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「NSX」を1日5台、塗装に4日間かけるホンダ米専用工場のこだわり

ニュースイッチ 9月22日(木)9時1分配信

「8から800へ」 量産車のモノづくりに刺激

 ホンダが先月発表した新型スポーツカー「NSX」。その走行性能や品質は新たに開発した生産技術が支える。約10年ぶりの復活を機にNSXの生産を担うことになったのは米国の専用工場。少量高品質の思想から生まれた生産技術は量産車へも広がりつつあり、ホンダのモノづくりで米国の存在感が増している。

 新型NSXは骨格にアルミ部材を多用しているのが特徴だ。アルミ部材を溶接する際の課題はアルミが熱で変形しやすいこと。そこで編み出したのが骨格の治具を360度回転する仕組みだ。治具を回転できると溶接機のアームが溶接点にアクセスしやすくなる。「溶接を1カ所に集中することなく熱を分散させることができるから変形を抑えられる」と生産責任者クレメント・ズソーザ氏は話す。

溶接だけでなく鋳造でも特殊な技術を採用した。アルミ製接合部品を作るのに、砂型を使って急冷する「アブレーション鋳造」という業界初の技術を導入した。こうしたアルミ接合技術が、スポーツカーの走行性能を左右する剛性の高さを実現している。

 塗装では量産車で3―4回のところをNSXは11回重ね塗りする。27部品を同時に塗装することで「理想的なカラーマッチングにした」(ズソーザ氏)。量産車の塗装は8時間程度で済むが、NSXは塗布で2日、硬化で2日の計4日間かかる。少量生産だからこそ品質重視で手間を掛けて作り込む。現在は日産5台の生産ペースだが将来は8台にする計画だ。

 「8から800へ」。こんな合言葉があるという。日産8台の少量生産で培った技術を同800台の大量生産に適用しようという考えだ。ホンダがF1などのモータースポーツに積極的に参加するのは、そこで生まれる先端技術を量産車に適用する狙いがある。「NSXで開発した生産技術も全く同じ発想で、量産モデルに適用することを明確な目的としている」(同)。

 例えば今回ジルコニウムを使った塗装技術を採用したがこれは量産車にも適用できそうだ。従来のリン酸亜鉛による前処理に比べ、ジルコニウム素材を使った前処理はスラッジの量が減り環境負荷が小さくなる。アルミに適用できることがわかり、今鋼鉄に使えるか試している。今後「NSXの生産技術を他の量産工場にどう生かすか話し合う」(同)。

 八郷隆弘社長は「グローバルな車づくりのリーダーになるまで成長した」と米国ホンダを評価する。初代NSXを生産していた日本に代わって米国が担えることになったのは、NSXが北米を主な市場としていることもあるが、モノづくりのレベルの高さがあったからこそだろう。

 ズソーザ氏は1989年に米国ホンダに入社。以来渡米してきた日本のエンジニアから教育を受けてきた。米国での生産が決まったことはズソーザ氏からしたら「子どもが立派に成長した証」。「このプロジェクトを成功させることが日本のエンジニアに感謝を示す私なりの方法だ」と話す。恩返しを兼ねてホンダのモノづくりをリードする気構えだ。

<解説>
 新型車の生産開始に伴って新たな生産技術を導入するのは、NSXに限ったことでなく、よくあることだ。だがNSXは普通の新型車ではない。日産わずか8台のNSXと800台規模の量産車では生産思想が大きく異なる。異なるからこそ、量産車の生産のあり方を考えるのに多いに刺激になるだろう。

日刊工業新聞第一産業部・池田勝敏

最終更新:9月22日(木)9時1分

ニュースイッチ

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