ここから本文です

スピードを追求! オリンパス「E-M1 Mark II」の開発者に直撃インタビュー! 

アスキー 9月23日(金)10時0分配信

Photokina2016の会場で、オリンパスのフラッグシップミラーレス一眼「E-M1 Mark II」の開発者にインタービューを敢行! 開発ポイントをズバリ聞いた

 オリンパスはドイツで開催された「Photokina2016」で、OM-Dシリーズの最新モデル「 E-M1 Mark II」の開発発表を行なった。
 
 フラッグシップモデルとして新機能をふんだんに盛り込んだE-M1 Mark IIの特徴について、同社技術開発部門映像開発本部映像商品企画部副本部長の片岡摂哉氏に話を聞いた。
 
撮像素子と画像処理エンジンを刷新
トータルでスピードを追求
 E-M1 Mark IIで最も重視したのは「スピード」だと片岡氏。それも、AFや連写速度というスピードだけではなく「動くものを追いかけて食いつくAFと、連写時にちゃんと表示して被写体をとらえ続けるEVF」という点も重視したという。
 
 EVFは秒18コマ連写時の50%程度のコマを表示できる応答時間の短さで、新規に開発したものだ。
 
 このスピードを実現するために重要となったのが撮像素子と画像処理エンジン。従来の撮像素子やエンジンを使いつつファームウェアの改善でこのスピードを実現するのは不可能で、新規開発が必要だったという。
 
 従来よりも微細化したプロセスでエンジンを新規開発したことで、初代E-M1の3.5倍の速度を実現し、高速処理が可能になったそうだ。
 
 画像処理エンジンはAFの演算をしながらそれぞれ露出制御やEVFの表示といった具合に同時に多くの処理を行なうため、とにかく高速性を求めた結果だという。
 
 撮像素子も、同じ20Mクラスのセンサーを使う「PEN-F」と比べても倍のスピードを実現。こうしたセンサーとエンジン双方の大幅なスピードアップを図るぐらい、ハードウェアの進化が必要だったと片岡氏は言う。
 
 E-M1のユーザーからは、小型軽量で画質がよく、暗いところでも意外に撮れるという声はあったものの、「動きものが追いかけづらい」という弱点を指摘する声があり、「そこを何とか突破したい」(片岡氏)という思いで開発がスタート。E-M1の開発終了後、早い段階から新しいプロセスでエンジンの開発に取り組み始めたそうだ。
 
 E-M1発売から約3年になるが、早い段階でセンサーとエンジンの新規開発が必要なことを想定していたため、開発に時間がかかることは当初より分かっており、長いスパンで技術の進化を予測して、今回のセンサーとエンジンを選択したと片岡氏。
 
 しかし、センサーとエンジンを同時開発することが難しかったという。ともに従来よりも高速化させるため、従来のセンサーと新規エンジン、新規センサーと従来エンジンという組み合わせでは開発ができない。さらに、新規開発のためファームウェアも同時に新規開発するという状況が困難だったそうだ。
 
 高速連写を支えるシャッターユニットも新規開発。連写を多用することも想定して、20万回という耐久試験もクリアしている。
 
 それに加え、電池も新設計で容量を約37%増加させた。高速なセンサーやエンジンが電力が必要であり、さらに撮影枚数の増加を狙ったもので、インフォリチウムを採用したことによって、残容量のパーセント表示にも対応。
 
 OM-Dシリーズは長く電池を共通化していたが、「ここで思い切って変更した」と片岡氏は言う。
 
4K動画に対応! 動画重視のために可動式モニターに変更
 スピードとは関係ないが、背面モニターはE-M1のチルト式から2軸可動式に変更されている。
 
 チルト式は光軸上にモニターがある反面、縦位置撮影で使いづらいという欠点があり、2軸可動式は縦位置撮影でも使いやすいが、光軸上にモニタがない。
 
 片岡氏は「どちらも一長一短」としつつ、今回は「動画を重視した」とコメント。動画撮影では、液晶を開いて撮影することが多く、こうした使い方に適した形にしたそうだ。
 
 動画性能は4K30Pに対応しており、十分な動画の撮影が可能。同じマイクロフォーサーズ陣営のパナソニックは、4K60P動画の撮影に対応する新しいカメラの開発発表を行なっているが、E-M1 Mark IIは消費電力と発熱の問題を考えて見送ったそうだ。
 
