ロシアと直接の関係を示す記述はない。一方でサイトには、「われわれは許さない。われわれは忘れない」などと書き込まれ、攻撃が「報復行為」である可能性を強く示唆していた。

 ◆米政党組織も攻撃

 ファンシー・ベアは今夏、米民主党関連団体の情報システムがサイバー攻撃を受けた際にも関与が指摘されていた。米紙クリスチャン・サイエンス・モニター(CSM、電子版)によれば、米国の情報セキュリティー企業「クラウドストライク」の幹部は、ファンシー・ベアがロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の関連組織である可能性を指摘していた。

 CSMによれば、ファンシー・ベアはそれまでも、ロシア政府にとり「戦略的に重要な組織」を攻撃の対象としており、彼らの利用するプログラムもロシアのサーバー内にあることが確認されたという。また彼らのサイバー攻撃はモスクワ時間の午前8時から午後8時までの間に実施されており、これが「利益目的の犯罪者ではなく、政府系の労働者による行為」であることを示唆しているという。

 露当局とファンシー・ベアのつながりについて、ペスコフ露大統領報道官は「政府やロシアの機関がそのような行為に関与することなどあり得ない」と否定。プーチン大統領がかつて、「現代のハッカーはあらゆる第三国を経由して(犯罪を)実施することができる」と語ったことを引き合いに、軽率な判断はつつしむべきとの考えを示した。

 ◆二重基準

 今回、情報が流出した米国人選手は、各競技連盟や反ドーピング機関の承認を得たうえで、治療目的で薬物を服用していた。サイバー攻撃が、選手らのイメージダウンを狙った犯罪行為であることは疑いがない。

 一方、露国営テレビは事件発覚の翌日、“米国の一大スキャンダル”であるかのように繰り返し事件を報じた。女性キャスターは「ロシア人選手の多くはメルドニウムの服用で五輪出場を禁じられ、米国人は禁止薬物の服用も許されている。なんという“二重基準”でしょうか」と米国を非難してみせた。

 ◆政治的陰謀

 ロシアでは一連のドーピング問題について、国民の多くは政権が主張するように、他国による「政治的陰謀」だと考えている。今回の事件が今後、どこまで広がりを持つかは不透明だが、国営メディアに政権擁護のための格好のプロパガンダ(政治宣伝)材料を与えたことは間違いなさそうだ。(モスクワ 黒川信雄)

最終更新:9月22日(木)16時40分

産経新聞

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

斬首動画が何百万回も再生されてしまう理由
昔は街の広場で、現代はYouTubeで。歴史を通じ、公開処刑には必ず人だかりがつきものでした。人が処刑というものを、恐ろしく不快に感じながらも、つい気になって見てしまうのはなぜか。フランシス・ラーソンが人間と公開処刑の歴史、中でも斬首刑に焦点を当てて解説したこのトークは、気分の良い内容ばかりではありませんが、同時に興味をそそること間違いないでしょう。