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ライダーカップの勝利を左右する2人のコーチ

日刊スポーツ 9月23日(金)19時8分配信

 PGAツアーもいよいよ佳境だ。プレーオフの最終戦、ツアー選手権で年間王者が決まる。これをもってシーズンは終了となるのだが、今年は2年に1度開かれるビッグイベントが控えている。米国と欧州の代表選手による団体戦「ライダーカップ」である。

【写真】松山英樹 66でジョンソンらと並び首位発進

●国と大陸の威信をかけた戦い

 ライダーカップはもともと米国と英国の選抜選手による対抗戦だったが、その後米国と欧州の対抗戦という形に変わり、現在に至る歴史ある大会だ。大会を提唱したサムエル・ライダーの名を取り、第1回大会は1927年に開催された。

 10億円もの優勝賞金を争うプレーオフの終了後に行われる団体戦だが、ただのお祭りイベントではない。勝利チームへの賞金の支給はないが、この大会への出場をシーズンの目標の一つに置いている選手もいるほどだ。

 選手に引けを取らず、ギャラリーたちの盛り上がり方も半端ではない。ラウンド中に大きな声で選手を鼓舞し(時には罵声を浴びせ)、代表選手が繰り出すスーパーショットに歓声を浴びせる。初めてテレビで観た時には「これはゴルフなのか?」と思うほど選手も観客も興奮状態にあったことを覚えている。

 大会の開催地は持ち回りで変更になり、今年は米国開催の年だ。過去、全米オープンが開催されたこともあるミネソタ州のヘイゼルタイン・ナショナル・ゴルフクラブで行われる。2010年大会から3連敗を喫しての母国開催の年。米国にとっては負けられない大会となる。

●出場選手に関係の深い2人のコーチ

 出場選手はレギュラーツアーの成績に応じた独自のポイントランキング上位者と、各チームのキャプテンの推薦によって12名が選ばれる。

今年選出されたのは以下の選手である。

◆米国チーム◆

<キャプテン>デービス・ラブIII

ダスティン・ジョンソン

ジョーダン・スピース

フィル・ミケルソン

パトリック・リード

ジミー・ウォーカー

ブルックス・ケプカ

ブランド・スネデカー

ザック・ジョンソン

J・B・ホームズ

リッキー・ファウラー

マット・クーチャー

◆欧州チーム◆

<キャプテン>ダレン・クラーク

ローリー・マキロイ

ダニー・ウィレット

ヘンリク・ステンソン

ジャスティン・ローズ

クリス・ウッド

アンディ・サリバン

マシュー・フィッツパトリック

ラファ・カブレラベロ

マーティン・カイマー

トーマス・ピータース

リー・ウェストウッド

 メンバーを見てみると2人のコーチの名前が浮かび上がってくる。

米国選抜のうち6人がブッチ・ハーモン、欧州選抜のうち6人がピート・コーウェンに師事している(もしくは過去に師事していた)のだ。

 PGAツアーを活動拠点とするハーモンは、今年全米オープンを含め3勝を挙げたジョンソンをはじめ、全米プロゴルフ選手権優勝のウォーカー、大会への出場を熱望していたファウラーやスネデガー、ケプカを指導している。また昨年まではミケルソンへのコーチングも行っていた。

欧州ツアーに主軸を置いているコーウェンは現在、ステンソン(スウェーデン)、ウィレット(イギリス)、ピータース(ベルギー)、フィッツパトリック(イギリス)を教えている。2015年までリー・ウェストウッドにも指導をしていた。

 「ジュニア時代のマキロイに、バンカーショットを伝授したのは私だからね。それで彼はバンカーが得意になったんだ。」というコーウェンの本人談もあり、こちらもヨーロッパの多くの選手と関係が深い。

 出場選手だけではなく、両コーチはキャプテンとも師弟関係にあった。ハーモンはデービス・ラブ3、コーウェンはダレン・クラークの全盛期に指導をし、共にツアーで戦ってきたのだ。今年のライダーカップはアメリカとヨーロッパの戦いだけではなく、チーム・ハーモンとチーム・コーウェンの戦いという視点で見てみるのもおもしろいかもしれない。

●コーチングのハーモンと、ティーチングのコーウェン

 この2人のコーチ、選手に対するアプローチが全く異なる。

 ハーモンが得意とするのは、コーチングの分野だ。スイングの細かな欠陥やズレを指摘するよりも、その選手のパフォーマンスを最大化する事に焦点を当て、コミュニケーションをとっていく。

 以前、米PGAティーチング殿堂入りしているマイク・アダムスは、ハーモンについてこんなことを言っていた。

「彼はマジシャンのようだ。彼に話かけられた選手はみんな気分がよくなり、最高のパフォーマンスを出せるようになるのだから」

 一方のコーウェンは、スイングを技術的に指導するティーチングを得意とする。下半身による上下運動を使って地面からの反力を利用し、その力を腕の使い方によって効率よく伝達し、飛距離を最大化させる「スパイラルスイング」という理論を主軸に指導している。

●ハーモンの教え子はスイングでは分からない

 ハーモンは特に決まったスイングの型を教えているわけではないので、彼に師事している選手を見ても、「ハーモンっぽいよね」という部分がない。

 逆にコーウェンは自ら提唱する「スパイラルスイング」という理論を軸に教えているので、指導している選手のスイングに、その特徴を見ることができる。

 今年のメジャー大会、全米オープンと全米プロではハーモンの教え子が、マスターズと全英オープンではコーウェンの教え子が優勝を果たした。今シーズンを締めくくるビッグイベント、果たして軍配はハーモンとコーウェンのどちら上がるか。

 ◆吉田洋一郎(よしだ・ひろいちろう)北海道苫小牧市出身。シングルプレーヤー養成に特化したゴルフスイングコンサルタント。メジャータイトル21勝に貢献した世界NO・1コーチ、デビッド・レッドベター氏を日本へ2度招請し、レッスンメソッドを直接学ぶ。ゴルフ先進国アメリカにて米PGAツアー選手を指導する50人以上のゴルフインストラクターから心技体における最新理論を学び研究活動を行っている。早大スポーツ学術院で最新科学機器を用いた共同研究も。監修した書籍「ゴルフのきほん」(西東社)は3万部のロングセラー。オフィシャルブログ http://hiroichiro.com/blog/

(ニッカンスポーツ・コム/ゴルフコラム「ゴルフスイングコンサルタント吉田洋一郎の日本人は知らない米PGAツアーティーチングの世界」)

最終更新:9月23日(金)20時7分

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