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【備える 減災への挑戦】(上)「黄色いリボン」で安否確認 東伊豆の自主防災組織が運動

産経新聞 9月23日(金)7時55分配信

 ■隣組単位で情報集約、進む高齢化に対応

 道路に面した住宅の窓に結びつけられた、黄色いリボン。映画「幸福の黄色いハンカチ」を連想させる光景だが、災害発生時に各家庭でけが人などの要救護者がいないことを示すために掲げるもので、戸別訪問をするまでもなく迅速な安否確認が可能になる。この「黄色いリボン運動」を提唱した東伊豆町西区自主防災会役員の鈴木優さん(71)は今月、地域の防災力向上に貢献したとして、「平成28年度防災功労者担当大臣表彰」を受賞した。

 ◆きっかけは「孤立」

 運動のきっかけとなったのは、昭和53年1月に起きたマグニチュード7・0の伊豆大島近海地震。震源は伊豆半島東方沖で、伊豆大島などで最大震度5(気象庁発表)を観測したが、東伊豆町一帯では地震断層が内陸部にもおよび、後の東京大学地震研究所の調査では「震度6に達していた」とされた。同町では崖崩れなどで死者9人が出たほか、家屋の全半壊は516戸に達し、国道135号など主要道路も寸断された。

 当時商工会議所に勤めていた鈴木さんは、町の復旧作業に従事。しかし、道路の寸断で「陸の孤島になってしまった」同町では、町や農協、漁協といった各団体間で連携が取れず、被害調査や食料調達などにバラバラに取り組んでいた。

 特に鈴木さんの頭を悩ませたのは、住民の安否確認。傾斜地では多くの家屋が倒壊し、要救護者の人数の把握は困難を極めた。

 平成20年に自主防災会長に就任した鈴木さんは、このときの反省を教訓に黄色いリボン運動を展開。隣組単位で各家庭の要救護者の有無を把握し、自主防災組織に住民の安否情報を集約させる仕組みを作った。「普段から習慣づけておかなければ意味がない」と、毎月1日には正午の消防サイレンに合わせ、リボンを掲示する訓練も実施。23年の東日本大震災の際にも、リボンを掲示した家庭は8割を超えた。

 ◆増加する要支援家庭

 今年4月からは伊豆地域の消防広域化で正午のサイレンはなくなったものの、鈴木さんは月に一度の訓練を再開することを予定している。総人口に占める65歳以上の人口の割合を示す高齢化率は、同町では41・4%に達しており、県平均の27・6%(いずれも4月現在)を大きく上回る。西区だけでも70歳以上の高齢者の独居世帯は約40世帯と、災害時の支援が必要な家庭は年々増えているのが実情だ。鈴木さんは「安否確認や避難所の運営には、顔の見える“向こう三軒両隣”の自主防災組織が力を発揮する。ただ、自主防災組織も高齢化しており、今後は子育て世代の参加が欠かせない」と指摘する。

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 本県を中心に甚大な被害が予想される南海トラフ地震は、今後30年間の発生確率が70%と高く、発生前に万全の防災態勢を敷くことは困難だ。短期間に、いかに被害を最小限に食い止める措置を講ずることができるのか。県内で進む「減災」への取り組みを取材した。

最終更新:9月23日(金)7時55分

産経新聞