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朝ドラに映画初主演、53歳 田中要次“名脇役”からの脱却なるか?

オリコン 9/24(土) 8:40配信

 わずか“3文字”のセリフで、一躍注目を集めた俳優がいる。その役者は田中要次。01年にスタートした月9ドラマ『HERO』(フジテレビ系/01年)シリーズのバーテンダー役が当たり役となり、そもそも映画ファンの間で高名だった彼の名は全国区となった。以降、長らく名バイプレイヤーとして活躍していたが、来年公開予定の西村喜廣監督の最新作『蠱毒 ミートボールマシン』でついに主役に抜てき。また10月スタートのNHK新朝ドラ『べっぴんさん』では、ももいろクローバーZ・百田夏菜子の夫役として、“実年齢30差”の夫婦を演じることでも話題を集めている。小日向文世や松重豊をはじめ、歳を重ねてから主役級のブレイクを果たす俳優は少なくないが、今年53歳を迎えた田中にもその機運が高まっている。

【朝ドラで共演】ももクロ百田との“30歳差”夫婦ショット

◆元国鉄社員だった田中、28歳で脱サラし俳優の道へ

 長らく俳優ひと筋の人生を送ってきた人物…かと思いきや、彼の社会人生活は1982年、国鉄の社員としてスタート。そして、87年には国鉄の分割・民営化によりJR東海に籍を置いた。社会人としてキャリアを積む一方、そのころから元々好きだった映画館通いに拍車がかかり、各地の自主上映活動に参加するようになった。そこでさまざまな映画人との交流が始まり、89年には映画監督の山川直人が手掛けた北海道出身のシンガー・ソングライター、佐木伸誘のショートムービー風MV「SEEK AND FIND」に出演。田中の“もうひとつの呼び名”で愛称のBoBA(ボバ)はこの時の役名だ。こういった多くの出合いを経て90年12月、田中はサラリーマン生活に終止符を打ち、28歳にして“第2の人生”俳優を目指し上京したのである。

 心機一転、俳優としてのキャリアは91年、照明技師の安河内央之氏らに師事するところからはじまった。竹中直人の監督作『無能の人』に照明助手として参加すると、以降は録音助手や付き人、ドライバーと多くの職を経験した。さまざまな作品にスタッフ兼業で携わったが94年、竹中監督の映画『119』で俳優業への専念を決意。役は決して大きくはないが、数々の映画やドラマ、舞台に出演し経験を積んでいった。

◆『HERO』で一躍お茶の間の人気者に、“背中で語る”演技で魅せる

 途中バイク便のライダーとしても働きながら生計を立てていたが、そんな田中に訪れた転機が月9ドラマ『HERO』への出演である。同作は木村拓哉演じる型破りな検察官・久利生公平をはじめ、キャストや新鮮かつ王道のストーリーが見事に視聴者の心をつかみ、民放ドラマ史上初めて全話で平均視聴率34.3%(関東地区・第1シリーズ)を記録したモンスタードラマ。宇多田ヒカルが歌う主題歌がヒットしたり、検察官への志願者も急増したりと、一大ムーブメントを起こしたことは今も記憶に新しい。

 かくも注目を集めた本作で田中が演じたのは、“特段しゃべらない”バーテンダーだ。主人公らが集うバーの名物マスターで本名は不明。どんな注文にも(初期を除き)「あるよ!」と対応するミステリアスさが話題となり、ついには『HERO』のアイコン的存在にまでなった。15年の劇場版2作目の公開時に、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパンで開催された企画展では、田中演じるマスターそっくりの人形が他のキャスト陣を差し置き制作され、お披露目されたほどだ。

 「『HERO』で人気が爆発した俳優さんは小日向文世さんをはじめ数多く、田中さんもその中のひとり。あまりセリフがない中、“背中で語る”じゃないですけど出番は少なくとも“存在感”で作品に影響を与えているからすごいですよね。以降、映画やドラマで名脇役として広く知られることになりますが、それ以前に石井克人監督の『鮫肌男と桃尻女』や大島渚監督の『御法度』、石井岳龍(元・石井聰互)監督の『五条霊戦記』など、90年代半ばころから数々の名匠の作品に参加し、『HERO』同様に味のある演技を見せていた田中さんは、映画ファンの間ではすでに注目されていた存在。『HERO』がきっかけになったとはいえ、ブレイクは時間の問題だったと思います」(某映画ライター)

◆コワモテと愛されキャラが同居、独特の存在感で人々を魅了

 注目度が増したことで“俳優”以外の顔も知られるようになった。例えば、無類の猫好きであること。3匹の猫を飼っており、その写真を公開するサイトも運営。今年1月には猫と田中しか登場しないドラマ『猫とコワモテ』(BSジャパン)が放送された。また、バラエティ番組に呼ばれることも多くなった。以前『有吉弘行のダレトク!?』(フジテレビ系)に出演した際は、手をぐにゃりと“540度回転”させる衝撃の特技を披露し、SNSを大いに賑わせた。コワモテなルックスに反するユニークな人柄も、映画ファンだけでなく多くの視聴者のハートをつかむ理由のひとつと言えるだろう。一歩ずつ歩を進め、名脇役としての人気と知名度を築いてきた田中。次なるステージとなる“主役”としての資質はいかなるものだろうか?

 「田中さんは、いい意味でどこにでもいそうなルックスと身長178cmという佇まいの良さから、殺し屋、刑事、教師、オネエとさまざまな役柄にフィットするのが魅力です。また、セリフがなくとも過去を“過度”に読み取れる“行間”的魅力と言いましょうか、存在感も抜群。それは、彼と同じ事務所の嶋田久作さんや松重豊さんらと似た感じがありますが、2人は共に名脇役から主演クラスの俳優へと進化を遂げているので、田中さんも同様に主役としての飛躍に期待がかかります。加えて、豊富な人生経験にスタッフとして映画に携わった経験、人脈もありますから、俳優としてかなりの引き出しも持っていますしね」(同ライター)

 初主演を務めるホラーアクション『蠱毒~』で田中は、謎の生命体から意中の女性を守るため闘う、冴えない中年男性を演じる。果たして“ヒーロー”として足跡を残し、主演俳優として新たなステージへ上りつめていけるだろうか? おそらく田中なら、得意のコワモテで胸を張り、例の役さながらに「あるよ!」と一言、答えてくれる…はずだ。

最終更新:9/24(土) 8:40

オリコン