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買い物弱者支えた70歳女性の死悼む「高齢者が高齢者の世話をする見本」

産経新聞 9月23日(金)14時53分配信

 ■和歌山、生花店内にミニスーパー

 《高齢者が高齢者の世話をしなければならない時代に、見本となる女性でした》。和歌山市内で5月下旬、1人暮らしの女性が自宅で亡くなっているのが見つかった。当時70歳の山本民子さん。約10年前、地域に住む独居の高齢者のため経営する花屋の一角にミニスーパーを開店して食料品を並べ、遠くへ買い物に行けないお年寄りを支え続けた。《これから先、お年寄りは不便なことはもとより、話し相手がいなくなり寂しくなると思います》。その死を惜しむ投書が近所の男性から和歌山支局に寄せられた。地域のために尽くした山本さんに感謝する内容だった。(福井亜加梨)

 ◆人柄慕われ

 誰にでも分け隔てなくはきはきと話す明るい人柄で、年上の80~90代の女性たちからも「お姉さんみたい」と慕われた山本さん。住んでいた同市福島の周辺は高齢者の多い住宅街で、約30年前から1人で切り盛りしていた花屋はお年寄りが悩みごとや愚痴を持ち寄る場所になっていた。

 隣にあったスーパーが閉店したのは約10年前。「遠くへ買い物には行けない」と90代の独居女性から相談されたのがきっかけだった。周辺に住む常連客にも足の不自由な高齢者が多く、山本さんは花屋の店内で小分けにした野菜や果物などの食料品を売るようになった。ほとんど利益にはならなくても知り合いの農家などから旬のものを仕入れ、店に並べた。

 《学校への行き帰りの子供に声をかけ、不審な人がいれば行動に気を付け、店の周りを掃除して、ゴミ置き場の清掃、溝清掃をしている姿もよく見かけました》。気さくな人柄が投書の文面からうかがえる。

 ◆孤独な最期

 《亡くなる前日まで店に出て、お年寄り相手に元気づけていました》《頼りにしてくれているお年寄りがいることで店を休まなかったのでしょう》

 突然の訃報は5月下旬にもたらされた。投書や近隣の住民によると、山本さんは2日連続で店を閉めた。珍しいことだったので住民たちは疑問に思い、電話したが応答はなかった。その後、警察を通じて山本さんが家の中で1人で亡くなっていたことを知った。

 最近はあまり体調がよくなかったという。「身体の調子が悪いと話していた。あれだけ病院に行くよう勧めたのに…」。近くのたこ焼き店の女性は悔しそうに語った。

 山本さんの死後、常連だった90代の女性は別居する息子家族に買い物を頼んでいる。「山本さんは『ほしいものがあったら電話してね。朝に仕入れておくよ』といつも気を配ってくれた」と目を細めた。

 ◆推計700万人

 流通機能や交通網の弱体化で食料品など日常の買い物が困難な人々は「買い物弱者」と呼ばれ、高齢者を中心に全国で増えている。経済産業省はその数を約700万人と推計。現在は農村や山間部などの過疎地が中心だが今後は都市部でも増えるとみられている。

 山本さんはそうした買い物弱者の高齢者の生活を支えてきた。投書に《高齢者が高齢者の世話をする時代の見本》とあったように、山本さんの思いやりの気持ちは多くの住民の心を動かし、地域の絆を強くした。

最終更新:9月23日(金)16時1分

産経新聞