 ただ、オリンパスの主力の1つである医療分野ではさらなる高精細化が求められており、8Kへの研究は行なっているので、それを民生機のデジタルカメラにも導入できるかどうかも検討は続けているようだ。
 
熱問題は空気の流れをコントロールしてクリア
 センサーとエンジンを高速化し、バッテリーも大型化し、4K30Pの動画に対応したことで問題となるのが放熱だ。
 
 特にE-M1 Mark IIは防塵防滴耐低温性能を備えており、放熱の難しい構造になっている。そのため、熱源となるセンサーとエンジンとバッテリーを極力離して、空気の流れをコントロールすることで対応したとのことだ。
 
 E-M1 Mark IIは、後継機種として「ほとんど新規開発した」(片岡氏)というほどのレベルで大きく進化。
 
 センサーとエンジンの進化で画質も向上しており、フラッグシップにふさわしい製品に仕上がっている。片岡氏は、「E-M1 Mark IIのもう1つの特徴は、E-M1ユーザーの声をできるだけ拾ったこと」としており、グリップの大型化、SDメモリーカードのデュアルスロット化といった変更点が、ユーザーの声を反映させた結果だという。
 
ボケ味にこだわった新レンズ
 新レンズでは、「M.ZUIKO DIGITAL ED 25mm F1.2 PRO」「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO」という2本のPROシリーズのレンズも発表。25mm F1.2は、明るい単焦点レンズが欲しいという声に応える形で開発したという。
 
 これまで、F2.8通しのズームレンズをそろえるなど、ある程度の焦点距離はカバーできたとの判断で、「いよいよ単焦点に踏み込める」(片岡氏)というタイミングだったのが今回だった。
 
 開発にあたっては、明るいレンズというだけでなく、味を出したいということで、ボケ味にこだわったという。
 
 通常のレンズは、MTF曲線で解像力を高くして、それを阻害する各種の収差を抑えるという設計になると片岡氏。収差は画質への悪影響のため、「あるレンジ内に収める」ように設計するが、ここで「収差にある傾向を出す」(片岡氏)ことで、ボケをコントロールできるという。
 
 これによって、MTFが高く、収差を抑えながら、ボケの出方をコントロールした。そのため、25mm F1.2ではボケがなだらかにグラデーションで消えていくようなものを実現したそうだ。
 
 ただ、これを実現するためには、「端正に収差を抑えていかないとコントロールできない」(片岡氏)。レンズ1つ1つで収差を抑えていったことで、結果的に「25mmなのに17群19枚のレンズになった」と片岡氏は笑う。
 
 それだけでなく、E-M1 Mark IIの高速AFなどに対応するためにレンズ群を極力軽くすることも必要だった。特に動画に対応した設計が必要な時代で、そうした点も考慮しながら開発したそうだ。
 
 もう1本の12-100mm F4.0は、高倍率ズームでありながらF4通しを実現している。これまでF2.8通しのズームレンズシリーズ(いわゆる大三元)を作ってきて、次はF4通しのズームレンズシリーズ(いわゆる小三元)も検討したが、「それでは面白くない」(片岡氏)。
 
 そこでF4通しのズームレンズ2本を1本にしたようなスペックのレンズを、しかも光学性能を高くする、さらにワイド端でレンズ前1.5cmまで寄れるようなレンズ、「究極の全部入り」(片岡氏)というレンズを目指した。
 
 こうしたレンズが実現できたのは、「レンズ技術の積み重ねがあった」と片岡氏は強調する。レンズの組み合わせによる特徴、新たな硝材の登場、マイクロフォーサーズのフランジバックの短さといったノウハウを結集して開発が行なわれた。
 
 当然、E-M1 Mark IIの高速AFに対応するためにレンズ群を軽量化しつつ、3つあるアクチュエーターもコントロールして実現したのがこのレンズだ。
 
コンピューターシミュレーションが進化の鍵に
 こうしたE-M1 Mark IIと新レンズの開発で威力を発揮したのがシミュレーションだ。同時開発するセンサーとエンジン、放熱といった本体の開発に加え、レンズのボケのコントロール、高倍率ズームでのF4通しの設計など、シミュレーション技術が進化し、コンピュータの性能が向上したことで、カメラやレンズの設計技術も進化したと片岡氏。
 
 ボケ味のコントロールといったアナログの技術の背景には、デジタルであるコンピューターの進化が欠かせなかったのだ。
 
 
文● 小山安博 取材●小山安博、編集長みやの(@E_Minazou)

最終更新:9月23日(金)21時25分

アスキー