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【キラリ甲信越】新潟県、EVの使用済み蓄電池活用 再生エネ安定利用へ実証実験

産経新聞 9月23日(金)7時55分配信

 県は、電気自動車(EV)の使用済み電池を再使用した蓄電システムの実証実験を今月、新潟市中央区の県工業技術総合研究所でスタートさせた。太陽光発電と組み合わせ、再生可能エネルギーを安定的に利用できるかを確かめる。車両から回収した電池の関連サービスは新たな環境ビジネスの一つに育つと見込まれており、来年3月までの実験を通じ、県内の企業が事業として取り組む可能性も探る。(臼井慎太郎)

 実験は県の委託事業で、予算額は約1500万円。蓄電システムは、日産自動車と住友商事が出資するフォーアールエナジー(横浜市西区)がマンションや公共施設などに販売する汎用(はんよう)品をベースに開発した。

 日産のEV「リーフ」から回収した0・5台分の使用済みリチウムイオン蓄電池を組み込み、容量は9・6キロワット時と比較的小さい。高さ115センチ、幅110センチ、奥行き31センチとコンパクトな蓄電システムは研究所の玄関に置き、屋上には出力約4キロワットの太陽光発電設備を取り付けた。

 フォーアールエナジーは既に約2年半前から、大阪市の夢洲と鹿児島・甑島(こしきしま)にあるメガソーラー(大規模太陽光発電所)の近くで、リーフの使用済み蓄電池を大量に使った実験に順次取り組んでいる。ただ、今回のように容量が小さいケースは初めてという。

 平成22年に登場したリーフは国内でこれまで約6万台が販売され、交換時期を迎えて使用済みとなる蓄電池が今年以降、徐々に増えていく見込みだ。

 ■自家消費を検証

 実験では、太陽光で日中に発電した電気を研究所内にある自動販売機と、レタスを栽培する小型の植物工場で優先的に利用。余った電気を蓄電システムに取り込み、夕方以降に自販機などに供給している。

 電力会社に太陽光発電の電気を売ることなく、無駄なく自家消費できるかを発電と充放電のデータから検証することを目指す。

 住宅用の太陽光発電などが普及するにつれ、発電して余った再生エネの電気を家庭から電力各社が買い取っても使い切れなくなり、買い取り量を制限するケースが増えかねない。さらに31年以降には、電力会社に固定価格で買い取ってもらう期間を終える家庭が急増するとみられている。

 このため、フォーアールエナジーは「再生エネの電気を蓄電池にため、利用するという意識が高まる」(ビジネスソリューション部の石本任(たかし)課長)と予測。今回の実験は、自家消費が一般的になる時代に向けた布石の意味もある。

 ■県内企業も参画

 実験には、電気通信設備の工事を手掛ける長岡市のイートラストも参画している。同社は、設計・施工から販売まで太陽光発電設備のサービスを一貫して提供。再エネ関連の売上高は28年5月期に約10億円となり、主力事業に育った。実験の成果を再生エネ事業の拡充に生かすことを狙う。

 酒井龍市社長は、売電収入に目が行きがちな太陽光発電の現状に疑問を投げ掛けた上で「今回の仕組みを地域や生活に溶け込むよう家庭や企業に導入すれば、環境保全と防災の両面で役に立つ」と力を込める。

 ためた電力で道路に積もった雪を溶かす「ロードヒーティング」に生かすなど、同社は地域の特色に合わせた蓄電池関連のビジネス拡大も狙う。

 ただ、車両の蓄電池を再使用する際には、まず車両の故障歴を確認しないといけない。取り外しや点検の作業に加え、正常な場合で約7割以上ある残容量を持つ蓄電池を選んでシステムに組み込む必要もあり、工程は多い。採算面の課題をどう克服するかも実験の重要なテーマとなる。

最終更新:9月23日(金)7時55分

産経新聞