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「自分のスキルは通じる?」 インフラエンジニアのキャリア事情

ITmedia エンタープライズ 9月23日(金)13時28分配信

 今回は「ITエンジニア」のスキルやキャリアパスについて考えていきたいと思います。

【画像】VDIの環境構築も自動化する「VMware SDDC Manager」(画像は開発中のもの)

 これを取り上げるのは、立て続けに知人の悩み事を聞いたためです。いずれも「外資系に転職したい」「自分のスキルは世界に通じる?」「これから何を勉強していけばよい?」だったのですが、もしかしたら同じ悩みを抱えている方が多いのかなと感じています。それでは進めていきましょう。

●外資系に転職したい!?

 今日のITインフラは欧米の製品・技術で成り立っている――。これは私の持論であり、本連載でも幾度となく取り上げてきました。こういった経緯もあり、「ITインフラ業界にいるなら、転職先は外資系」という相談を受けることがあります。外資系IT全般を見るとコンサルファームやグローバルSIベンダーなどもありますが、ITインフラになると基本的にはメーカーへの転職希望です。

・「私は○○製品のスペシャリスト。○○をもっと極めたいので、開発元に入社したい。」
・「私は△△社の最上位資格保持者。日本に数人しか居ないほどなのに、ですが、その会社の中途採用試験に落ちました……。」

 ITコミュニティなどに参加すると、ある特定の製品やテクノロジーに長けているエンジニアを見かけます。その製品や技術にほれ込み、時には文書化されていない仕様や挙動を把握したく、リバースエンジニアリングしてしまうほど。その分野のコミュニティでは“神”と崇められるほど貢献しているのに、意外とその開発元に入社できないのは、なぜでしょう?

 この理由の一つとして、正確な理由は分かりませんが、これは売り手(転職希望者)と買い手(採用担当者)のギャップから来ているのではと思っています。少し買い手の立場に立ってみましょう。

 買い手の立場からすると、それほどの有識者はパートナー、エンドユーザーの立場で活躍してほしいところ。社員が自社製品を良く言うよりも、パートナーやエンドユーザーが代弁してくれた方が、他のユーザーも納得いくでしょう。社員としてone of themで活躍してもらうより、only oneな“広告塔”でいてくれた方が合理的、という冷静な判断です。

 もう一つ買い手の立場からすると、意外にも細かく深いスキルを求めていません。例えば、先ほど挙げた文書化されていない仕様や挙動。外の世界ではなかなか知り得ない“強み”ですが、開発元社内ではさほど重宝されません。その仕様を作った本国の開発チームに尋ねれば済む話だからです。次バージョンでは仕様変更されることも多々あります。つまり、メーカーの現地法人の技術職は、特定の製品に対する、度を越えた深いスキルは求められてなく、むしろ販売拠点としてのプリセールス的なスキルが求められている傾向があります。

 例外として、トラブルシュートや障害解析を行うテクニカルサポート部隊や、本国の開発部門であればその技術力は優遇されます。しかしながら、実際に紹介しても「サポート部門は嫌だ」とか「家族がいるし」「英語が……」などで辞退されることも多く、両者の想いはなかなか通じ合いません。

●自分のスキルは世界に通じる?

 「日本のITエンジニアは優秀。英語さえできれば欧米人も圧倒できる――。

 そんな話を聞いたことはありますか? 実際のところ、これはどうでしょうか?

 まずは上位のトップエンジニア層。確かに日本のエンジニアには優秀な人がいらっしゃいます。しかしながら、ITインフラの主流は他人の作った製品であるためか、欧米人を「圧倒」「凌駕」しているケースはあまり見られません。「対等に渡り合える」と言った感じでしょうか。

 実際のところ、日本人でトップを除いた平均層の知識は、そんなに高くないと思っています。ですが、これは仕方ないと思います。日本のエンドユーザーにおいて仕事のメインの6割以上が運用・保守と言われており、システム提案を行うSIベンダーもまた、“炎上”・“赤字”案件にならないよう、リスクを避けたレガシーな設計を好みます。ですので、新しいスキルを学ぶ・実践を積む機会はほとんど無いのです。

 リスクのないレガシーな設計・提案は確かにトラブルを回避でき、スケジュールを順守できますが、実施する当人にとってみればまるでベルトコンベアみたいな作業。型にはまっているがゆえ、ちょっとプログラミングすれば作業を自動化できてしまいそうです。

 実は、“環境構築の自動化”は現実化し始めています。例えば、これまで何回も紹介したハイパーコンバージドインフラは、ストレージがサーバに内蔵されていることもあり、人力作業の必要な「ケーブルの物理配線」がほとんどありません。「Software-Defined」の言葉どおり、構築作業のほとんどはソフトウェア設定になります。それであれば、自動化は簡単。家電機器のような“セットアップウィザード”を実装することができ、このウィザードを実行するだけで、SI構築はほぼ完了してしまうのです。

 Software-Defined化によるセットアップウィザードの流れは、今後より加速しそうです。仮想化ソフトウェア最大手のヴイエムウェアは「VMware SDDC Manager」という新ツールを先日発表しました。これは、仮想化基盤のみならず、VDI(同社Horizon View)やネットワーク仮想化・プライベートクラウドに至るまで、環境構築作業を、誰でも・簡単に・自動化してしまえます。

●「自動化」という名のロボットに仕事を奪われないために

 まるでSF映画のような危機ですが、他業種まで視野を広げれば、今に始まったことではありません。

 コンピューターによる機械化とは、“自動化”して、人力作業をできるだけ減らすこと。工場の製造ラインやATM、自動音声応答システムなど、さまざまな人力作業がコンピューター技術によって機械に置き換えられてきました。コンピューターの本丸であるITにもその流れが着実に訪れてきているだけです。単純作業を社員とコンピューターで奪い合うのは、コストや処理速度の点で不利でしょう。それでも、先行している他業種では共存を実現しています。

 人間がコンピューターより優れる点を挙げるとすれば、“IF文”でさばき切れない状況下における「判断力」。つまり、さまざまな角度から多次元的に検討し、正しく判断できる能力です。具体的には、技術だけではなく、人員や予算のマネジメントなど、別な視点の判断要素を身に着けると、機械と違った、より建設的な提案や判断が可能になるわけです。

 もし技術以外の領域に思いあたるものが無いのであれば、商習慣を学ぶのはいかがでしょう。発注・受領・請求・領収といった言葉に疎かったり、日本のITエンジニアは商習慣を軽視する傾向があります。ここをちょっと学ぶだけで、“自動化ロボット”とサバイバルを繰り広げる際に、強力な武器や防具になるはずです。

最終更新:9月23日(金)13時28分

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